
今回は、入団9年目の中島理子と8年目の最上奈々の対談をお届け。現在、ファーストアーティストとして活躍中の二人が、『くるみ割り人形』コール・ド・バレエの秘密を語ります。
左から中島理子、最上奈々。photo: Ayano Tomozawa
──二人ともこのブログ初登場! 簡単に自己紹介をお願いします。
最上奈々 私は東京都調布市出身、2014年に入団しました。初舞台は『ドン・キホーテ』で、最初は第2幕の居酒屋のセギディーリャを、その後の全国公演で第1幕のセギディーリャを踊らせてもらいました。
中島理子 私も東京の生まれで、練馬区出身、2013年の入団です。初舞台は──、あの、踊っていなくて出ただけでも初舞台、ですよね?
──というと?
中島 実は、入団した年の6月、『ラ・シルフィード』で宙吊りのまま舞台を横切る、という役をいただきました。でもこれ、舞台に「立って」いないですよね(笑)。
最上 私もやったことがあります!
中島 いつも新人がやる役なのですが、ワイヤーで吊られて、そのベルトが体に食い込んで痛いし、でも妖精らしく優雅に飛んでいかないといけないしで、もうドキドキでした。
中島理子 photo: Ayano Tomozawa
──でも舞台に「立って」いない(笑)。
中島 ──なので(笑)、バレエ団で初めて舞台に「立った」公演はというと、2013年12月のギリシャ公演で、子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』の乳母と、『エチュード』のシルフィードという役です。『エチュード』は人生でいちばん緊張したといってもいいくらい緊張しました。舞台にプリンシパルの方と私たち3人、という状況でしたから。
──そんな二人も経験を重ねて、いまや東京バレエ団のコール・ド・バレエに欠かせないメンバーに。もうすぐ開幕の『くるみ割り人形』のコール・ドでも大活躍ですね。
最上 第1幕の雪の場面はとにかく体力的につらいですね。動きが速いうえに、パ・ド・ブレで移動することが多く、それも皆が四方で同じだけ動く必要がある。
中島 移動の時に基準になるのが、舞台の床のリノリウムの線です。その線を数えて、「2本行って1本半戻る」とか、「2本半行って1本戻る」などと決めているんです。だからパ・ド・ブレで移動している時も、「いま1本進んだな」「あと半分」と考えながら動いています。
最上 それも、横の様子を把握しながらです。
中島 360度見えているかのように、ですね。
最上 集中しすぎてしまうと周りが見えなくなってしまうものなので、ある意味、少し集中力を緩めて、なんとなく全部が見えている状態にしておくんです。
見応え満点の第1幕、雪のコール・ド・バレエ。photo: Kiyonori Hasegawa
──いきなり高レベルな話ですが、最初からその技術を要求されるわけですね。
最上 冷や汗をかきながらです(笑)。もう息もしていませんでした。
中島 初めて経験した本格的なコール・ド・バレエは『ラ・バヤデール』でしたが、先輩から列を揃えるポイントを「ここは踵が線」「この時はつま先」などと細かく教えていただきました。リノリウムの線で揃えると言っても、その都度、基準になる部分が違うんです。「後ろ足が線」ということもあって、最初は「見えないのに!?」と思いましたが、「足で触ればわかる」と! もちろん、すぐにできるわけではありません。
最上 『くるみ割り人形』の場合はとくに、動きながら揃える、ということが多いかもしれません。後半になるとどんどんキツくなって、かなり呼吸が苦しくなります。
中島 雪の場面の舞台装置、きれいですよね。衣裳も素敵です。白のチュチュですが、『白鳥の湖』のチュチュとは雰囲気が全然違って、もっと大ぶり。回ると遠心力で振られる感覚があります。頭飾りもネットで被る形で独特できれいですよ。マーシャたちをお菓子の国へと送り出す幕切れの感じもすごく好きです。
──体力的なキツさがあってこその美しいコール・ドなんですね。それにしてもそんな体力、どうやってつけているんですか。
最上 リハーサルの段階で何回も同じフレーズを繰り返し練習していれば、体力は自然と付くものです。最近はずっとマスクをしてのリハーサルですから、本番、マスクを取ると「ああ、楽!」って思います。マスクで鍛えられています(笑)。
最上奈々 photo: Ayano Tomozawa
──そして終盤の花のワルツ。
中島 こちらは男性が入るので、また全然違う雰囲気になりますね。
最上 女性だけでは出せない動きもありますから。
中島 そう、皆でリフトすると華やかだなって思います。男性に何度も何度も持ち上げていただきますが(笑)、リフトされた瞬間、衣裳がふわーっとなるのが雰囲気があっていいんです。
最上 コール・ドについては男性より女性のほうが経験している回数が格段に多く、パートナーにもよりますが、男性が新人さんの場合は女性のほうからリードしていくことも。たとえば移動の時。目的地まで男性を少しひっぱっていくような形になるとか──。とにかく、隊形移動が多いのが特徴ですね。最初の段階で並んでいるところが、気づいたらV字になっていたり、クロスになったり。
中島 斜めのラインを作っていたのがあっという間に半円になったりします。花の"ワルツ"ですから、三拍子でステップを踏みながら、移動があるので大股ですけれど(笑)、1、2、3のリズムを決して崩さない。
最上 たくさん移動する人も、全然移動しない人もステップは同じ。その場でずっとステップを踏み続ける人もいますが、実はそれはそれで大変なんです。
第2幕、花のワルツより。photo: Kiyonori Hasegawa
──二人は雪と花のワルツのコール・ドのほかにも配役されているんですよね。
中島 私は第1幕の男の子と兵隊、雪、それから2幕の花のワルツはコール・ドだけでなくソリストを踊る日もあります。
最上 私は第1幕の女の子と兵隊と雪、それから第2幕の花のワルツです。さらに、鹿児島と香川では第2幕のディヴェルティスマン、中国を踊ります。初めてなのでもう不安でいっぱいです。パートナーは井福俊太郎くん。たびたび一緒に組んで踊っているので、とても頼りにしているのですが、苦手意識のあるテクニックも出てくるので、そこは練習を重ねて頑張っています!
中島 ぜひ、全国のどこかの会場でまで、足を運んでいただけたら嬉しいです!
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10月はじめに我が家に来たばかり。ちょうど私たちが『くるみ割り人形』のツアーに行っている間に、お散歩デビューする予定です。「チュン、チュン!」と鳥のように鳴くのが癒しに。以前飼っていた犬が亡くなった時は喪失感が激しく、泣いてばかりいましたが、ウールくんを迎えたことで、家族の中で前の子のことも自然と話せるようになりました。とても大事な家族です。(中島理子)
たまたまハリネズミカフェに行って、飼いたいなと思うように。その時は我慢したのですが、やはり癒しが欲しいと飼うことを決意。住んでいるマンションが「小動物なら飼ってOK」だったことと、夜行性なので生活サイクルが合うのでは、という点が決め手でした。飼い始めて5年ですが、私が近づくとピピピピーッと赤ちゃんがお母さんを呼ぶ時のように鳴きます。可愛いです!(最上奈々)