
『くるみ割り人形』開幕! バレエ団は東京公演ののち、全国8都市をめぐるツアーに出発、各地でクリスマスの夢の舞台をお届けします。今回は、今年夏にソリストとして入団、全国ツアー初参加となる安村圭太の登場です。
──はじまして。8月にソリストとして入団されたのでしたね。
安村圭太 はじめまして。8月16日に入団し、その直後に〈横浜ベイサイドバレエ〉の『ボレロ』に参加していますが、11月の『中国の不思議な役人』が正式なデビューとなりました。
──出身はどちらですか。
安村 茨城県鹿島市です。サッカーの鹿島アントラーズ、それから鹿島神宮では武術が盛んでしたから、男の子はそちらに親しむことが多かったのですが、僕は3歳の時からバレエ。周囲の人は「え? バレエ?」という反応が多かったです。バレエをはじめたきっかけは、その昔、『白鳥の湖』を観に連れていってもらった時、第2幕の女性たちのチュチュを見て、「あれを着たい」と言ったそうなんです(笑)。それでバレエを習わせてもらうようになりました。
──そこからバレエ一直線に?
安村 実は、両親はバレエを続けることには反対で、大学を出るまでは続けていいけれど、卒業して就職したらやめる、という約束でした。中学2年の時、高校受験のために東京に出てきて、無事大学付属の高校に合格。これで卒業までの7年間はバレエができることに。大学ではバレエサークルを自分で作って、公演活動もしていました。4年生の時、ようやく両親に「バレエを続けていい」と言ってもらえたので、途中まで書いた卒論もそこでやめ、きっぱり大学をやめました。
──やめてしまった!?
安村 親には反対されました。そりゃそうですよね(笑)。
──その後プロとしての活動は順調にスタートできましたか。
安村 子どもの頃からずっとバレエに専念していたわけではなかったので、最初はどこのオーディションにも通らなかったのですが、しばらくして谷桃子バレエ団に入団することができ、そこで8年間踊りました。レパートリーはクラシックが中心で、たとえば、学校公演で上演していた『白鳥の湖』では王子とロットバルトを、『眠れる森の美女』では王子、カラボス、『ドン・キホーテ』のエスパーダなどを演じていますが、どちらかというとキャラクターの強い役柄のほうが多いかと思います。
──昨年退団し、しばらくはフリーでしたね。
安村 カンパニーには所属していたいなと思ってはいたところ、縁あって東京バレエ団に入ることになりました。東京バレエ団はスタジオの広さ、公演数の多さなど、ダンサーにとっていい環境がととのっていると感じます。ダンサーの幸せというのはいろいろだと思うのですが、僕はとにかく舞台で踊りたかったので、とてもハッピーです。上達することに集中できて、その結果どんどん良くなっていく。そういう場が用意されていることはバレエ団として理想的です。
実は昨年、公演の企画を手掛けたのですが、制作とか宣伝、お金の管理もして、踊り以外にも、やりがいがもある楽しいことがある、と感じていて、僕はそれも好きなんです。でもそういう喜びは、5年後、10年後も楽しめることなので、いま、バレエ団にいる時はとにかくダンサーとして集中できることが嬉しいです。
──デビューとなった『中国の不思議な役人』の手応えは?
安村 最初はもう、「無理だ!」と思いました(笑)。周りが全員ベジャール作品経験者という中にいきなり一人で入るのは大変なことだと思っていて、必死でした。結果、すごく楽しかったですね。デビューがベジャール作品だったのはよかったと思います。
でも、最初のうちは音楽が全然聞こえてこなくて戸惑いました。皆がどう音を取って踊っているのか、どんなカウントで踊っているのか、全然わからなかったんです。でも音に対して振付がしっかり当たっているので、不思議とだんだん聴こえるようになってくる。また、最初に舞台映像を見た時はよくわかっていなかったのですが、リハーサルを重ね、理解が深まってくると、本当に面白い作品だとわかります。繰り返し上演される、素晴らしいレパートリーだと思いました。
実は、『ボレロ』の舞台も感動的だったんですよ。子どもの頃にシルヴィ・ギエムと東京バレエ団で観た記憶があるので、その場に立つことができたことに感動! 来年7月の〈ベジャール・プロ〉も楽しみです。
〈横浜ベイサイドバレエ〉での『ボレロ』より。photo: Hidemi Seto
──そしていよいよ『くるみ割り人形』全国ツアーです。
安村 第1幕ではマーシャの父、第2幕ではアラビアと花のワルツのソリストを踊っています。アラビアはブラウリオ・アルバレスの振付ですが、イレギュラーというか、経験したことのない組技が入っていて、なかなか難しいんです。パートナーは榊優美枝ちゃん。彼女はとても雰囲気のあるダンサーですから、大人っぽい、妖艶な踊りをお見せできたらと思っています。『くるみ割り人形』はマーシャが成長する物語ですが、その中でアラビアはマーシャを大人の世界へといざなうキーポイントになれば、とブラウリオは言っていました。振付者の意思を踏まえて、大人の雰囲気をしっかりと出していけたらと思います。
それから、全国ツアーではドロッセルマイヤーを演じます。どう演じるか、いまからとても楽しみにしています。
『くるみ割り人形』の舞台裏で。アラビアの衣裳です! photo: JPD
──演技は楽しんで取り組めるほうですか。
安村 そうなんです。実は、先月の学校公演、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』でエスパーダを演じたのですが、友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)が、「どうしたい?」と僕の意向を聞いてくれたんです。僕は役柄をいろいろつくっていきたいほうですから、「ええっ!? 聞いてくれるものなんだ」と嬉しくなりました。
──それでは、今後の抱負を聞かせてください。
安村 僕自身は、3歳から習っていたとはいえ細々とやってきたほうなので、小さい時からバレエに専念してきたダンサーたちとちょっと違うと思うんです。でも逆に、いろんなことやってきたということが僕の強みなのかなとも。主役をやってと言われたら、もちろん断りはしないですけど(笑)、いろんな舞台を観てきて、いろんな役をやってきた僕だからこそできる、ジョーカーみたいな、わりとどこにでも入れるような存在になれたら嬉しいです。バレエ団には若くて才能あるダンサーがたくさんいますが、その人たちのポジションを奪うようなことはあまりしたくないし、その人たちが主役を担う時、周りの空いたところに僕がいることで、バレエ団にとってプラスになる、そういう存在になれたらと思っています。
通勤中やストレッチをする時に使っているヘッドフォン。iPhoneとの相性の良いBeatsを愛用しています。いつも自習の時に使っているので、1年くらいで壊してしまいま、もう何代目かわからないくらいです。音楽は幅広く聴くほうで、クラシックのほかJ-POPも。とくに椎名林檎は好きですね。(安村圭太)