
明けましておめでとうございます。2025年のブログ第1弾は、金子仁美からの新年のご挨拶です。2024年春にファーストソリストに昇進、その後も数々の舞台で大活躍、先のイタリア公演では憧れの大役に初挑戦しました。
金子仁美 明けましておめでとうございます! 今年もどうぞよろしくお願いいたします。
──年末年始はゆっくりお休みできましたか。
金子 はい! お正月休みは例年、とにかく身体を休めることを優先していましたが、今年は体力維持を考えて、身体を動かしつつ休ませていただきました。というのも、年末はイタリア公演からそのまま『くるみ割り人形』に突入したので、グラン・パ・ド・ドゥを踊ってもまだ体力に余裕があったように思うんです。流れを止めなければ体力は落ちないものなんですね。でも、「わー、お正月だー」と休んでしまうと、体力もリセットされてしまう。そこをいかにキープするか、なんですよね。私の昨年の"小さくて大きな"目標が「怪我をしないで踊り続けること」でしたから、それも引き続き、です。
──ファーストソリストに昇進して、いろんな変化があったのでは?
金子 気づいたことはいろいろあります。どんなときにもダンサーには代役がいるものだけれど、私自身の代わりができる人は誰もいないはずなんです。ファーストソリストの先輩である(伝田)陽美さんやプリンシパルの人たちと同じ土俵で活躍するためには、意識を変えていかなければ!
実は、舞台に立つことが恐怖だったときもありました。踊りが良ければ評価してもらえるけれど、ダメなら必要とされなくなる──。でも、ファーストソリストに上げてもらったということは、それなりの評価はいただけているのかなというちょっとした自信が芽生えたので、恐怖にたじろぐことなく取り組めるように。同時に、自分に足りなかったのは「自分を出すこと」だったんだなと改めて実感しました。もちろん、初役に取り組むときは怖気付く瞬間もありますよ(笑)。
──初役といえば、先のイタリア公演では大きな役に挑戦されましたね。
金子 『ラ・バヤデール』の"影の王国"でニキヤを踊りました。憧れすぎていた役なので、自分にまわってくることなんてないと思っていました。しかも今回は"影の王国"の抜粋でしたから、難しかったですし、緊張しましたね。全幕では、第1幕でニキヤとソロルが愛し合う姿がしっかり描かれ、そこから物語が進んでいったうえでの"影の王国"。でも抜粋では、そうした愛の瞬間が表現されないまま、生身の人間でなくなったヒロインを演じ、二人の深い関係性を表現しなければなりません。自分は果たしてそこまで持っていけたかどうか──でも、自分にとって大きな経験であったことは間違いありません。
──踊るチャンスは何度かあったのですか。
金子 カリアリで3回、ボローニャで1回、合計4回踊ることができました。奇跡的に一度も傾斜の舞台にあたらなかったので、事なきを得ました(笑)。とくにヴェールのヴァリエーションが難しく、バレエ団のスタジオでも本当に苦戦していました。でも、(斎藤)友佳理さんのリハーサルは私にとって本当に素晴らしい時間でした! 『ザ・カブキ』が終わってからイタリアに出発するまでの間に指導していただいたのですが、本当にすごく細かいところまで見てくれて、自分の意識──ただ歩く、その一歩を出す意識さえも変えてくれたのです。
──その前の『ザ・カブキ』顔世御前も初役だったのでは?
金子 顔世は......、緊張という領域ではなかったように思います。役が憑依した感覚があって、古典の役柄を演じるときとは全く違いました。これも素晴らしい経験でしたが、1度きりの舞台でしたから、またいつか演じる機会があれば、もっと深められるのかなと感じています。
──打掛がお似合いでしたね。
金子 腕までしっかり白く塗って、全身白、でした(笑)。終盤の「雪の別れ」のパ・ド・ドゥでは、由良之助が黒の上下。真っ白の顔世が肩に手をかける場面があるのですが、私が(宮川)新大くんの肩にガシッと手をかけた瞬間、パーッと白い粉が舞うのが見えちゃいました(笑)。
──2025年最初の公演、ベジャールの『くるみ割り人形』でも初役に挑戦を?
