
今週末の『カルメン』『スプリング・アンド・フォール』、子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』、それから7月の全国ツアーにむけて多忙な日々を過ごしているダンサーたちですが、今回は、この4月にアーティストに昇進したばかりのフレッシュな3人、佐藤瑞来、鈴木香厘、富田紗永の登場です!
左から佐藤瑞来、富田紗永、鈴木香厘
──さて、鈴木さんと富田さんは同期で、東京バレエ学校出身だそうですね。
鈴木香厘 去年の春に研究生として同期で入りました。
佐藤瑞来 私が研究生になったのはその1年前でした。出身も別のスタジオです。東京バレエ学校から入った人たちは皆、基礎がしっかりしていて最初はすごく差を感じていました。
鈴木 いや、バレエ学校はバレエ学校、バレエ団はバレエ団で、全然違うと思います。
富田紗永 そう、バレエ学校もバレエ団も同じスタジオなのに、全然違う場所のようでした。プロの世界、ですね。
──去年は鈴木さんと富田さんが研究生として入った直後に、バレエ団がお休みに──。
鈴木 2カ月間のお休みでした。その後レッスンが再開された時も、密を避けての少人数クラスだったので、なかなか皆と一緒にレッスンできなくて寂しかったです。
富田 私なんて、(上野)水香さんや(柄本)弾さんと同じクラスでレッスンしていたんです! もう肩身が狭くて(笑)。
鈴木 でも羨ましかった!
富田 後から考えると、それは本当にいい体験だったんです。
富田紗永
鈴木 振り返ると、自粛生活もなかなか濃い時間だったと思います。家でレッスンして、レッスンしてレッスンして──(笑)。
佐藤 私も、あの時間があったから今がある、という気がします。例えば本を読んだり、動画で見つけたいろんな人の話を聞いたり、そうして得られたものを文字に書いてみると、自分の心と対話できるような気がするんです。
鈴木&富田 すごい!
佐藤 いや、そんな大袈裟なことじゃないの(笑)。ただ本を読むのは好きで、今もいろいろ、ジャンルを問わずに読んでいます。表紙のデザインが気に入って買うこともあるし、古本屋さんも好きです。
富田 私も自粛期間は普段できないことができました。私は今、大学に通っているのですが、大学の友人とZoomで話す機会を得られたことが大きかったです。
──大学では何を専攻しているのですか。
富田 政治学です。4年生なので今年卒業論文を書くのですが、ゼミの教授からは、せっかくバレエに打ち込んでいるのだからバレエに関係することを書いたら、とアドバイスをもらっています。
佐藤 私も「バレエだけ」にならないように、いろんなことに興味を持って、視野が狭くならないようにしたいなって思うんです。今は読書に加えて、いろんな音楽を聴くことが楽しい。1960年代の洋楽がすごく新鮮!
鈴木 ......私は趣味がなくて──。バレエばかりやっていたけど、バレエは趣味とは言いたくなかったし。これから"大人の趣味"を見つけたいです。
鈴木香厘
佐藤 私もずっとなかった。これから本を読むとか?
鈴木 ......。
富田 ピアスを作ってみるとか!
鈴木 ......。
佐藤 美術館に行くのもいいと思う!
鈴木 ......。
富田 そうだ、メイクに凝るとかは?
鈴木 してる(笑)。
──(笑)ところで、今はどの作品のリハーサルを?
佐藤 3人とも『パキータ』に取り組んでいます。
富田 "ザ・クラシック"なバレエだけれど、キャラクターの要素が入っていて、そこがまた難しい。
鈴木 捻りが入ったり、胸の向きを変えたり、同時にはっきりと踊って場所も揃えて──って、頭の中がパンクしそう(笑)。
──美しいコール・ド・バレエをつくり上げる難しさは、皆さん2月の『ジゼル』でたっぷり経験されたかと思います。
佐藤・鈴木・富田 大変でした!!!
鈴木 とくに第2幕は、こんなに緊張したことないってくらい緊張しました。1幕の農民は楽しく演じることができたかな。
佐藤 勉強になりました。舞台では主役の二人さえ良ければいいって思いがちですが、コール・ドも一人ひとりがそれぞれのバックグラウンドを持つ人間として演じるべきだと実感しました。そうでなければ、人を感動させる舞台をつくり上げることはできないんだと、よくわかりました。
鈴木 私もそう思う。第1幕の狂乱の場は、とくにそうです。
富田 私は3日間のうち、2日間は貴族役、1日だけ農民役をやらせてもらったのですが、ジゼルの死に至る「狂乱」の場で、どんどん役に入り込んでいって、最後には涙が抑えられなくなってしまいました──。あまり覚えていないのですが、役を生きるということを、初めて実感することができました。
2月の『ジゼル』"狂乱の場"より
photo: Kiyonori Hasegawa
──全国ツアーでは富田さんは『ギリシャの踊り』にも出演します。
富田 ベジャールさんの作品は、昨年10月『M』が初めてでしたが、また全然違う雰囲気ですね。『M』も『ギリシャの踊り』も海の音で始まって海の音で終わります。ベジャールさんはギリシャの海で過ごした時に『M』の構想を考えたそうですが、そんなところに共通点を感じながら取り組んでいます。振付はクラシックと少し違っていて独特で、難しいところもあるけれど、大好きです!
──楽しみにしています! それでは皆さん、今後の抱負を聞かせてください。
佐藤 「初心を忘れない」というのがモットーなのですが、バレエを始めた頃、バレエ団に入った頃の気持ち、踊れる喜びを忘れずに、芸術に携わっているという自覚を忘れずに取り組んでいきたいと思っています。
佐藤瑞来
富田 私も似ているところがあるかもしれない。目の前のことを一つひとつ丁寧にやっていくことが、結果的にいちばんいいのではないかな、と思うんです。
鈴木 私はもうその時その時が精一杯すぎて、今日はバレエ団! 帰ったら寝る!みたいな毎日(笑)。でも、去年、自粛後に舞台が再開された時、踊れることが、舞台にいられることが本当に楽しくて楽しくて──!。その気持ちを忘れずに、慣れたつもりにならないよう、毎回新鮮な気持ちで、取り組んでいきたいです。
趣味の話題が出たので、3人に今、いちばん楽しいモノを紹介してもらいました。
写真上は、読書が楽しい、という佐藤瑞来の最近のお気に入り。彼女は、一度にいろんな本を同時進行で読む派! それにしても幅広いジャンルにわたっていますが、「今いちばん面白く読んでいるのは、喫茶店の本。喫茶店って自分と向き合う素敵な空間なんです!」
真ん中の写真は、鈴木香厘の愛犬。"大人の趣味"を探して、どんな本が面白いかリサーチ中の鈴木ですが、可愛い愛犬の話になると一気に笑顔!「癒されています」と紹介してくれたのは、シェリー(左)とメイ(右)。可愛いです!
下の写真の本の持ち主は、富田紗永。彼女が大学で所属しているのはロシアに関するテーマを研究しているゼミで、卒論ではバレエに関することを書いてみたいそう。「バレエとの両立は大変ですが、頑張ります!」