
先日のベジャール振付『M』公演は大盛況のうちに幕を閉じ、バレエ団は残る1公演、11月21日の神奈川県民ホールでの上演に向けてリハーサルを進めています。
が、その期間も東京バレエ団はフル活動中、横浜市教育委員会の主催で、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』の学校公演(小学校4年生対象)にも取り組んでいました。10月下旬と11月中旬の5日間で11公演(!)。今回は、この公演でキトリの友人役を演じた上田実歩と安西くるみの二人の登場です。
──まずは『M』の東京公演、お疲れさまでした。
上田実歩 私は今年入団10年目なので、今回の『M』は初めてだったのですが、今回参加してみて、これは一度客席から観たいなって思いました。
安西くるみ 確かに! 桜吹雪の場面に号泣したという方もいらして。
上田 それで神奈川公演のチケットも買って下さった人もいます。
実は今回、『M』に登場する三島作品を読もうと思って、全部購入したんです。私、本が好きなので! が、難しい言葉遣いが多くてなかなか進まず、結局まだ全部は読み切れず、いまも続行中です。
でも今回『M』で三島由紀夫のことを知ることができたから、もっとスムーズに読めるようになったかもしれません。
──女性陣の出番は限られていますが、冒頭と最後の海のシーンがとても美しかったと評判に。
安西 テクニック的な難しさはないのだけれど、先生方からは常に、「ベジャールさんの作品は中から出てくるものが大事。もっと出して」と言われていました。そうしないと何も伝わらないと。それがとても難しくて、かなり集中しましたね。
上田 冒頭は板付きで、暗転から始まりますが、私たちはそこで"仏像のポーズ"だったので、気持ちが入りました。無というか、禅というか、すごく静かな気持ちになります。
安西 皆、それぞれ胸の前で違った印を結んでいるんです。ぜひまた舞台で観ていただきたいですね。
上田 舞台上で歌ったり、声を上げて笑ったりするのも初めてでした。自分、アイドルになったか!?と思ったくらい(笑)!
安西 楽しかった(笑)。そういえば私たちのあの前髪、すごく独特だなと思ったのですが──。
──あれは、創作の時にベジャールさんが能面の写真を見てインスピレーションを得たとか。これです。
安西 本当だ! みんな不思議に思っていたので教えてあげよう!
上田 あの前髪はピンで留めて、まつげ用の接着剤で額にくっつけているんです。
安西 本当に客席から全体像を見てみたいですね。10年後? それとも20年後かな(笑)?
上田 皆さんにはぜひ神奈川公演をぜひ観ていただきたいです。
──その合間に開催された学校公演『ドン・キホーテの夢』では二人とも大活躍でした。
上田 休憩なしの1時間10分という、とてもコンパクトなヴァージョンです。全幕の『ドン・キホーテ』は「本ドン・キ」、通常の子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』は『子ドン・キ』──。
安西 で、学校公演のさらに短いヴァージョンは『孫ドン・キ』(!)って呼ばれています。誰が言い出したのかわからないけれど(笑)。
上田 子どもたちが本当に素直で、反応がいい。わーって盛り上がってくれたらこちらも乗ってきますよね。
安西 客席の皆さんの顔がすごくよく見えます。
上田 こちらから目を合わせにいっちゃいました。「ねっ!」って(笑)。
安西 私は初めてキトリの友人で、最初はプレッシャーを感じていたんです。通常の『ドン・キホーテの夢』よりも短いので、キトリの友人のヴァリエーションはカットされていますが、その分、常に前のほうにいたり、目立つ演技をしたりしている感覚に。演技はいつも以上に大きく見せなければ、と意識していました。
上田 私は『ドン・キホーテの夢』では何回かキトリの友人を経験しているんですけど、毎回、タッグを組む相手が違うのでいつも新鮮です。今回は工桃子ちゃんでしたが、とにかく可愛い! 振り向いたらすぐ可愛い友達がいて、いつ見てもカワイイ!! ちょっと私のほうが長身なので、"姉妹"に見えてしまわないよう、二人同じテンションで芝居をするよう気をつけました。
安西 私の相手は足立真里亜。普段から一緒にふざけ合っている仲なので、舞台でも完全に普段どおりの二人だったかも。
上田 それが自然で面白すぎて(笑)、見ていて楽しかった。でも、バレエ団の人たちはみんな仲いいなって思います。だからこそ広場の場面でも変に頑張らなくてもできるのかもしれません。
安西 広場で市民を演じる時、「自分は○○屋さん」と決めて演じているんですよ。今回私は初めて果物屋さんに! ずうっと子どもたちに果物を売ります(笑)。気分は完全に果物屋さん!
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上田 私は今回、6人の女性とセギディーリャも演じていたので、毎回新鮮な気持ちでした。後半のファンダンゴではちょっと大人っぽい雰囲気も出して──。
そう、いろいろやらせてもらっていますが、実は私、衣裳さんによく言われるのだけれど、「東京バレエ団のMサイズ」なんです。
──「東京バレエ団のMサイズ」!?
上田 身長がちょうど中間で、大きくもなく小さくもない。だから状況次第でいろんな役に振られます。
安西 私はずっと小さい役ですね。今度の『くるみ割り人形』でも女の子の役です。
上田 『くるみ』だと私は男の子の役ですね。最近では、両親の役の子が年下のことが多くて、十代の子たちに「ママ〜!」って駆け寄ったりするんです(笑)。
安西 (笑)! 去年の『くるみ』は新制作だったのでいろいろ大変だったんですよね。
上田 すごく濃い思い出として残っています。
安西 新しい装置で踊るので、本番直前ぎりぎりまでこうじゃない、ああじゃないと調整していました。とくにツリーの装置がすごい!と評判でしたが、あの場面で私は装置のいちばん高いところから顔を出していたんです。実は私、高所恐怖症で、高い所でずっと震えていました。あの場所、すごく揺れるんですよね......。
上田 今年はもう舞台はできないんじゃないかと思っていたけれど、こうして舞台が続くのはとてもありがたいことです。再開後の初の公演〈Choreographic Project〉では、お客さまの「待っていたよー!」という気持ちが伝わってきたし、こちらも「踊りたかったー!」という思いが爆発して、その雰囲気がすごく印象的だったんです。だからこれからもずっと楽しんでいただけるよう、頑張ります。
安西 コロナ禍のもとでチケットを買って観に来てくださる皆さんには、とても感謝しています。皆さんにはどうか感染することなく来ていただきたいし、私たちも健康に気をつけて取り組むますので、また会場でお目に描かれたら嬉しいです。
『ドン・キホーテの夢』学校公演は1月中旬にも実施! キトリの二人の友人も引き続き頑張ります。