金子 生方隆之介くんと一緒に、グラン・パ・ド・ドゥを踊ります。東京バレエ団が上演している古典版『くるみ』のグラン・パ・ド・ドゥと全然違って、とてもシックなイメージ。衣裳が黒いチュチュなんです。あの黒いチュチュにはどんな意味があるんでしょうね。今度、ジル(・ロマン)さんが指導にいらしたときに質問してみます!
──東京バレエ団の古典版『くるみ』のグラン・パ・ド・ドゥと、どんなところが違うのでしょう。
金子 古典版の振付はどちらかというとロシアの流れですが、ベジャール版は原振付となっていて、英国ロイヤル・バレエ団で上演している振付に近いです。が、体力的にすごくキツい踊りだと皆さん言っています。確かに、マネージュが入っていたり、斜めに進むグラン・フェッテがあったり! 古典版と同様、見応えある踊りですので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。さらにもう一つ、別の日にはパリも踊ります。パートナーは樋口祐輝くん。
──ベジャール版ならではの各国の踊りの一つですね。
金子 オリジナルの音楽で、カルメンみたいな黒いレオタードにヒラヒラのスカートに黒のタイツ、しかも前半は黒のヒールを履きます! すごくお洒落!! しかも「サ・セ・パリー!」って叫ぶという......。
──生声で!?
金子 そうなんです(笑)。前回、小林十市さんがリハーサルにいらしたとき、声質にもとてもこだわって指導されていたのをよく覚えています。私もあれを練習するんだろうなと思うと......私にもマイクがほしいくらい(笑)。カッコいい女性が踊るイメージでしたから、私で大丈夫かなと思いつつ、でも、配役されて嬉しく思いました!
──その後、4月には『眠れる森の美女』オーロラ姫が待っています。2023年秋の初演の手応えはいかがでしたか。
金子 初演の緊張感に押しつぶされてしまいそうでした。友佳理さんの『眠り』に対する強い思いも伝わってきましたから、いいものにしなければというプレッシャーはありましたし、主役以外の皆も、同じ思いで向き合っていました。でも、子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』で何度もオーロラを踊らせてもらっていましたから、聴き慣れた音楽、踊り慣れた振付が身体に入った状態で取り組むことができて、すごく良かったと思います。それまでの経験は確実に活きているなって実感しました。
──また新しい課題が見えてきて?
金子 第1幕のローズアダージオのくだり......ヴァリエーションが本当にキツいですね。長さもありますし。だからやはり、体力が必要なんです。
──パートナーの柄本(弾)王子はどんな王子ですか。
金子 なんでもやってくれるので、私は身を委ねるだけです(笑)! アダージオを踊っていても、全く息があがらない。いくべきところに持っていってくれるから、無駄な動きがなくなるので、一緒に踊っていて疲れないんです。それに弾さんは演技も素晴らしく、包容力もあるので、自然に私を姫にしてくれます。自分のオーロラ姫像? どうでしょう......そう、大人しくはないですね。ちょっとやんちゃなところもあるオーロラ。気持ちだけで動きに出ていないかもしれませんが(笑)、元気だけど品のあるやんちゃな姫。1幕でそんなオーロラを表現して、2幕、3幕ではちょっと変化して、大人びてゆく──。今回は永久メイさんもゲストで出演されますから、彼女にも刺激をもらいながら、いい舞台をつくりあげていけたらと思っています。
──さらに、『ジゼル』、『ラ・シルフィード』、『ドン・キホーテ』と古典が続きますね。
金子 どれも素晴らしい作品ばかり! 皆でより良い舞台をお届けできるよう頑張っていますので、皆さんぜひ、観ていただけたら嬉しいです。私も体力をキープしつつ、私らしさを表現できるよう努めます!