
勅使川原三郎さんによる新作、世界初演の舞台までもうあとわずか! 今回は、勅使川原さんの抜擢を受け、『雲のなごり』に出演する三雲友里加が登場。同時上演のバランシン振付『セレナーデ』、ベジャール振付『春の祭典』でも活躍する彼女に、公演への抱負について聞きました。
──海外で公演されていた勅使川原さんが帰国され、10月に上旬にリハーサルが再開。連日充実のリハーサルが続いていますが、本場までもうあと数日。作品の全体像は見えてきましたか。
三雲友里加 つい先日、全体の構成について勅使川原さんからお話がありました。「この部分に新しい動きを入れる」とか、「ここについてはこんな動きを考えている」と未知の部分もあるのですが、全体のイメージは見えてきました。
──2016年に勅使川原さんが演出されたオペラ『魔笛』にも出演されていますね。
三雲 私はどちらかというと現代の作品には苦手意識があったので、『魔笛』はそれほど激しく動く場面はなかったものの、実は、自信をなくしていました。でも翌年、『小さな死』(キリアン振付)のバレエ団初演を踊らせてもらったら、「意外と合う」と言ってくださる方もいて、そうなのかな、現代の作品は苦手だと決めつけてはいけないな、と思うようになりました。
といっても、今年2月に行われた勅使川原さんのトライアウトの時も自信がないのは変わらずで、広いスタジオのいちばん後ろ、目立たないところでひっそりと踊っていました(笑)。それなのに選んでくださって、とても驚いて、嬉しい半面、私にできるのかな、と不安でもありました。
先に開催された、本公演についての記者懇親会で、「それぞれ味の違うダンサー、持っているものが違うダンサーを選んだ」と語った勅使川原さん。三雲のことを「感受性が豊かで、おくゆかしいダンサー」「遠くにいる人こそ、大事なのかもしれない」とも。
三雲 『魔笛』のときもそうでしたが、勅使川原さんには、いつも自然に動くことを求められます。こう動いたら次に身体は自然とこう動く、重心は自然とこちらに移る、というように──。
勅使川原さんはいつも私たちにいろいろな言葉で語りかけて皆の動きを促します。とても難しいことをおっしゃることもあれば、すごくわかりやすい言葉だったりすることも。たとえば「存在しているけれど存在していないような」と言われて、それってどういうことかな──と。いろいろ自分なりに解釈しながら感じ取って、動いています。
──具体的な身体のつかい方のアドバイスもあるようですね。
三雲 「力を抜きなさい」「でもここは保って」と細かく指摘もしてくださいます。クラシックでは考えられないくらい、力を抜いて緩めるんです。うまく力を抜けば身体に余計な負担がかからないから、怪我にもなりにくいそうなんです。お腹、身体の中心の大事なところだけ力を入れて、そのほかは一生懸命力を抜こうとするのですが、どこかまだ抜けていないんでしょうね。難しいです。
でもこれができるようになったら、バレエにも活かせると思います。普段から、無駄に力が入っている、と注意されて、「あ、本当にそうだな」と思うことも。今回の経験が、ダンサーとしてきっとプラスになると感じています。
──「もっと大きく!」とも?
三雲 そう! そうなんです。自信がないからか、私はどうしても小さく小さくなってしまうんです。でもある日、勅使川原さんや(共演の佐東)利穂子さんの動きを見ていて、「あ、こういうことかな」と思った瞬間があって、その通りにやってみたら、「そう」と言っていただいたことがあったんです。少しずつ、自分の中で掴めてきたのかな、とは思います。
──スタジオではひたすら、武満さんの音楽に向かい合っているという印象でした。
三雲 素晴らしい音楽ですね。最初はあまり慣れなくて、いま、曲のどこの部分を聴いているかもわからず、難しい音楽だなと思っていたのですが、徐々に身体に入ってくるようになりました。あの音楽で、あの動きで、どんな作品になるのか見えていない部分もまだありますが、きっと何か感じ取っていただける舞台になると思います。
──『セレナーデ』と、『春の祭典』(27日のみ)にも出演しますね。
三雲 2日目は開演からずっと、最後まで踊ります。バランシン、ベジャール、そして勅使川原さん、と全く違うスタイルの作品を一度に踊るなんて! できるかな......?という気持ちも少しあるけれど、どの作品も楽しんでいただけるよう、しっかりつとめたいと思います。