
ブログ初登場の山下寿理は、昨年春にアーティストに昇進したばかり。今月末に東京バレエ団のスタジオで上演される〈Choreographic Project 2025〉では、自身で振付けたソロ作品を踊ります。ドキドキしながらの初挑戦への思い、これから経験してみたいことなど、いろいろと聞いてみました!
──初めまして、ですね。まずは自己紹介からお願いいたします。
山下寿理 緊張しますね(笑)。研究生として入団したのは2022年の春で、アーティストに昇進したのが昨年4月です。小学校5年生から東京バレエ学校で学んできました。バレエ学校在学中は、子役で『ドン・キホーテ』の小さいキューピッドをはじめいろんな舞台に立たせてもらったり客席で観たりもしていたのですが、皆さんの踊りにすごくパワーを感じたり、皆さんとても仲が良いので、私もあの輪の中に入りたい、と思ったりしていました。
──いま〈Choreographic Project〉の準備を進めているところだと聞いていますが、これまでこのプロジェクトに参加したことは?
山下 最初の年は木村和夫さんの『ハミング・バード』を踊らせてもらい、昨年はブラウリオ(・アルバレス)さんの『Komorebi』に参加させてもらいました。ブラウリオさんの作品では、相手の目を見たり、そこから受ける印象で自分の表情が変わったり、という経験をして、演技に興味を持つようになりました。実はその後、演技のワークショップに3カ月くらい通ったりもしたんです!
──どんなことを学ばれたのですか。
山下 お芝居をする人のためのワークショップで、本当に基礎の基礎です。まずは全身をリラックスさせることから始まって、相手から受けたものにどう反応するかとか、自分の想像力がどう掻き立てられるか、という練習をしました。実際にセリフを喋るようなワークショップではないので、汎用性が高く、バレエにも活かせることがあるように思いました。もちろん、少し習ったからといってすぐに活かせるわけではありません。でも、たとえば『くるみ割り人形』の第1幕で女の子を演じるとき、どんな気持ちでパーティーに行くのかなとか、プレゼントを貰うときの喜びを自分で想像するようになりました。それが実際にお客さまにどう伝わるかはまだまだわかりませんが、私自身、ダンサーとしてはテクニシャンというわけではないので、 "語れるダンサー"になれたらなって思っているんです。
──これまでさまざまな作品で舞台に立ってきたと思いますが、とくに印象的だった作品は?
山下 そうですね──たとえば、『ジゼル』。オーストラリア公演にも参加して、もう何度も何度も舞台に立ち、しんどいところも毎回ありましたが、不思議と、「あ、皆が一つになっているな」と感じられる瞬間があり、そんなときはすごく「いいな」って感じました。第2幕では、ウィリとなってしまった女性の背景を考えたいと思いますし、『眠れる森の美女』の花のワルツでも、私の名前はこうで、今日は初めて姫に会うとか、自分だけのサイドストーリーみたいなものを考えながら取り組みたいと思います。
ブラウリオ・アルバレス振付『komorebi』より photo:Koujiro Yoshikawa
──今度の〈Choreographic Project〉では、ご自身で振付けたソロの作品を踊ります。創作に取り組もうと思ったきっかけは?
