
様々な作品でいろんなキャラクターを熱演、独特の存在感と演技力を発揮しているファーストアーティストの山田眞央が、バレエの舞台での演技のあれこれを熱く語ります!
──入団は2013年でしたね。
山田眞央 今年9年めです。入団当時はちょうど『春の祭典』のリハーサルをしていたのをよく覚えています。
──2013年というと、〈東京・春・音楽祭〉での『春の祭典』?
山田 初日からいきなりでしたから、それはもう印象的でした。入団したのが月曜日で、いきなり「覚えて」と言われるも、初めてのベジャール作品でしたから全然覚えられない。しかも、まだバレエ団に馴染んでいないので誰にも助けを求められず(笑)。それで水曜日には「もう入れる?」と──。全然覚えていない状態で、無理やり入らせてもらった。今となっては懐かしいですね。
──その年はベジャールの『ザ・カブキ』も上演しています。
山田 その時に初めて与市兵衛を演じました。とはいっても、バレエの中での演技は初めてのこと。小さい頃からバレエをやっていたとしても、本格的な演技を学ぶ機会なんて普通はありません。
2019年7月、ウィーン国立歌劇場『ザ・カブキ』公演で演じた与市兵衛
photo: Wiener Staatsoper-Ashley Taylor
──役作りはどうやって?
山田 僕がキャスティングされる前にこの役を踊っていた永田雄大さんにいろいろと教えてもらいました。飯田先生(飯田宗孝団長)、カズさん(木村和夫)、直樹さん(高岸直樹)にもアドバイスいただきましたが、初めてのことばかりで、しかも"和"の世界! 何が正解なのかわからないまま必死で取り組みました。
今も思うのですが、演技というものは結局、周りからどう見えているかということに尽きる。それは自分だけで考えてもよくわからないものなんだと感じます。
たとえば2019年に新制作された『くるみ割り人形』の時のことですが、第1幕のマーシャの家のクリスマス・パーティーの場面で、僕は最年長の、ちょっとユーモラスな靴職人のおじいさんを演じました。
──お客人たち全員に名前が付けられていましたね。
山田 シューベルト、でした。この役を演じた初日の終演後、会う人会う人から口々に「もっとやっていい!」と言われて、そうか、もっとやっていいんだ、と気付いたことを覚えています。翌日からはそうするようにしましたが、演技については、舞台でのリハーサル、さらには本番を経験しないと掴みにくいところがあります。まず、相手がいなければわからないことがあるし、衣裳・装置がないと遊びどころも変わってくる。壁にどんな絵が飾ってあるか、それを見ての反応もあるはずですから。
『くるみ割り人形』第1幕。靴職人シューベルトを演じた山田眞央。
左はその妻役の伝田陽美(2020年12月の舞台より)
photo: Kiyonori Hasegawa
──スタジオのリハーサルでは、それを想像しながら稽古をするわけですね。
山田 いや、スタジオではまた別にやることがあって、それでいっぱいいっぱいなのです(笑)。実は、演技がメインの役は舞台上の展開のきっかけになることが多く、決め事がたくさんあるんです。なので、まずはストーリーの進行上で必要なことを押さえ、次にその間の過程を埋めていく感覚で取り組みます。その中で、決め事に対して自分だったらどう反応するか、というように自分なりに工夫もしていきます。
──子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』では、ガマーシュとロレンツォを演じています。
山田 全く違うタイプの役です。ガマーシュは、皆の中にいても実は誰とも絡んでいない人物です。絡むというより、いじられている存在。こうしたアクセントみたいなキャラクターを演じるのは、何でもできる分、すごく難しい。いっぽうのロレンツォは、基本的にいつも誰かとやりとりして、会話している。そのやりとりの中で自然とキャラクターができあがってくるところがあり、やりやすいとも言えます。
9月に再演した『海賊』で演じたパシャも、意外と会話の少ないキャラクターで、周りの皆と馴染んでいない、別次元の存在。独特の難しさがありました。
演技というものは、見た人がどう感じるかにかかっていると思います。演技がすごく良かったという反応をいただいたり、極端なネタを披露して笑いが取れたりしない限りは、成功したかどうかがわかりにくいものです。
──笑い?
山田 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』ではカタラビュットを演じていますが、冒頭の語りで笑いをとったり、以前はお客さんと直接絡んだりすることもありました。
子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』カタラビュット
photo: Kiyonori Hasegawa
──バレエ団に入ってセリフをしゃべるなんて、思いもよらないことだったのでは。
山田 とても緊張しますが、嫌いではないです。実は高校時代、声優の養成所に通っていました。オタクでしたから(笑)。大学でも歌や演技を学ぶ機会があったので、役立つことは多いと思っています。ずっと好きなことをやってきた僕ですが、できることが役立つなら嬉しいです!
──11月の公演では金森穣さんの新作『かぐや姫』に出演します。新作のリハーサルの手応えはいかがですか。
山田 穣さんは、その場で次々とアイデアを出して、毎回課題を見つけてくださる。僕は村人に配役されていますが、「もっとキャラクターというものを追求してもらいたい」とアドバイスをいただきました。基本的に踊りで構成されている作品ですが、その中でどう見せることができるか、やってみたいと考えています。面白くなると思います。
photo: Ayano Tomozawa
お香、好きなんです。以前海外公演でオマーンに行ったとき、お土産にフランキンセンスという乳香(炙って香りを楽しむ)をお土産に買ってきて以来、人間の五感の中で、嗅覚へのアプローチってなかなかしないものだなと感じて興味を持つように。夜、寝る前にお香を焚いてリラックスしています!