
2021年最後のブログは、プリンシパル・秋元康臣の登場です。さまざまな作品、さまざまな初挑戦に取り組んだ今年一年を振り返りつつ、2022年への思いを語ります!
photo: Shoko Matsuhashi
──『くるみ割り人形』ツアーが無事終了しました。
秋元康臣 東京公演のあと、大分、浜松で王子を演じました。東京以外の劇場でも多くの方に観にきていただけることは本当に嬉しいこと。この『くるみ割り人形』は3年目の上演となりましたが、それでも毎回緊張して踊っています。
──緊張!?
秋元 します! とくに『くるみ』の王子は、しばらくの間クリスマス・ツリーの後ろに隠れているので、余計に緊張するんです。でも実は、どんな作品でも舞台は毎回緊張します。
『くるみ割り人形』第2幕より。パートナーは沖香菜子
photo: Kiyonori Hasegawa
──今年はほかにどんな舞台での緊張が印象的でしたか。
秋元 緊張──そうですね。とくに大変だったのは7月、かな。〈HOPE JAPAN 2021〉のツアーでの、ベジャールさんの『ギリシャの踊り』は初めての挑戦でしたから、緊張しましたね。ツアーで踊り、その後8月に〈横浜ベイサイドバレエ〉でも踊る機会があって、これは外で踊るとより気分がいいなと実感しました。あの作品は終盤に向けてどんどん熱くなっていく踊りですが、夏の港の、屋外の雰囲気にすごく助けられて、作品の世界に没頭することができました。気持ちよくなりすぎて、うっかりミスをしてしまいそうに(笑)。でもとてもいい経験でした。
──〈HOPE JAPAN〉の東京公演では、ベジャールの『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥを踊られました。
秋元 『ギリシャ』に挑戦しながらの『ロミジュリ』のリハーサル、というめちゃくちゃな時期がありましたね(笑)。でも、志織先生(バレエ・ミストレスの佐野志織)と、バレエ団初演を踊られた長瀬信夫先生にも見ていただいて、時間をかけて分析しながら取り組んだのはすごくいい体験になりました。
〈横浜ベイサイドバレエ〉での『ギリシャの踊り』より、ソロ。
photo: Kiyonori Hasegawa

ベジャール振付『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥ。パートナーは足立真里亜。
photo: Shoko Matsuhashi
──世界初演作品にも取り組みました。
秋元 金森穣さんの『かぐや姫』は、2019年の勅使川原三郎さんの『雲のなごり』以来の世界初演作品でした。勅使川原さんの時は、いつもと全然違う場所が筋肉痛になって、最初は「これはとんでもないことになる!」と思ったりもしたのですが、のちのち振り返ってみると、力の抜き方や、その場で動きを生み出すことを学んだり、細部にいたるまで身体のいろんな使い方を試すことができたりしました。いい意味で「とんでもない」体験をしたと思っているんです。
今回の金森さんの作品は、また違った体験になりました。金森さんの頭の中にあるイメージ、振付、音取りなど、どれ一つとっても細かく出来上がっているものがあり、あらためて振付をきっちりやることの大切さを実感しました。見せ方についても、ここをこうやってこうやるとこう見えるという面で、クラシックとは違った部分を学ばせていただきました。でも、それが楽しかったんですよね。最初の道児のソロなんて、もう、本当に楽しかった!
──振り返ると2021年もいろんな挑戦がありましたね。
秋元 2020年はコロナの影響で舞台数が減り、いつも通りには行かなかった分、今年はたくさん舞台に立つことができましたね。プライベートでは、ハミルトンが優勝できなかったことが一番悔しかったです!!
──......ハミルトン?
秋元 F1です。本当に悔しかったですね。実は、年間を通して全試合を観ることができたのは初めてのこと。ネット配信なんですが、ちゃんと予選と決戦、その前のフリー走行から観ることも。決戦は夜中になることが多いですが、可能な限り、オンタイムで観るようにしていました。それができない時はあとで、ということになりますが、その場合、うっかりスマホにニュースが入ってきちゃったのを目にしないようにすごく気をつけています。結果を知りたい気持ちをぐっと我慢して、「見ない」「知らない」と(笑)。
──リアル観戦もしたいところですよね。
秋元 実は今年、なんとか都合をつけて鈴鹿に観に行くつもりだったのですが、その試合自体が中止になってしまって──。本当に残念でした......。
──来年、実現することをお祈りします! そして、2022年のバレエ団公演第一弾は『白鳥の湖』。
秋元 実は、東京バレエ団での全幕王子役デビューはブルメイステル版『白鳥の湖』だったんですよ。今回は装置が新しくなると聞いて、とても楽しみですね。素晴らしい装置には助けられる感覚があります。作品の世界に入り込みやすくなるというか、甘えられるというか(笑)。舞台全体がパワーアップすると思います。
──王子役が続きますね。
秋元 王子役だからどう、ということは特にないんです。(『海賊』の)コンラッドでも、ジークフリート王子でも、取り組み方はどちらもそんなに変わりはないですね。もちろん、王子役もそれぞれで、今回踊った『くるみ割り人形』の王子はより親しみやすく、親近感のある、明るい王子。でも『白鳥の湖』の王子はもうちょっと影があるというか──。とくにこのブルメイステル版は、王子の迷うさま──たとえば第3幕、オディールの誘惑に惑わされるさまがまざまざと見えるところが面白い。だからこそ、演じがいのあるヴァージョンといえます。東京バレエ団の場合、第3幕のキャラクターダンスが大きな見どころでもあります。ぜひ楽しんでいただけたら!
──4月には、クランコ版の『ロミオとジュリエット』のロミオ役も決まっています。
秋元 僕にとって初のクランコ作品です。クランコのバレエは『オネーギン』を観ていますが、ダンサーにとっては実に難しい作品だなと思いました。それだけに、『ロミオとジュリエット』は大きな挑戦になると思います。
──では、新しい年への抱負をお聞かせください。
秋元 コロナ禍の中で、舞台というものはお客さまに観にきていただけないとできないものだと実感しました。たとえ動画でも、観ていただけるのはとても嬉しいことだけれど、自分としては、実際の舞台のその時の空気感を伝えることができたら、もっといいものを見せることができる、もっと伝えらえる──そう信じて、そうであってほしいという願いを込めて舞台に取り組んでいます。そんなふうに舞台をお届けできる年になってほしいと、抱負というよりも願い、ですね。そして、そうであってくれたら、できる限り精一杯、踊っていきたいと思います。
──精一杯!
秋元 そう。すっ転んでも精一杯(笑)!
それともう一つ。コロナ禍になる前は、公演の時によく皆さまからお手紙をいただいて、とても嬉しく思っていました。なかなかお返事を差し上げることができず申し訳ないのですが、本当によく、細かいところまでご覧くださっていて、参考にさせていただくこともあるし、僕の大きな活力にもなっていました。小さな男の子からのお手紙も多く、「ジャンプ、憧れています」とか「目標にしています」とか! これ、本当に嬉しいんです。コロナ禍の中では劇場でお手紙をいただくのは難しかったけれど、来年は、お手紙をいただくことができるようになればと思っています。どうぞよいお年をお迎えください。
『かぐや姫』第1幕世界初演より。
photo: Kiyonori Hasegawa