山下 明確にこれというきっかけはないんです。バレエ学校時代にブラウリオさんのコンテンポラリーのクラスを受けていて、そこで少し振付をする機会がありました。1回目は3人くらいのグループでアイデアを出し合って。二度目は自分だけでソロの振付をしたのですが、これがとても大変で、1分半くらいしか仕上げられず、途中で終わってしまった──。だから、いつか改めて振付に挑戦したいという思いがありました。私はダンサーとして未熟だし、自分より上手い人はたくさんいるし、と思いがちですが、それを理由にして諦めるのは、何か逃げているみたいで嫌だなって思ったんです。これで結構、負けず嫌いなんですね(笑)。私は日頃からお友達とお喋りするのが大好きで、言霊、というほどではないけれど、自分で言葉にしてモチベーションを上げていくタイプなんです。〈Choreographic Project〉で作品を出そうかどうしようか悩んでいたときも、「こういうテーマでやってみたいんだけど」と友達に打ち明けたんです。「面白い! 絶対やったほうがいい」と言ってもらえたことで、どんどん気分が上がってきました。それで、「やる」と宣言。宣言してしまったら、もう後戻りできませんよね(笑)。
〈Choreographic Project〉リハーサルより
──タイトルは『teenage dream』。どんな思いを込めたのですか。
山下 いまの私にしか出せないものをつくりたい、と思いました。実際、私はまだティーンエイジャーですが、バレエ団に入った頃なんて、周りの人たちは皆ずっと年上で、自分だけがまだ高校生。突然一人で大人の集団に入ってしまった、そこでの焦りとか寂しさとか、また逆に、そんなに子供ではないのにどうして信用してもらえないの、という気持ちもありました。そういった思いを、私はいつもスマホにメモしているんです。たまに以前のメモを振り返って見ると、「子供」とか「大人」とかいうワードがたくさんあって、私、めちゃくちゃ悩んでいたんだな!と(笑)。まだすべてが解決したわけではないけれど、そんな気持ちをいい加減成仏させてあげたいなと思い、そのまま作品にして、全部出してあげることに。
音楽はあとから決めたのですが、感情のアップダウンを表現できるような音楽はないかなと、クラシック音楽が大好きだという友人に相談しました。「ショパンのノクターンなら、何か気に入るものがあるかもしれない」とアドバイスをもらったので、ひたすらノクターンを聴きました。その中で、聴いたことがあるなと思ったのが、ノクターンの第6番。覚悟をもって、これに決めました。
〈Choreographic Project〉リハーサルより
──創作は順調でしたか。
山下 試演会を含め、2回ほど皆さんに作品を観てもらう機会があったのですが、「もう少しメリハリがほしいね」とか、「このまま突き進んだらいいと思うよ」とか、いろんな言葉をいただきました。でも、自分で動画を撮って確認すると、本当はこういうイメージを打ち出したいのに、自分がダンサーとして上手くできていないことに気づいたりもしています。
今回は、自分が持っている動きの表現、すべてを総動員した、"いまの私"というべき作品になるから、それを全部出し切りたい。作ったものは踊りだけれど、そこに盛り込もうとしたのは全部私の感情だから、これまでにちょっとだけ習った演技のことも活かして、それをしっかり伝えられる作品であってほしいなと思います。
基本的に私はクラシックのダンサーですし、自分の持っている動きの範囲で全部出すという形で取り組んでいますが、コンテンポラリーの新しい動きにもすごく興味があります。留学している友人は、バレエ学校はコンテンポラリーにすごく時間が割かれるので、むしろクラシックが恋しいと言っています。でも東京バレエ団では圧倒的にクラシックのほうが多いですから、これからいろいろ学んでいきたい。いろんなジャンルのダンスも経験してみたいです。
〈Choreographic Project〉リハーサルより
──これからが楽しみですね!
山下 私は器用に踊れるダンサーではないので、自分はもっと別のところを磨いていきたい。手脚の美しさ、ポーズがどれだけ綺麗かということも大事ですが、ダンサーである前に、「この人は女優だよね」って言ってもらえるようなダンサーになりたいと思っています。同時に、いろんなことに興味があります。もちろん、私は東京バレエ団が大好きで、一番強いのは、バレエ団の中でどんどん成長していきたいという思い。でも、興味を持ったことはきっとすべてそこに繋がってくはずなので、全部、挑戦していきたいんです。
──バレエ学校時代に抱いていた、「あの輪の中に入りたい」という願いは叶いました。
山下 はい! ぼんやりとした気持ちでバレエ学校に入ったけれど、願っていたら、その夢は叶えられた。当時の私にとって、バレエ団の研究生になることはとても遠い夢でしたが、叶ったんです。クリエーションも、覚悟を決めてやってみたら一応形になってきました。そうやって少しずつ夢が叶ってきたので、このまましっかり頑張って真摯に向き合っていけば、いまはぼんやりとした夢でも、いつか本当に叶うかもしれないなって思うんです。
──ぼんやりとした夢?
山下 恥ずかしいのですが(笑)、バレエ団で主役を踊れるくらいのダンサーになって、ずっとお世話になった先生方に観ていただいて、感動してもらいたい! いつか叶うかもしれない、と思うだけで、もっともっと頑張れる気がしています。