
奈良春夏と政本絵美の対談企画、後編の話題は『ザ・カブキ』です!

『ザ・カブキ』奈良春夏(顔世御前)
photo: Kiyonori Hasegawa
──今回の『ザ・カブキ』奈良さんは2日目に顔世役を演じます。
奈良春夏 国内の公演では3回目ですね。『ザ・カブキ』は大好きな作品で、顔世ももちろん大好きな役柄。テクニック面で難しいところがたくさんあるのですが、それにとらわれることなく、日本人にしか出せない女性らしさを出せるように、と(斎藤)友佳理さんにリハーサルを見ていただいています。でも、とにかく『ザ・カブキ』の見どころといったら「討ち入り」です!!
政本絵美 ええっ!? そこ、私たち女性は出る場面ではないじゃないですか(笑)!
奈良 いや、だってあそこは泣きますもの。やはり、見どころは「討ち入り」と「涅槃」でしょう。
政本 四十七士が勢ぞろいするとき!
奈良 全員が集中してあの場面にもっていくわけですよ。あそこまでのストーリーを、私たちがどれだけ深めていけるかによって、「討ち入り」「涅槃」がよりシンプルに深く響いてくる──。これは東京バレエ団の代表作で、私たちだけが上演できるバレエですから、自信をもっておすすめしたいです。
『ザ・カブキ』第九場討ち入り
photo: Kiyonori Hasegawa
政本 私、入団後、4年くらい『ザ・カブキ』に出るチャンスがなかったんですよ。ずっと客席から「出てみたいなあ」と観ていました。
奈良 女性のほうが役が少ないから、なかなか出られないんですよね。
政本 でも今回は春夏さんと同じ役で出演できるのが嬉しい!
奈良 そう、私は絵美の後輩として(笑)、お才に初役で挑戦します!
政本 ふふふ、私は2年前に先にやらせてもらっているので。
奈良 私、お才をやりたくて、ずっとお願いしていたくらいなんです。もちろん、顔世も大好きだし、踊ることができてとても光栄なのですが、お才を演じるという夢がやっと叶って嬉しいです!
政本 お才は物語のカギを握っている重要な役柄ですよね。
奈良 そう、キーマン、いや、キーウーマンです。『ザ・カブキ』はイノシシから主役に至るまで、すべてのキャラクターをベジャールさんがすごく緻密に作られているんですよね。
政本 小道具のお財布がないと話にならないですから、忘れて出てしまったりしないかとすごくドキドキしました。
奈良 わー! やめて(笑)!
政本 (笑)。出番の前に何度も何度も「お財布持ったか」と確認して、出すときは着物の襟をちょっと持ったほうがいいとか、いろいろコツがありまして。
奈良 絵美はすごく真面目に取り組むので、お才を初役でやったときに、とても長くて詳しいノートを作っているんですよ。振付はもちろんのこと、所作の先生に教わったこととか、カウントのこととか──。
政本 メモしておかないと忘れてしまいがちなので。
奈良 見せてもらっているんですが、本当にすごいです。
『ザ・カブキ』第七場一力茶屋 政本絵美のお才(後方左)
photo: Kiyonori Hasegawa
政本 2年前は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』を国立劇場に一緒に観に行ったんですよね。
奈良 スケジュールが合わなくて、前半の「塩冶判官切腹の場」までしか観れなかったのですが、すごかったですね。
政本 本当にすごかったです。全部観ると丸1日かかるというのに、ベジャールさんはそれを、要点をおさえてすごくコンパクトにして見せているということを、歌舞伎の舞台を観て実感しました。
奈良 しかも、顔世や塩冶判官のドラマだけでなく、おかる勘平の物語までコンパクトにしてちゃんと入れているんですよね。
政本 天才としか思えませんよね。歌舞伎だったら切腹までをすごく時間をかけて見せる。でも、バレエの感覚ではずっとショートにすべきなんですよね。本当に勉強になりました。
奈良 というわけで、主役と四十七士はもちろんですが、私たちのお才にも、他の役にも、どうぞ注目してください!