
今回登場の岡崎隼也は、先の公演でキリアン振付『ドリーム・タイム』を踊り、さらに金森穣振付『かぐや姫』第1幕世界初演で童の一人を演じつつ黒衣役もこなすという活躍ぶり。今週末、新潟公演を控えている岡崎に、クリエーションの手応え、これからの創作活動についても聞きました。
──まずは『ドリーム・タイム』ですが、これを国内の劇場で踊るのは久しぶりのことでは?
岡崎隼也 2015年の〈シルヴィ・ギエム・ファイナル〉ツアーの、全国公演で踊っています。その後、2016年の第30次海外公演、イタリアのカリアリ公演で踊り、2019年の第34次海外公演ではミラノ・スカラ座で踊ることができました。
今回の上演では、6年前、エルケ・シェパースさん(NDTの元ダンサーで本作の振付指導者)に教えていただいたことに忠実に、という思いでのぞみました。同時に、その時々の自分の身体だったり気持ちだったりがきっと反映される作品だとも思います。もちろん、とても緊張する作品ですし、ものすごく集中力が必要ですが、だからこそ、ほかのことを考えずに踊ることができますし、まさに、その時の僕自身が出る作品なのかなと思います。
キリアン振付『ドリーム・タイム』。金子仁美と。
photo: Shoko Matsuhashi
──キリアン作品では『小さな死』も経験されていますが、それぞれ、どのような作品だと捉えていますか。
岡崎 『ドリーム・タイム』は夢を題材としたバレエですが、表面的な感情というよりもむしろ、深層心理を表現している気がします。自分でもわかっていない感情とか、人間の根底にあるもの、ですね。『小さな死』にもより深い意味合いが感じられて、ストレートな表現ばかりではない。これはこういう意味なのかなと、観る側もいろいろ考えながら観ることができます。
キリアンさんの動きについては、2作品にしか関わっていないので何とも言えませんが、力もしっかり入れるし、いい具合に抜けもするし、硬くない。けれど、ぐにゃぐにゃというわけでもない──。いちばん気持ちのいいところで踊れる感覚です。
──そして、『かぐや姫』のクリエーションについてはいかがでしたか。まずは童役に配役されていましたが......。
岡崎 金森さんが3月に初めていらした時、まずトライアウトが行われたのですが、そこでの振付が童役に反映されました。童の場面で使われる曲を流して、「これ、やってみて」と穣さんが動きをつくり、ダンサーと一緒に動きながら進めていったのがスタートでした。
穣さんは、なるべく明確に動きを見せようとしてくださっていました。トライアウトですから、なるべく、穣さんの全身の動きを"コピー"、といっていいのかどうか──、そう、真似するように努めましたが、動きを具体的に説明してくださるので、とてもわかりやすかったですね。
──金森さんは、その場でアイデアをぽんぽんと出される方だと聞いています。
岡崎 まさにそうです。すごいことですね。もちろん、しっかりと準備をされているからこそだと思いますが、その場で振付を考えていらっしゃる様子を見ていると、音楽に対してすごく繊細な感覚を持っていらっしゃる方なんだなと思いました。楽譜を見ながら振付けられたり、何度も音楽を聴き、そこで中で聞こえてくる音に振りを当てはめていったり──。本当に、新鮮な体験というか、これぞクリエーション、という感じがしました。
──その後、翁に寄り添い、謎の力を持つ黒衣役も演じることに。
岡崎 10月中旬に始まった最終クリエーションの初期に、「試しにやってみたいことがある。まだ誰にも言っていないのだけれど」と穣さんに声をかけられたのが黒衣役のスタートでした。それは、翁にぴったり寄り添う黒衣なのだけれど、「こんな意味合いを持たせたい」「この作品を動かすような役柄になれば」と説明してくださいました。
リハーサルより。左からかぐや姫役の足立真里亜、翁役の飯田宗孝、演出助手の井関佐和子氏、黒衣役の岡崎隼也、振付の金森穣氏。
photo: Shoko Matsuhashi
──そしていよいよ第1幕の本番!
岡崎 ワクワクしましたね。新しい作品が生まれて、これからさらに育っていくだろうし、もっと変わっていくだろうし、第2幕、第3幕の構想についても少し聞いていますが、早くクリエーションが始まらないかなと思っています。
今回のクリエーションは、本当に勉強になりました。やはり音楽が大事だと思いましたし、音楽へのアプローチの仕方によって見え方がこんなに違ってくるんだと実感しました。同じ振りでも少しずらすだけで振付の表情ががらりと変わる! めちゃくちゃ刺激を受け、影響を受けました。
『かぐや姫』第1幕より。中央手前は翁役の飯田宗孝、奥が黒衣の岡崎隼也。
photo: Shoko Matsuhashi
──ご自身も振付家として、いずれグランド・バレエに挑戦したいという思いは?
岡崎 自分はまだまだそこまで行けていません。まずはこれこそが自分流だといえる大きな作品を創らないと! 〈Choreographic Project〉でも毎回作品を発表していますが、その枠組みに収まりきらない、しっかりとしたものを上演することが僕の第一歩になるかなって思っています。そのためには、創り続け、上演を重ねていくしかないと思います。
最近は、自分の作品で踊ってみてもいいかなとも思っているんです。古典も好きだし、キャラクターも嫌いじゃない。だけど、もっと身体の限界まで使って踊ってみたいと思うことも。あくまで創る時は創る事に集中したいと思っていますが、踊ることって「めっちゃ楽しい!」んですね。
──ダンサーとしての活躍の場としては、もうすぐ『くるみ割り人形』公演です。
岡崎 ウッデンドールと、中国、それから第1幕の客間のおじいさんを演じます。
──おじいさん(役名はシューベルト。年配の靴職人という設定)!
岡崎 実は、もともと第1幕の客間の場面には配役されていなかったのですが、あのキャラクターってちょっと不思議だなと思っていて、「やりたいな」とぽろっと言ってみたら、「やってみたら」と(笑)。昨年はニコライ・フョードロフさんに振付指導に来ていただいたのですが、この役をすごく掘り下げてくださって! 「おじいさんだったらこうなってもいいよね」「こういうふうにもできるよね」とたくさんアイデアをくださり、その中から、自分でしっくりくることをすればいいとアドバイスをしていただきました。いろんなキャラクターを演じるうえで勉強になりました。志願してよかった! もちろん、志願したからといって必ずしもできるわけではないですが(笑)。
──今回は全国ツアーも実施します。
岡崎 コロナ禍で舞台の活動自体をやっていいものかどうか問われる時期もありました。が、公演をして、観に来てくださった方が元気になれば、それがいちばんだと思います。もちろん、僕らも舞台のおかげで楽しむことができる。だから、ひと公演ひと公演を大切に、来てくださる各地の皆さまにとっていい時間になるよう、ツアーにのぞみたいと思っています。