
今回は8月にファーストアーティストとして入団した孝多佑月(こうた ゆづき)の登場です。入団してまだ3カ月ですが、早くもイタリア・ツアーに参加、ベジャール『春の祭典』に出演しました! 十代の頃のこと、留学時代のこと、東京バレエ団での活動など、盛りだくさんにお届けします。
──今回が初登場! まずは自己紹介をお願いします。
孝多佑月 8月に入団しました孝多です。東京都大田区出身、3歳でバレエを始めました。
──バレエを習い始めるきっかけは覚えていますか。
孝多 母が趣味でバレエを習っていて、いつも教室について行っていたのですが、そのうち「やりたい」と言い出したそうなんです。覚えてはいないのですが(笑)。当時からバレエが大好きだったみたいで、小さい頃からマチュー・ガニオが主演したパリ・オペラ座バレエ学校の卒業公演『コッペリア』 のDVDを見て、コッペリウスの真似をしていたそうです。
──ではその後、すくすくとプロ一直線で......?
孝多 すくすく......というわけではなかったですね(笑)。小学校1年生くらいでまず一度教室を移り、そこに10年くらい通ったのですが、あまり伸びなくて、これはちょっとまずいなと感じて、高校1年生のときにコンクールのための指導をしてくれる教室に移りました。小さい頃からバレエ以外に好きなことがなくて、6歳のときにはもうプロになろうと決めていました。いずれ海外に留学して外の空気に触れて、それから日本に戻ってきて活動したいと考えていて、それで高1のときローザンヌのコンクールに参加、スカラシップをいただいて、1年間の予定でカンヌのロゼラ・ハイタワー・バレエ学校に留学しました。
ローザンヌではパオラ・カンタルポ校長の面接があったのですが、そこで校長がクラシックとコンテンポラリーを半々で学ぶことができるとおっしゃっていたので、それでカンヌの学校へ。が、なんと、行ってみたらコンテンポラリーのクラスしかなない!? カンヌの学校では、学年が上がれば上がるほどクラシックを学ぶ割合が減っていき、僕が入った最終学年では全くなかったんです。あれ? そんなはずでは(笑)、と思いましたが、結果的にいい経験になりました。皆、コンテを極めてきた子たちばかりでしたから、レベルが違いすぎて──必死に学びました。
──カンヌに行ったのが2019年だとすると、年が明けてすぐコロナ禍だったのでは。
孝多 ロックダウンになる前、2020年の2月、3月くらいには帰国していました。その後1年間は自粛生活で、教室に戻って勉強を続けていましたが、2021年に国内のバレエ団に入ることになりました。
僕は運が良くて、入団1年目には『くるみ割り人形』の王子役に配役していただきました。第2幕のグランパ・ド・ドゥは別のダンサーが踊るヴァージョンですが、僕は第1幕のほうでたくさん活躍する王子。すごくいい経験になりました! その後も、『ロミオとジュリエット』のベンヴォーリオ、『真夏の夜の夢』のライサンダーなどを演じる機会をいただきました。充実した日々ではありましたが、より公演数の多い、大きなカンパニーに挑戦したいという思いがあったので、東京バレエ団を目指しました。
──東京バレエ団の舞台を観たことは?
孝多 前のバレエ団に入るさらに前のことですが、『ボレロ』のエキストラで東京バレエ団の舞台に立ったことがあるんです! 2018年の〈20世紀の傑作バレエ2〉のときで、メロディは(上野)水香さんと(柄本)弾さん。同時に上演していたのがキリアンの『小さな死』とノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』でした。あの舞台は本当に良かった......。ずっとクラシックを踊りたいと思ってやってきたのですが、こうした現代の作品も本当に素晴らしいなと思うように。僕は背が低めなので役は限られるかもしれないけれど、ベジャール作品などで活躍できる可能性はある。チャンスを掴めるよう、日々のレッスンを頑張りたいと思います。
──8月に入団して、初舞台はいつでしたか?
孝多 8月末の東京バレエ団60周年祝祭ガラ〈ダイヤモンド・セレブレーション〉での『ボレロ』。エキストラでしたから初舞台といっていいのか微妙ですが(笑)、それ以降だと『ザ・カブキ』ですね。すごい作品だな、と驚きました。最初のロック、塩冶侍、師直侍、討ち入り、涅槃と要所要所に出ていましたが、日本舞踊の所作を大事にした動きは新鮮でしたし、溝下(司朗)先生のご指導もすごくいい勉強に。身体の動きだけでなく、感情の動きがいかに大事かということをしっかり教えてくださいました。僕もいつか、伴内を演じられたなって思います。すごくカッコいいですよね!
──東京バレエ団に入って驚いたことは?
孝多 本番直前、劇場入りしてから皆と合同でレッスンをしたときに気づいたのですが、女性陣が全員、完全に揃っているんです!! アダージオの段階からこんなに揃っているなんて驚きました。東京バレエ団の女性のコール・ドが美しいのは有名ですが、レッスンの段階からこんなに綺麗なのか!と。クラスでは先生方もしっかり丁寧に見てくださるので、本当に勉強になります。
──初の海外公演では、ベジャールの『春の祭典』に出演しますが、手応えはいかがですか。
孝多 ベジャール作品が続きますね。ジル・ロマンさんに指導をしていただきましたが、ずっとベジャール作品を踊られてきた方ならではの風格というか、ちょっと動いただけで"ベジャール"なのはすごいなと──。体力的に厳しい作品、というのは、いままさに実感しているところです。最初の四つん這いになるあたりからもう既にキツい(笑)。
東京バレエ団に入って初の海外ツアーですし、リハーサル期間が短いこともあって緊張しているのですが、いつも以上に気を抜かずに頑張らないとなって思います。「海外ツアーは遊びでなくて仕事なのだから、日々、24時間、家に帰るまで気を引き締めて」と言われています!
──準備は滞りなく?
孝多 先輩から聞いて、トラベルクッカーを持って行くことにしました。あと、お米を持っていきます。炊きます(笑)。
──では最後に、どんなダンサーを目指していますか。
孝多 お客さまに感動を与えられるダンサーになりたい。ただヴァリエーションを綺麗に踊れる、というのではなく、その役を生きて、そのストーリーを伝えることができるダンサーです。また、背が高くなくてもここまでできる、ということを見せることができたら、とも思っているんです。背が伸びないことで諦めてしまう男の子も結構いると聞くので、頑張ればここまでできるんだぞというお手本、道標のようになれたら!
12月には、東京バレエ団での初クラシックになりますが『くるみ割り人形』が控えています。ねずみと花のワルツ、それから、1回だけ中国に挑戦させていただきますので、ぜひ多くの方々に観ていただきたいと思います!