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2018/12/11

森川茉央×杉山優一×井福俊太郎 『ザ・カブキ』公演直前・悪役会議【前編】

 2018年最後の公演、ベジャール振付『ザ・カブキ』開幕までもうあとわずか。
 総仕上げに向かうリハーサルの合間をぬって、『ザ・カブキ』を代表する三悪役を演じるダンサーたち、──師直を演じる森川茉央、定九郎役の杉山優一、伴内役に初役でのぞむ井福俊太郎が集結。公演直前企画『ザ・カブキ』悪役会議が催されました!

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左から森川茉央(師直)、井福俊太郎(写真は2016年上演時に演じた力弥)、杉山優一(定九郎)photos: Kiyonori Hasegawa

──『ザ・カブキ』は男性陣が大活躍のバレエですね。

森川茉央 コール・ドはとくに大変なんです。冒頭の「ロック」から青侍(塩冶の侍たち)、黄侍(師直の家臣たち)に黒衣、ふんどし姿の憂いの男たちをやって、それから討ち入り......。幕間の休憩時間以外はずっと、袖に入ると早替え、早替えで、常に衣裳替えに追われるんです。優一さんもそんな感じでしたか?

杉山優一 僕は黄侍はやらず、石堂をやっていましたね。いろんな役を演じましたが、どの役がとくに印象的だったかというと、そう──、明確なキャラクターのない黒衣とか青侍とか、個々に名前がない存在でも、場面ごとに表現や意味合いが変わってくる役柄をきっちりと演じ分け、踊り分けるところかな。難しいんですよね。

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杉山優一

森川 そう、キャラクターが与えられている役はやりやすいけれど、むしろ脇を固める役のほうが、しっかり自分自身で追求していかないといけない。

杉山 たとえば黒衣の所作、空気感。目立ちすぎず、というところが大事ですね。

森川 あれ? 俊太郎は黒衣やったことなかったっけ?


井福俊太郎 あ......、あります! 判官の亡霊が登場する場面の黒衣をやりました。今回も所作の指導にいらした花柳流の先生がおっしゃっていました。空気を作るのは周りだと。

森川 『ザ・カブキ』といえばすり足。これも最初はしんどかったよね。伴内は走りながらすり足という場面があるから、また難しい。

井福 毎日のレッスンで身体をこう、上げておいて、そこから全部落として歩く──。いまだに慣れていなくて、公演までもうあと少し、頑張らないといけません。

杉山 着物の着方も難しい。

森川 ロックの場面のあとの兜改めのシーンには直義がいちばん最初に出てくるのですが、ロックのあと、40秒で出てこないといけないんです。手順一つ間違えてしまうとアウト! ここはかなり練習しました。

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森川茉央

井福 あの兜改めの場面はとても好きですね。重みがあって。伴内もあそこで初めて出てきて、存在感をアピールします。

杉山 僕は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』の一力茶屋の場がすごく好きなんですが、『ザ・カブキ』でも、あそこで伴内が刺される場面とか、人形振りなども面白く、好きですね。

森川 『仮名手本忠臣蔵』は僕も通しを2日間に分けて観に行きました。あの長大な作品を、ベジャールさんはよくも2時間半の作品におさめられた、と思いますよね。俊太郎も機会があったら観るといいよ。

杉山 映像もあるからね。

──今回踊られる師直、伴内、定九郎の見どころについて、教えてください。

森川 普通悪役というのは、演技が中心になるのでそれほど踊らないものなんですよ。ところが僕が踊る師直というのは飯田(宗孝)先生や木村(和夫)さんが演じてきた役だけに、なかなかのテクニシャンなんです。が、その中で"悪いエキス"を出さなければならないので、踊りで必死にならないようにしないといけない。今回、花柳流の先生に教えていただいたのですが、悪役は目が大事。顔世に言い寄るときの表情を見せていただいたのですが、これは到底できないな、と思われるほどすごい! 少しでも吸収できたらと思っています。

井福 僕は、たとえば伴内が殺される場面。まず刺されて、それから走って倒れる。その刺されてからの余韻、間が大事だと教えていただきました。バレエでも間というものはありますが、それとはまた全然違う間で、自分で考える間と、観ている人にわかるように見せる間というのもまた違って、とても難しく感じています。
 伴内は、『仮名手本忠臣蔵』ではそれほど大きな役ではないけれど、ベジャールさんが溝下司朗先生のためにここまで拡げて創られた役ですよね。なので、朗先生からあまり外れてはいけないと思っているんです。直接伴内を習ったわけではないのですが、朗先生の色を消したくない。

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井福俊太郎

森川 オリジナルの方の存在は大きいです。僕も2016年の公演のときは、夏山周久さんに師直を見ていただいて、すごく勉強になりました。

杉山 僕はもう、飯田宗孝先生の定九郎そのままに、です。定九郎というのは師直とも伴内とも違って、人を陥れようとして陥れているのではなく、ただただ自らの欲のままというか、人のものを奪って生きる生き方をして、それが結果的に人の不幸を招く──。悪役というより、ただお金目当て、ひたすら冷酷でクールな感じがしますよね。

森川 そう、いちばんクールな役ですね。やはりオリジナルの飯田先生ありき、の役柄。ベジャールさんは飯田先生のキャラクターにインスピレーションを得たそうですから。

杉山 本当に素敵なこと。その方に直に見ていただいて舞台にのぞむことができるのは、まさに貴重な経験です。飯田先生は、まず型を大事にされます。歌舞伎もバレエも同じかと思いますが、型があって、そこからの中身、なんですね。花柳流の先生はハートのことを「おなか」と言われますが、飯田先生も言いたいことはあるのかもしれませんが、敢えて「おなか」のことには触れず、人を刺したときの身体の見え方など、「型」の部分を伝えてくださいます。

森川 定九郎は小道具も多くて大変。

杉山 どれも扱いが難しいです。たとえば、刀をちょっと指先でかえして鞘におさめる場面がある。それから傘。難しいのが、こう、バッと開いてバランスをとるシーン。実は、劇場って意外なほど空気が動いていて、バッと止まったと思いきや、その瞬間にぶわっと客席から風が吹いてきて、身体をもっていかれそうに!

森川 あそこはカッコいいよね。

杉山 バチっと決まれば、ね(笑)。

 → 後編につづく 

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