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2021/03/31

20年間、ありがとうございました。これからは皆さんと一緒にバレエ団を応援します!──奈良春夏

出会いと別れの春──。今回は、3月いっぱいで退団する奈良春夏の登場です。奈良は2001年入団、同年の『ジゼル』で初舞台を踏み、今年2月の『ジゼル』でジゼルの母・ベルタ役を演じたのが、東京バレエ団団員としての最後の舞台となりました。


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──まずは20年間、お疲れさまでした。いまのお気持ちは?

奈良春夏 今は満ち足りた気持ちでいっぱいです。私には身にあまるような大役もたくさん踊らせていただき、思い残すことは何もありません。

──入団したのは溝下司朗芸術監督の時代でした。

奈良 もともと司朗先生の下で学びたいという思いがあって、東京バレエ団を目指していました。もちろん、多彩なレパートリーや海外ツアーでの活躍も知っていました。さらに、東京バレエ学校で指導していただいていた友田弘子先生(当時の東京バレエ団バレエ・ミストレス)、友田優子先生(同じく東京バレエ学校教師)に背中を押され、オーディションを受けました。
入団当初、司朗先生の下では飯田宗孝先生がバレエ・マスターとして活躍されていて、最初はとても怖い印象でした。が、2004年に芸術監督になられてからは、まるでお父さんのような存在に。普段はとても優しくて、私はそれに甘えていたかもしれません。もちろんバレエに関してはとても厳しかったですし、いつも的確なアドバイスをしてくださいました。
今振り返ると、想像にしていなかった大役を次々といただいたのは、まさに飯田先生が芸術監督の時代。たとえば、『ドン・キホーテ』のメルセデスやジプシーの若い娘、『眠れる森の美女』のカラボスなどは、もともとやりたいと思っていました。が、自分にはできないだろうなと思っていた役──たとえば『エチュード』のエトワール、べジャールさんの『舞楽』のソリスト、それからマラーホフ版『眠れる森の美女』のリラの精なんて、まさか私が!?と思っていたのだから。でも実は、カラボスのようなアクの強い役を学ぶことで、正反対のリラの精にも活かせる、こうした貴重な経験をさせていただき、本当にありがたく思っています。

──では、もっとも印象に残る作品、役柄は?

奈良 多すぎて、選ぶのは難しい! でも、まずはバレエ団初演(2009年)に携わったマカロワ版『ラ・バヤデール』のガムザッティと、"影の王国"の第2ヴァリエーションですね。初演ならではの苦労もありましたが、勉強になりました。
とくにガムザッティは、私がマカロワ版のことを大好きになった理由の一つ。その人物像は、王様の娘だから傲慢で、ちょっと意地悪な女性......というイメージではなく、一人の女性としてソロルを愛し、ニキヤとの三角関係に苦しむ女性でした。たとえば第3幕のヴァリエーションでは、そのことがはっきりと表現されます。テクニック面も体力的にも厳しい役柄でしたが、そういった表現で高めていけるストーリーがあります。
マカロワさんのリハーサルは、すごく集中して役柄に向き合うことができました。この経験で、演技面で大きく成長できたのではないかと思います。マカロワさんにいただいたメッセージ・カードは一生の宝物です。

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マカロワ版『ラ・バヤデール』のガムザッティ
photo: Kiyonori Hasegawa

──ベジャール作品でもいくつかの大きな役柄を演じました。

奈良 まずは『ザ・カブキ』の顔世御前。これも、まさか自分が演じることになるとは思っていなかった役柄です。入団当初から(斎藤)友佳理さんの顔世がすごく好きで、コール・ドを踊っていた時にもずっと友佳理さんを見ていました。たとえばシーン8の「雪の別れ」の顔世は、まるでセリフが聞こえてくるような真に迫る演技で、「感動している場合じゃないのに! 今から波の精で出番なのに!」と思いながら袖から観ていました。この役に選んでもらった時は本当に嬉しくて、友佳理さんの顔世のビデオを見て、まずは全部、勝手にマネをさせてもらって、そこから先生に注意をいただき、自分でいろいろ変えていこうと考えて取り組みました。

