
いま、バレエ団のスタジオでは、2月の『白鳥の湖』公演に向けてのリハーサルが進行中です。今回は、ドキドキ、ワクワクしながらコール・ド・バレエのリハーサルにのぞんでいる、入団4年目の前川琴音、松永千里の登場です。
──お二人とも入団は2018年ですね。
前川琴音 はい。2018年なのですが、二人とも留学していたので......。
松永千里 実際には、向こうの学校が終わった夏に入団、同期の皆から少し遅れる形でした。
──留学はどちらに?
前川 私はオランダ、ハーグの音楽院です。NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)の拠点が近かったので、NDTの方も指導に来てくださっていて、コンテンポラリーのクラスが多いのが特徴でした。
松永 私はシュツットガルトのジョン・クランコ・バレエ学校に留学していました。クランコのバレエをいろいろと観る機会がありましたが、どの舞台も本当に素敵でした。
──東京バレエ団での初舞台は?
前川 その年の9月の〈プティパ・ガラ〉です。『ジョコンダ』に出演したのと──。
──『ラ・バヤデール』"影の王国"のコール・ド・バレエですね。
前川 そうなんです。『ラ・バヤデール』は入団前に舞台を観ていたのですが、"影の王国"の印象がすごく強く、本当にキレイだなと思っていました。そこに入って踊るとはその時まだ思っていなかったので、最初はとても緊張しました。
──二人とも『白鳥の湖』は2019年に経験していますね。
松永 入団前に舞台を観るチャンスがなかったのですが、地元のスタジオの先生から、東京バレエ団のコール・ドはとても美しいと聞いていました。
前川 いくつかの作品でコール・ドを経験したとしても、『白鳥の湖』はまた別です。「もっとちゃんとしなきゃ」って思います。
前川琴音 photo: JPD
松永 コール・ドのリハーサルに入る前は、毎回ドキドキしてしまう(笑)。指導はおもに志織先生(バレエ・ミストレスの佐野志織)ですが、いつも、「コール・ドの一人だとしても、真ん中で踊っているオデットと同じ意識で」と注意されます。先生がおっしゃっていることは正しいし、理解しているし、そうしたいと思っていますが、いざ入ってみるとなかなか──。
前川 そのように取り組んではいきたいけれど、まずは踊ることだけで必死です。
──『白鳥』ならではの高度なコール・ドの技がたくさんありそうですね。
前川 たとえば......動きながら列に入る!
松永 難しいです。とくに、第2幕のコール・ドが登場する最初のところ、よく"ステテコ"って呼ばれていますが、皆がジグザグになって出てきますよね。それが終わると4列に並ぶのですが、その列に入る時に、身体の角度をはじめ難しいことがたくさんあるんです。もちろん、つくべき場所も細かく決まっていますし、顔の角度も足も腕も。
『白鳥の湖』第2幕より。
photo: Shoko Matsuhashi
前川 いろんなところの角度が問題になるんです。
松永 そう、腰は90度くらい。
──そんなに曲げているんですか!?
松永 衣裳をつけるとどうしても動きが小さく見えてしまうので......。
前川 やり過ぎと思うくらいにやってちょうどいいんです。
──定位置についたらひと安心ですね。
前川 いえ、とんでもない(笑)! 定位置についても結局いろいろ動きます。もっとも大きく動くのが、アラベスクでトントントン──。
松永 そこが結構大変なんです!
前川 アダージオの場面のコール・ドは、最初は静止したままだけれど、途中で一斉に動き出すわけです。トントントン、は音通りに合わせればよいのですが、「一歩目を出すところがココ」「その次はココ」というように足を出す場所が厳密に決められています。
松永 床の線とか、線と線の間とか、つま先で揃えるとか踵で揃えるとか、合わせるポイントもいっぱいあるんです。
──それらはすぐに全部覚えられるものですか?
前川 いや(笑)。最初の頃はメモして覚えました。すべて先輩からの口伝えで、前回の公演の映像を見て確認して、というのが基本です。
松永 本番ギリギリまで確認、ですね。
──静止したままというのも大変です。
松永 真ん中で踊っている人を見たいのですが、ポーズによっては全然見えないことも。
前川 確かに、ずっと下を向いている場合は見えません。
松永 振りを覚えるために、東京バレエ団の以前のヴァージョンの第2幕の映像を見たことがあるのですが、列のまま移動する時も、前の人と後ろの人の位置が全然ずれていなくて、すごいなって思いました。
前川 コール・ド全員で呼吸を揃えて踊っているのを見たら、それは本当にすごいなって思うはずです。
──二人は第3幕も経験していますよね。
前川 はい、私はナポリのコール・ドを踊っています。すごく勢いのある、速い踊りです。
松永 私はチャルダッシュでした。チャルダッシュは男性と一緒に踊るのでそれほどでもないのですが、ナポリは本当に速い!
前川 ついていくのが大変です(笑)。でもすごく楽しいです。オランダの学校ではキャラクターはもっと低学年の生徒たちが学ぶので、私はほとんど踊ったことがなかったんです。だから最初は先輩たちの見様見真似。でも、すごく楽しい。
松永 チャルダッシュでは両足のつま先をまっすぐ揃えることができなくて、難しいなと思いました。必死でついていきましたが、リハーサルでは私たちだけ先生に注意され続けて、ということも! 無事踊ることができてよかったです。
松永千里 photo: JPD
──リハーサル、頑張ってください! ではここで、二人に2022年の抱負をお願いします。
松永 まずは怪我をしないことと、何事も自分のペースで頑張ることです。それから、昨年うまくいかなかったことを、少しでも改善して、パワーアップできればいいなと思っています。新しい作品も楽しみですし、いろんな作品を踊って学んでいきたいです。
前川 私も怪我で出られなかった舞台がいくつもありました。『くるみ割り人形』でようやく復帰できたので、これからもたくさん踊れるよう頑張りたいです。オランダでは現代の振付家の作品──キリアンの作品なども学びましたが、ベジャール作品はまだまだ難しいという印象があります。〈ベジャール・ガラ〉も予定されていますが、これからいろいろと挑戦したいです。
──松永さんがシュツットガルトでよく見ていたというクランコ版『ロミオとジュリエット』の上演もありますね。
松永 とても楽しみです。私が好きな場面は、ロミオとジュリエットが別れを惜しみながら踊るパ・ド・ドゥのシーンです。難易度の高い複雑なリフトを何度も繰り返しているにもかかわらず、自然に淡々とこなしていて、観ていて飽きません。東京バレエ団での上演が、本当に楽しみです。
ビーズで作ったチュチュの飾りです。実家の近くにあった手芸品のお店でもらった作り方をもとに、ビーズの色をアレンジ。細かい手仕事は大好きで、時間があるとちまちまとした作業をしています(笑)。実家にはミシンがあるので、ポーチなどを作ることもあります。(前川琴音)
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ケーキやクッキーを作るのが好きです。ドイツに留学していた頃、オーガニックにはまり、時間がある時に自分で作るように。写真はキャロット・ケーキ。ニンジンをフードプロセッサーにかけて、小麦粉、卵を混ぜて焼くだけ、と簡単なんです。(松永千里)