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2020/10/19

『M』で弓道の所作を披露します──和田康佑

10年ぶりの上演となるベジャールの『M』は、没後50年を迎える三島由紀夫の美学がふんだんに散りばめられたとても美しいバレエです。今回は、このバレエならではの役柄の一つ、袴姿で登場し、厳かに弓道の所作を披露する射手を演じる和田康佑の登場です!


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──9月の子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』は、久しぶりの舞台だったそうですね。


和田康佑 実は今年に入ってすぐ、怪我の治療のためにお休みをいただいていたのです。3月にはバレエ団に復帰したのですが、そのまま自粛生活に入ってしまったので、僕にとっては『子ねむり』が9カ月ぶりの舞台となりました。こんなに長い間舞台に立つことがないなんて、入団してから初めてのことです。久しぶりに舞台で踊った喜びもありましたが、むしろ、コロナ禍の中、わざわざ劇場までバレエを観にきてくださったお客さまへの感謝の思いが強くありました。東京文化会館はいつも踊らせてもらっている舞台ですから、感慨深かったです。
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週間後の『ドン・キホーテ』も同様ですが、今度はさらに自分の思いが強く湧き上がってきて、「踊り、楽しいな」って心から感じて踊っていました。生のオーケストラで踊るのは、やはりいいです。



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9月の『ドン・キホーテ』より、闘牛士たち photo: Kiyonori Hasegawa

──『ドン・キホーテ』は1幕の闘牛士、2幕のファンダンゴで活躍していますが今回はメンバーがぐんと若返った感があります。


和田 いつの間にか年長者になってしまって! でも、ただ単に長くやっている人、ではなくて、闘牛士には独特のニュアンス、雰囲気がありますから、それを皆にしっかり見せてあげることができたら、長くやってきた意味があるのかな──。が、いつまでも先生方からはたっぷり注意を受けています(笑)。


──10年ぶりの上演となる『M』も、大半のダンサーが初めての取り組みとなります。


和田 前回の『M』を経験しているダンサーは、男性陣ではほんの2、3人。僕は入団2年目でした。記憶が薄れてしまっていることが多いですが、その後の子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』の初演も控えていたのでいっぱいいっぱいだったんだと思います。

あの時は、小林十市さんが7年ぶりにダンサー復帰された舞台でした。最近、当時の十市さんのインタビューに触れて、いろんな思いがあってチャレンジされた舞台だったんだなと知りました。群舞の指導もしてくださって、特に印象深く記憶に残っているのが、「武士道」という場面。たとえば、「不意に誰かに殴られた時のように」と、今回もまさに同じように教えてくださったので、当時のことが鮮明に思い出されました。


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2010年の『M』より、「武士道」の場面。和田康佑もいます! photo: Kiyonori Hasegawa


和田 でも、前回の『M』と今回の『M』とでは、作品に向き合う気持ちが全然違います。この10年の間に、数々のベジャール作品を踊ることができて、たとえば『春の祭典』ではリーダー、『ザ・カブキ』の現代の勘平も経験しました。ベジャール作品を踊る時は、余計な力みが抜けて、自由に踊れる感覚があります。そうした経験も、また年齢を重ねたこともあるので、今回の『M』は、より自分で考えながら、さまざまなことを咀嚼して踊ることができると思っているんです。まして今回は配役されたのが──。


──射手!


和田 緊張します......。いま、ダブルキャストで射手を務める南江祐生くんと一緒に、先生について弓道を学んでいます。


──奥深いでしょう!! 


和田 地元の知人で、学生時代に弓道をやっていた人がいて、一度、矢を使わずに弓だけを引かせてもらったことがあるのですが、自己流でやっても全然引くことができないんです。僕は力があるほうかもしれませんが、それでもほんの少ししか引くことができない。ところが教室に通って、弓を引く所作一個一個を教えていただいて、それをきちんと流れるようにやっていくと、不思議とどこにも力を入れることなくすっときれいに弓が開いていくんですね。これは本当にすごいことだと思いました。教室には年配のベテランの方もいらしていますが、なるほど、力でひくものではないことがよくわかります。とくに僕たちは、舞台で弓道の所作、形を美しく、正確に見せることを目指しているので、先生にも、皆さんにもいろいろと貴重なアドバイスをいただいています。


──バレエ団でのリハーサルは?


和田 通し稽古に入るまでは、スタジオでの自主練が続きます。今日の自主練は、次のリハの時間が迫っていたので少し焦りが出たのが反省点(笑)。一つひとつの動作と間を大事にしないと!


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バレエ団のスタジオでは日々自主練を重ねています!


──聖セバスチャンの登場を導く重要な役柄です。


和田 本番では、的は舞台袖に配置されるので客席からは見えないのですが、矢が的を射抜く手応え、衝撃は確実に伝わるもの。三島の憧れである聖セバスチャン登場のきっかけとなる役ですから、しっかり務めたいです。いつでも本番の状況を想定しながら、練習を重ねています。


──それにしても着物がお似合い!


和田 はい(笑)。いや、『ザ・カブキ』でも着物を着ますが、現代の勘平は最後に少し着物姿があるだけで、むしろスカジャンとか、『ドン・キホーテ』のジプシーの柄シャツとか、ちょっと怪しげな物が似合うね、と言われています(笑)。弓道の教室に通い始めた頃は帯の巻き方がわからず、南江くんと二人、更衣室で四苦八苦していました。でもいまはすごく便利な世の中になって、Youtubeで学ぶことができる。すぐにスムーズにできるようになりました!


──ぜひ、注目していただきたいですね。


和田 そうです! 10年ぶりの上演で、キャストががらりと変わった新しい『M』を、自分たちも楽しみにしています。同時に、ベジャールさんの思い、三島由紀夫の美学をちゃんと伝えられるようにできたらと思っています。10年前の上演を知らない若いダンサーが多いけれど、皆にはこの経験を次の上演に繋げていってもらえたらいいなって思います。ぜひ、劇場に足を運んでいただけたらと思っています!


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自主練を終えてほっとひと息。特製の的には無数の矢の跡!! 本番をどうぞお楽しみに!

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