
いよいよ今週末に迫った、『M』。スタジオでは熱いリハーサルが佳境を迎えています。今回は三島由紀夫の分身を演じるプリンシパルの一人、秋元康臣が、進行中の『M』のリハーサルについて、またその見どころについて語ります。この機会に、秋元が取り組んだベジャール作品も一挙に振り返ってみます!
──『M』で演じるIII - サンという役柄は、三島の四人の分身の一人ですね。
秋元康臣 初演以来、ずっとカズさん(木村和夫)が踊ってきた役柄です。8月にリハーサルに来てくださっていた小林十市さんが、ゆっくり、わかりやすく教えてくださいましたし、さらに、カズさんからも手取り足取り、丁寧に教えてもらっています。二人とも初演メンバーで、ベジャールさんと直接仕事をされているわけですが、ベジャール作品に限らず、すべての踊りはそうやって伝えられていくものだと思います。オリジナルの人がいて、その人がまた次の世代に伝えていって──。大切なことは、創作時に志していたものがどこにあるかということではないかと思います。たとえば、僕が演じるIII - サンが登場する金閣寺の場面。金閣寺を狙ってどう目線を投げているか、映像を見て振りを覚えるだけではわかりません。それが理解したうえで初めて、その動きの意味を見つけて動くことができるようになるのだと思います。
──映像に残されているカズさんのIII - サンはどんな印象でしたか。
秋元 動きの質、間の取り方にすごくこだわりを感じます。その身体の使い方が、粘着質だったり、柔らかかったり、またすごく強く出すこともある。リハーサルではその細かな部分をしっかり指導してもらっています。三島の4人の分身の全員が新キャストというのは、初演以来今回が初めてのこと。個人的には、一人だけぽつんと初役で入るより、全員一緒にスタートしていくほうが、気持ちの合わせ方もやりやすく、組み立てていきやすいなと感じているんです。
──分身たちのパ・ド・カトルは、息を合わせる難しさを感じる場面も多いのでは。
秋元 それ、常に、です(笑)! 息を合わせたり、ハッと声を出したり──。特に無音のところから皆一緒にハーッというのは、緊張感が高まりますね。
──能の音楽を取り入れたという黛さんの音楽については?
秋元 難しいです。最初はどこの部分も似たように聴こえてしまって、たとえば、いま聴こえたこの「シャン」がどこの「シャン」なのか、全く理解できませんでした。が、さすがに聴き込んでいくことでわかるようになるもの。ただし、時間はかかりました。ベジャール作品は独特の間があることが多いのも、難しいところです。
──見せ場は至るところにありますね。
秋元 僕にとっては、(宮川)新大くんとのチークダンスをいかに柔らかく見せるか、でしょうか(笑)。この「禁色」の場面は、男女だけでなく、男性同士、女性同士といろんな愛の形が登場して、とても面白いと思います。また「武士道」は、男性が集まらないと出せない強さが前面に出る見応えある場面ですから、ぜひ注目していただきたいですね。さらに、イチ、ニ、サン、シという4人の分身たちは、東京バレエ団の男性プリンシパルが総出演という、普通のバレエではありえないことが起こるわけですから、これはぜひ楽しみにしていただきたいです!
難解な作品と思われがちですが、僕だったら、これといったストーリーを探そうとしないで、それぞれの場面ごとの意味を探りながら、三島由紀夫の思っていたことを感じながら、楽しみたいなと思うんです。単純に説明できない、複雑なところが魅力だと思うし、何より、10年振りの上演ですので、ぜひ、楽しみにしていただきたいですね。
と、『M』への抱負を語った秋元ですが、2015年の入団以来、6つのベジャール作品に取り組んできました。その歴史を、写真とともに振り返ります!
『ボレロ』
2015年12月に初参加。懐かしいですね。初のベジャール作品だったので、正直なところ、ベジャールさんならではの形、パターン、その組み合わせを覚えるだけで必死でした。
photo; Kiyonori Hasegawa
『ザ・カブキ』
2016年10月に初『第九交響曲』
2017年1月のブリュッセル公演で参加。フォレスト・ナショナルという大きな会場でしたが、劇場とは全く違う景色の中で皆と踊るのは、本当に気持ち良いものです!
フォレスト・ナショナルでの『第九交響曲』
photo: BBL - LaureN Pasche
『ベジャール・セレブレーション』(「バロッコ・ベルカント」)
2017年11月、モーリス・ベジャール・バレエ団との合同ガラで上演。東京バレエ団のメンバーによるパ・ド・シスを踊りました。僕らは皆、妖精なんですよね。純粋に楽しかった!
photo; Kiyonori Hasegawa
『くるみ割り人形』
2017年12月の上演で、M,,,とグラン・パ・ド・ドゥを踊りました。M,,,は当初、髭が大きすぎて浮いてしまったというエピソードがありまして(笑)。もともとジル(・ロマン)さんが踊っていた役ですが、本当にカッコいい! クラシカルな部分もあったり、強さだったり、皆を誘う雰囲気もあって、不思議な役柄。これまでに取り組んだことのない雰囲気の役柄で、ここから自分の演技の幅が広がったといえるかもしれません。
M...
photo; Kiyonori Hasegawa
『春の祭典』
2019年の海外公演、ミラノ・スカラ座で初めて生贄を踊り、10月に東京初披露となりました。すごい作品です。最後のほうは本当に死にそうに! あの音楽で踊ると、どうしても力が入ってしまいますが、そこをもっと生贄"感"を出していけたらと思っています。
photo; Kiyonori Hasegawa
そして、満を待しての『M』。秋元にとっては7作目のベジャール作品です。さらに来年は再びの『第九交響曲』! どうぞご期待ください!