
ついに『くるみ割り人形』のシーズンがやってきました! 今回は、初日にマーシャを踊る沖香菜子と、弟のフリッツ役の岸本夏未、そしてお父さん役に初挑戦という中嶋智哉が登場、「シュタールバウム家の家族会議」の開催です。
(今回登場のシュタールバウム家のダンサーのうち、中嶋だけ別日程での出演となります。この三人の親子関係はフィクションで、実際の舞台とは関係ありません。)
──それでは家族会議を始めます! 皆さんまずはお名前(役名)をお願いします。
沖香菜子 私は初日のマーシャです。
岸本夏未 その弟、フリッツです。従来のヴァージョンではクララの兄という設定でしたが、去年新制作した『くるみ割り人形』では弟に。
沖 そして、お父さん役の中嶋智哉くんです。
中嶋智哉 お父さんです。初めまして。よろしくお願いします。
沖 9月の公演では(『ドン・キホーテ』の)ドン・キホーテ役で登場、そのずっしりした演技に、皆、おおー!っとなりました。ドン・キホーテ役は前回の『子ドン・キ』(子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』)から?
中嶋 いや、実は9月の全幕『ドン・キホーテ』が初めてでした。いきなり!です(笑)。それも、秋山瑛がキトリを踊った初日に......。
岸本 誰も現れていない舞台に最初に登場する!
中嶋 幕が開いて、その場に一人──。これは緊張しました。お年寄りの感じを出すのもとても難しく、公園に行っておじいちゃんを観察していたんですよ。
岸本 たしかに、触れ合わないとわからないことってあります。
中嶋 お年寄りの方は、こう振り向いてこう立ち上がるのか、と。歩き方もサクサクとは歩かず、時の流れがとてもゆっくり。いままで意識したことのなかったことばかりでした。
沖 次の『くるみ』ではお父さんを観察しないと!
中嶋 優しさを前面にださなければ、と思っています。
──そんなシュタールバウム家のお父さんは、実は医務参事官という比較的おカタい職業だそうです。
沖 マーシャにとってはすごく優しいお父さんです。が、思い返すと実は、舞台でマーシャとお父さんはほとんど絡んでいないのでした。あのパーティーでは、大人は大人、子どもは子どもでそれぞれ楽しむ。子どもたちがひとしきり踊ると、「あとは大人たちの時間よ」と、大人たちが踊り出しますが、それを見て子どもたちは「パパ、ママ、素敵!」となるわけです。
中嶋 昨年の公演では僕は農業を営む客人(名前はバウアー!)を演じましたが、大人同士で楽しみながら、自分の子どもは大丈夫かな、楽しんでいるかな、と意識しながらお話ししたり、踊ったりしていました。パーティーの出席者は皆、職業や年齢が設定されていますが、たとえば「その服、素晴らしいですね」と他の人の服を褒めている仕立て屋さんがいたり、「その靴、素敵ですね」と皆の足元に興味津々の靴職人がいたり──。でも農家というのはちょっと難しかったです。
岸本 きっと、パーティーの食事の素材を持ってきた(笑)!
中嶋 そう、きっと持ってきていたはずです。
──ところで、従来版と今の版とではマーシャとフリッツの年齢が逆転しています。
岸本 以前のヴァージョンではフリッツはクララの兄という設定でしたが、昨年からはクララ改めマーシャの弟、ということに。マーシャは7歳。つまり、その弟のフリッツは5歳か6歳くらいです。10歳、11歳であればなんとなるものですが、さすがに5、6歳となると難しい! 演技の内容はかなり変わりました。とにかく、わちゃわちゃするようにして(笑)。
沖 私にとっても衝撃でした。夏未さんは初めて『くるみ割り人形』でクララを踊って以来、ずっと私のお兄ちゃんだったのだから! 実際のバレエ団生活を思い返しても、ダブルキャストで同じ役を踊ることが多くて、面倒を見てもらったり教えてもらったり、海外ツアーで1カ月同じ部屋で過ごして一緒に遊びに行ったりしていたので、ここで急に逆転!?という驚きが(笑)。
岸本 最近は身長の高い若いダンサーが多いので、ともすると、10代のお母さんのところに30代後半の男の子が「ママー!」と駆け寄ったりするおかしな風景も(笑)。舞台ならでは、です。
中嶋 舞台に出ると、実年齢は関係なくなりますね。ただし、急にやろうと思ってもできることではないですから、リハーサルの段階から意識して取り組んでいかないと。
とくにあのパーティーの場面のお父さんは、主催者として、他のお客さまたちをまとめる役割を担っているので、その場の雰囲気を支配するというか、その存在感を客人たちに背中で見せられたらなと思います。
──頼もしいです! では、東京バレエ団のヴァージョンの見どころをご紹介ください。
沖 なんと言っても、第2幕の舞台がクリスマスツリーの中ということ! まさに東京バレエ団のオリジナルですよね。
岸本 独特ですよね。一般的には2幕で舞台転換をしたらそれきり最後までそのままだと思うのですが、東京バレエ団のヴァージョンでは、「花のワルツ」の前にもさらに場面転換がある。見応えありです。
沖 夢の世界なのか現実なのか、あれ?どっちだろう?と思わせるような演出もあります。ネタバレになってしまうので詳しいことは言えませんが、ぜひ、スリッパに注目していただきたいです。
中嶋 スリッパといえばネズミたちと兵隊たちの戦争のシーンですね。
沖 あの戦争のシーンも、従来の版より"おもちゃ感"が高まって、兵隊一人ひとりに命が宿った感じがあります。どんどん兵隊の数が減っていくんですよ。それくらいの激戦だと、くるみ割り人形の登場の「大将出てきた」感の印象が強くなるでしょう?
──中嶋さんは花のワルツにも出演していますね。
中嶋 花のワルツは新しいヴァージョンになる時に、かなり変わりました。以前より難易度が高くなったと皆言っていますが、フォーメーションがややこしいのです。
岸本 そこは、"アンサンブルの東京バレエ団"なのだから、完璧にこなして(笑)!
──そろそろお時間。家族会議の終わりにメッセージを!
沖 今年一年、こんなふうに過ぎてきてしまいましたが、そんな時でも、クリスマスの楽しみ、ワクワク感は、皆さん変わらずお持ちだと思います。楽しんでいただけるよう頑張ります。
岸本 恒例のクラブ・アッサンブレのクリスマス・パーティーが開催できないのがとても残念。私たちも、声をかけてくださる方とお話しできるのを楽しみにしていました。今年はその分、舞台をたっぷり楽しんでいただけたら嬉しいです。
中嶋 今年は初めての役柄をいくつもやらせていただきました。全幕『ドン・キホーテ』の闘牛士も、実は今回が初めての挑戦でしたし、ベジャールさんの『M』も。こうした経験を活かして、『くるみ』のお父さん役でもその成果をしっかり出していけたらなと思っています。