
『海賊』公演まであと1カ月! 主な配役が発表され、アンナ=マリー・ホームズさんによる振付指導が、まずは一段落したところ。そこで今回は、オダリスクに配役された涌田美紀、ビルバントの井福俊太郎、金指承太郎に『海賊』への抱負を語ってもらいました。
まずは、2017年11月に東京バレエ団に入団し、その後『白鳥の湖』、『セレナーデ』、『ザ・カブキ』などで活躍してきた涌田美紀の登場です。
──東京バレエ団に入団して初めての大役ですね。
涌田美紀 そうなんです! まだ入団して1年とちょっとなんですが、皆とてもフレンドリーなので、すっかり馴染んでいます。いろんな振付家の作品を踊れるし、海外からの指導者にも見ていただける、素晴らしい環境です。『海賊』の配役は、最終的にホームズさんの前で踊って決めていただいたのですが、これはもう、すごく緊張しました(笑)。

──踊るのはオダリスクの第1ヴァリエーション。
涌田 第1ヴァリエーションと第3ヴァリエーションの候補になっていたのですが、第1はアレグロで足を打つ細かいブリゼがたくさん出てきて、第3はピルエット満載の、まさに"ザ・テクニック!"なヴァリエーション。自分には第1が合っているのかなと思っていたので、こちらに決まって嬉しいです。でも、ブリゼが頻出するだけに、どうしてもつま先に視線が集まってしまうんです。もちろん、上体もすごく目立つ。リハーサルではホームズ先生に「爪先!爪先!」といつも注意されていますが、足をしっかり伸ばして、綺麗に見せなければと思って練習しています。体力的にもキツいと思いますが、そう見えないように踊りたいですね。登場するのは序盤。たくさんいる奴隷の中でもひと際美しい、選ばれた3人として出てくるので、衣裳もとてもゴージャス! とても綺麗ですよ。
──ダイナミックな男性の踊りが注目されることが多いようですが、女性も大活躍ですね。
涌田 私もオダリスクだけでなく、海賊の女性たち、花園もバラとコール・ド・バレエを踊る予定で、出番は多いです。『海賊』は男性のバレエ、という印象でしたが、女性にも活躍の場がたくさんありますので、主役だけでなく、周りのダンサーたちの踊りもぜひ楽しんでいただけたらと思います。
次は、昨年末の『ザ・カブキ』の伴内役に続いて、"悪役"ビルバントを演じる井福俊太郎の登場です。
──またしても悪役を演じることに!
井福俊太郎 年末に、バレエで「踊る悪役」ってあまりないですねと喋ってしまったばかりなのに(笑)。年末は『ザ・カブキ』で臣さん(秋元康臣)に剣で刺されて死にましたけど、今年は初っ端から銃に撃たれて死にます!
悪役といってもビルバントはちょっと違います。海賊たちからもっとも信頼を得ている人物なんです。首領のコンラッドは愛する女性の言うことを優先し、奴隷たちを解放せよと皆に命令しますが、ビルバントは「お前らはどうする?」と皆の意見をまとめて行動する。海賊の皆にとっては悪人ではなくて、頼れるリーダーであり、"隊長"です。男気のある人物だけに、他の海賊たちとは佇まいが違って見えるようにふるまわないといけないなと思います。遠目に見ても、それとわかるようにしたいですね。
──見せ場がたっぷりありそうですね。
井福 幕が開くと、わりとすぐに手下を引き連れて登場します。ここのビルバントはかなりカッコいいです! とくに好きなのは、第2幕の喧嘩のシーン。奴隷を解放しようとするコンラッドと対峙するのですが、ここのマイムが実に気持ちよく音にはまるんです。その前にはキャラクター・ダンスの真ん中で踊ります。このヴァージョンのビルバントは、キャラクター・ダンスからそのまま喧嘩に入って、そこからヴァリエーション、と3曲休みなしに踊ります。2幕はたくさん出番がありますね。
──皆、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の映像を見て刺激を受けた経験があるようですね。
井福 そうなんです! あの映像は、誰もが見ている超有名なものだけれど、ビルバントを踊っているダンサー、ホアキン・デ・ルースがすごく好きでした。これと同じホームズ先生のヴァージョンを踊れるなんて、とても光栄なこと。「やったぜ!」という思いで頑張っていますので、ぜひ劇場にいらしてください!
コンラッド役の秋元康臣とビルバント役の井福俊太郎ラストバッターは、初日にビルバントを踊る金指承太郎です。
──東京バレエ団に入団したのは2018年5 月でした。
金指承太郎 実はまだ一年経っていないんですね。友佳理さんに「すっかり馴染んでしまって」と言われているんですが(笑)、このビルバントが東京バレエ団での初めての大役です。以前所属していた劇場のレパートリーにも入っていなかったので、僕も今回が初『海賊』。当初は「ビルバント? ああ、あの役か」くらいにしか思っていなかったのですが、ABTの映像を改めて見直してみたら、このヴァージョンのビルバントはすごく動くし、とても重要な役じゃないですか! しかも、悪役といっても海賊としてはいちばん"まっとう"。奪ってきたものを皆で山分けするのが海賊本来の姿ですから、奴隷たちを「解放しよう」などと言うコンラッドとは争いになりますよね。
──カッコいい役柄ですね。
金指 とはいっても悪役。笑顔でヴァリエーションを踊っていたら、ホームズ先生に「笑ってはダメ!」と注意されてしまいまして(笑)。とくに登場シーンは、最初の掴みですから、悪役としての存在感を印象づけることが大切なんですよね......。初めての経験なので、これは新しい感覚。笑わない、というのは意外と難しいです。でも、キャラクター・ダンスで皆の先頭に立つ時は、仲間たちを引き連れてバーン!という感じで踊りますので、そこは楽しさを前面に出していきたいです。演技はスムーズにいくときも、苦戦するときもあるのですが、この役はしっかり突き詰めて演じ、迫力ある舞台にしていきたいと思います。
──ではズバリ、この『海賊』の魅力は?
金指 わかりやすい物語と、それから、男の子にとっては戦いのシーン! 剣をこう構えたら、男の子はそれだけで大好きになりますよね(笑)。また、東京バレエ団のキャラクター・ダンスにもぜひ注目してください。ロシアの劇場でもキャラクター・ダンスは習っていましたが、東京バレエ団ではより美しく、しっかりとした形を追求する。大いに盛り上がると思います。

『海賊』特集、次回もどうぞお楽しみに!