──顔世御前は海外公演でも何度も演じましたね。

奈良 最初にハンブルク国立歌劇場。それからパリ・オペラ座、ベルリン・ドイツ・オペラ、ウィーン国立歌劇場と、いくつもの大きな舞台で踊ることができました。あとはミラノ・スカラ座で踊れたらな──と思っていたら、2019年のツアーで実現。ああ、本当にもう思い残すことはないと、すでにその時に思っていたくらいです。

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『ザ・カブキ』の顔世御前
photo: Kiyonori Hasegawa

──スカラ座では『春の祭典』の生贄も踊っています。

奈良 そうなんです! 生贄は憧れの役でした。2011年に初めて配役された時には本当に嬉しかったのです、が! そこからが地獄(笑)。バレエシューズで踊る作品の中で、もっともキツい作品の最上位といえるのではないでしょうか。
登場シーンでは、暗い舞台の中心で照明を浴びて、結構長いこと独りで立っていなければならない。片目を手で隠しているものだからだんだん酔ってくるんです! 海外の傾斜のある舞台ならなおのことでした。

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『春の祭典』
photo: Kiyonori Hasegawa

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2019年3月、『春の祭典』リハーサルの1コマ。
左は指導者の那須野圭右氏。

──バレエ団生活の中では、辛いこともあくさんあったのでは。

奈良 入団して1、2年の間は、コール・ドに入れたとしても第2、第3キャスト、という時期が続き、ツアーに参加できないことも。同期で同じ境遇の佐伯知香ちゃん(その後プリンシパルとして活躍)と、「私たち、どうしよう......」と話していたのを覚えています。「私、ダメかもしれないな」と──。でも2年目に『眠れる森の美女』のカラボス役への抜擢があって、そこからは、立ち止まることなく走り続けました。
また、入団5年目くらいのことですが、怪我で3カ月ほどお休みさせていただいたことがあります。忘れられないのは、レッスンに復帰した際、当時、現役プリンシパルとして大活躍していた友佳理さんに「絶対にあなたは大丈夫。きっと素晴らしいダンサーになる!」と励ましてもらったこと。本当に忘れられません。

──最後の舞台『ジゼル』が終わった時は感無量だったのでは。

奈良 絶対に泣くだろうなと思っていたけれど、涙は全然出なくて、「あ、幸せだな」「嬉しいな」という気持ちに。本当は泣きたかったのに(笑)。
私は不器用なほうで、役につくと毎日ずっとそのことが頭から離れなくなって、お風呂に入っていても、寝る時でも、ずっと頭の中で音楽が流れ、本番のシミュレーションをせずにいられなくなってしまう。それはプロとして当たり前、苦しいとも思っていなかったけれど、『ジゼル』が終わった時は、そこからパッと解放されて、「ゴールした!」というやり切った気持ちになりました。

──ではアッサンブレ会員の皆さまにメッセージを!

奈良 お伝えしたいことがありすぎて、まとまらないです(笑)。
20年も」かもしれないけれど、これからも続いていく東京バレエ団の長い歴史の中では「たったの20年」。でも、その歴史の中でたくさんの舞台に立たせてもらい、たくさん応援していただいたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
会員の皆さまは、本当に家族のように私たちを温かく見てくださっていました。その温かい拍手に助けられたという気持ちがとても大きいです。
東京バレエ団は、これからも新しい作品、新たな取り組みに挑戦しますが、私も一緒に応援していきたいと思います。なので、ぜひ、皆さんの仲間に入れてください。私もメンバー入りします! これからも東京バレエ団をどうぞよろしくお願いいたします。

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大切な思い出の一つ、マカロワさんとのリハーサルより(2009年)



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