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2021/03/30

ソリスト役を踊るようになって10年以上。長い間、応援をありがとうございました。──岸本夏未

今回は2021年3月末に退団するダンサーの登場です。まずはソリストの岸本夏未。2003年に入団、18年の在団中にさまざまなソリスト役をつとめるとともに、近年はコール・ド・バレエの指導役としても手腕を発揮していました。

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──まずは18年間、お疲れさまでした!

岸本夏未 寂しい気持ちでいっぱいですが、長い間、大きな怪我も病気もなくつとめあげることができ、ほっとしています。最後の舞台は『ジゼル』。なじみ深い作品でしめくくることができて嬉しく思います。入団2年目から参加している作品ですので、思い入れがありました。子どもの頃、東京バレエ団の『ジゼル』のビデオを擦り切れるほど見ていたんですよ。(佐野)志織先生のドゥ・ウィリには本当に憧れました。

──『ジゼル』のコール・ド・バレエ初参加の思い出は?

岸本 先輩に注意され続けた記憶しかありません。前の先輩からも後ろの先輩からもチクチク注意されていました(笑)。最近はコール・ドの指導のお手伝いをさせてもらうようになりましたが、ここまで成長できたのは当時の先輩たちのおかげ。感謝しかありません。だから後輩たちには、「私もコール・ドで大変な思いをしてきたの!」って伝えたいです。
当時は注意を受けてばかりで、もう気分はどん底でしたが、憧れのバレエ団に入れたのだから、辞めたいとは思いませんでした。どうしても東京バレエ団で活躍したかった。絶対にソリストになりたい、あんな役、こんな役を演じたい!という思いで頑張りました。

──これまで取り組んだ中でもっとも印象に残る役柄、作品は?

岸本 一番に思い浮かぶのは、キリアンの『ドリーム・タイム』。当初、第3キャストでしたので東京の舞台では踊っていませんが、地方公演と海外公演の舞台で踊ることができました。身体の遣い方がクラシックとは全然違ううえに、ストーリーがない分、気持ちの持っていき方がとても難しい。そこを自分なりにストーリーを思い浮かべて取り組みました。あの素敵な衣裳、素晴らしい装置に照明──その空間に自分が立てるなんて、と本当に嬉しくなりました。その後、2019年の海外公演ではシングル・キャストに選んでもらい、ミラノ・スカラ座の舞台で踊ることができました。

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キリアン振付『ドリーム・タイム』。
2019年、ミラノ・スカラ座公演より(宮川新大と)
photo: Marco Brescia and Rudy Amisano - Teatro alla Scala

──2014年の『ロミオとジュリエット』では、ジュリエットという大役を演じました。

岸本 これは、触れないわけにはいかないですね(笑)! 
『ロミジュリ』は東京バレエ団のレパートリーにはなかったので、入団当初から、これだけは諦めなければなと思っていました。が、ノイマイヤー版を上演すると聞いた時、それはもう、どんな役でも出たいという気持ちに。だからジュリエット役の最終選考まで残れただけで、私の中では大事件(笑)。結果、主役には選ばれず、アンダースタディとしてジュリエットのリハーサルに出ることになったのですが、ギリシャ公演に参加していた私は、その分遅れてリハに合流。なのに、開幕まで1カ月を切った頃に、怪我で降板したダンサーの代わりにジュリエットを踊ることが決まり、その後死ぬ気で頑張ることになったというわけです。

──でも、すごく冷静に取り組んでいた印象があります。

岸本 とんでもない(笑)! パートナーの(後藤)晴雄さんのおかげです。

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ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』。パートナーは後藤晴雄。
左が第1幕(バルコニー)、右が第3幕(寝室)のパ・ド・ドゥ。
photos: Kiyonori Hasegawa

──本番のことは覚えていますか。

岸本 覚えているようないないような(笑)。
一番感動したのは、ゲネプロで初めてオーケストラの演奏で踊った時です。舞台上でバルコニーの場面の音楽が耳に入ってきた時のあの感動! この空間にいること自体が奇跡!と思えました。
本番は酷く緊張しました。その日は、ロミオ役の後藤晴雄さん(当時プリンシパル)とは一言ご挨拶しただけで全く会話を交わすことなく、本番へ──。晴雄さんがあまり話したくなさそうな空気を醸していたのを覚えています。忘れられないのは、第1幕のロミオとの出会いの場面。晴雄さんのロミオが、出会った瞬間、「緊張してる?」と声をかけてきたのです。咄嗟に「うんうん! それはもう!」って頷きましたけど(笑)、晴雄さんは私が緊張しているのがわかっていて、それをほぐしてくれたんですね。そこからは最後まで駆け抜けていった感があります。

──ベジャール作品で印象に残るのは?

岸本 日本では踊っていないのですが、『舞楽』。それから『ドン・ジョヴァンニ』第3ヴァリエーションも印象的でした。実は『ドン・ジョヴァンニ』も、怪我人が出て急遽踊ることになった作品です。(バレエ・ミストレスの友田)弘子先生に「第3ヴァリエーションを覚えて!!」と。私はまだコール・ドしか経験していなかったし、1週間でリハーサルとゲネと本番を必死でこなしました。

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「転機となった役柄かもしれません」という、ベジャール振付『ドン・ジョヴァンニ』
(2009年〈ベジャール・ガラ〉より)
photo: Kiyonori Hasegawa

──様々な作品でソリスト役を務めるようになったのは、その頃からですね。

岸本 その後すぐバレエ団で初演された『ラ・バヤデール』で、第1ヴァリエーションに配役してもらいました。実は、その前にマラーホフ版『眠れる森の美女』のルビーに欠員が出て、初めてソロでヴァリエーションを踊るという経験をしたのですが、でもそれは、その時すでに終わっていた『ラ・バヤデール』のトライアウトで、振付指導のオルガ・エヴレイノフ先生が私を見出してくださったからこその起用だったと思います。オルガ先生にはとても感謝しています。

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写真左:『ラ・バヤデール』より第1ヴァリエーション photo: Kiyonori Hasegawa 
右:2011年上演の際の終演後の1枚。右から2人目が岸本。
後列左から3人目がオルガ・エヴレイノフ氏。

──コール・ドの指導をはじめ、若手ダンサーたちのよき先輩として活躍していました。

岸本 2013年頃でしょうか、先輩たちがどんどん退団していって、「あ、もう自分がひっぱらなきゃいけないのかな」と思うようになりました。皆には、これからも東京バレエ団の美しいコール・ドをずっと崩さずに、引き継いでいってもらいたいなって思っています。

──では、最後のメッセージをお願いします!

岸本 昨年末は、恒例のパーティーが開催できず、皆さまと直接お話しさせていただく機会が持てなかったのが、とても残念でした。毎年、1年間の舞台の感想を聞かせてくださったり、『ロミオとジュリエット』の思い出を話してくださったりと、とても有意義な時間を過ごすことができました。入団から18年、また、ソリスト役を踊るようになってから10年以上、ずっと応援していただいて、感謝しかありません。ありがとうございました。

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