
昨年9月にアーティストとして入団した加古貴也。既に『中国の不思議な役人』、『くるみ割り人形』、『白鳥の湖』など、様々な作品に出演していますが、このたびファースト・アーティストに昇進! これからが楽しみなホープの登場です。
photo: JPD
──まずは自己紹介からお願いします。
加古貴也 はい、愛知県大府市出身の加古です。大府市というのは名古屋市の隣ですね。バレエを始めたのは6歳の時、母に連れていかれて、でした。自分から「やりたい」と言ったような記憶もあるのですが、ふざけ半分のところもあったかもしれません。
──最初から楽しんで取り組むことができましたか。
加古 いや、女の子ばっかりで誰とも話さず、レッスン退屈だなーっと思っていて(笑)、でも、ある時からなんだか凄く楽しくなったんです。
──一体何が?
加古 11歳の時に、母が世界バレエフェスティバルに連れて行ってくれたんです。そこに出ていらしたダニール・シムキンさんがとてもカッコ良くて、「凄い!」と思ったんですよね。それからYouTubeでいろんなダンサーを見るようになって、バレエって素敵だなと思うようになりました。
──そこからプロになることを意識するように?
加古 名古屋にはバレエの教室がたくさんありまして、公演も凄く盛んなんです。僕も中高生になるといろんなスタジオに呼んでいただき、踊らせてもらうようになりました。このままやっていくうちに、プロというか、バレエで生きていくようになっていくのかな、と思うようになりました。
当初は女性と組んで踊るといっても、まだ簡単なことばかりでしたが、徐々にいろんなことを教えていただき、そのうち、プロになるんだったら、留学してちゃんと学ばなければと考えるようになったんです。
東京バレエ団OBの後藤晴雄さんとの出会いも大きかったです。高校生の時に、晴雄先生の教室の発表会に参加させてもらって、そのバレエに向き合う姿勢とか、与えてもらう注意の質に衝撃を受けました。いつも、与えてもらった注意事項はすべてノートに書いていたのですが、それまでのレッスンの記録は数行程度だったのですが、晴雄先生からの注意は1ページが完全に埋まるほど! それについていけなければダメだなと思いました。それで僕自身、少し進歩したんでしょうね。その後、高校3年生の夏に参加したコンクールでスカラシップをいただいて、翌年からカナダのロイヤル・ウィニペグ・バレエスクールに留学させてもらいました。
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──留学生活は充実していましたか。
加古 朝早くからクラスがあって、それからパ・ド・ドゥやヴァリエーションのクラス、コンテンポラリーのクラスなど、様々に学びました。もちろん学科の授業もあるのですが、僕のように既に高校を卒業している生徒は、その時間にバレエ団の公演のリハーサルに参加させてもらっていました。
いくつかの公演に出演もしています。たとえば、『ロミオとジュリエット』。オランダ国立バレエ団のルディ・ファン・ダンツィヒのヴァージョンでしたが、演技にも取り組むことができて、すごく楽しかったです。マウリシオ・ウェインロット振付の『カルミナ・ブラーナ』も興味深かったです。
──卒業後、プロとしての活動を始めたわけですね。
加古 そのままカナダで活動を続ける道もありましたが、実は、このままプロを目指していいものかどうか悩むようになって、帰国してしまったんです。悩みやすい時期、だったんですよね。バレエ以外の道も探り、資格を取ったりもしました。
──資格!?
加古 宅地建物取引士です。勉強はわりと苦にならなくて、一発で合格できました! でもそのうち、友人からの言葉だったり、お世話になった先生に背中を押されたりということがあり、もう一度バレエをちゃんとやりたいという思いが湧き上がってきたんです。それで地元でレッスンを再開してみたら、これが本当に凄く楽しくて!! そこまでバレエを楽しいと思ったのは初めてのことだったかもしれません。できないことがある、課題がいっぱいあるということが楽しく、それは、「できる楽しさ」よりずっと大きいことに気づきました。
──それで東京バレエ団へ!
加古 プライベートでオーディションを受けさせてもらい9月に入団させてもらったので、11月の『中国の不思議な役人』が初舞台でした。
──初舞台で初ベジャール。
加古 こんな振付あるんだろうか!っというほどの体験でした。『中国』は、東京バレエ団が全国公演で名古屋に来た時に観ていますが、あの薄暗い、雑多で陰鬱な世界観に入り込むことができたと思うと、感動しました。ベジャール作品はとても興味深いです。昨年の〈HOPE JAPAN〉公演では『ギリシャの踊り』を観ましたが、あの独特の美しさ──人間そのものの美しさに、強く惹きつけられました。踊ってみたいです!
──3月は金森穣さんの『かぐや姫』のクリエーションにも参加されていましたね。
加古 僕は外から見ていることのほうが多かったのですが、凄い方だなと思いました。伝え方とか、言葉の選び方が凄いんです。とくに最終日、皆の前で言われていたことが印象的で、「指示を待つな」と。僕もよく指示を待ってしまうところがあるので、その通りだなと感じていますし、アーティスト、芸術家として素晴らしいし、カッコいいんですよね。僕もこれからは指示を待たずに、行きます!
──先日の〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉では、フリーデマン・フォーゲル主演の『ボレロ』にも参加していますね。
加古 実はその前にも、モーリス・ベジャール・バレエ団日本公演での『ボレロ』にエキストラで参加しているんです! この時は、リハーサルをする時間がほとんどなく、かなり緊張してしまったのですが──。
──今回はいかがでしたか。
加古 実は、フリーデマンさんは僕の大好きなダンサーで、ずっと彼のカレンダーを部屋に飾っていたんです。尊敬するダンサーが目の前で、しかも『ボレロ』を踊っている......! 僕は上手側にいたので、振りによっては彼がすぐ近くにくることもあって、ゲネプロの時から早くも感動がこみあげてきて涙が......(笑)。本当にかけがえのない経験となりました。
──これからのご活躍に期待しています!
加古 もっともっと自分を磨いていきたいと思います。毎日のクラスもリハーサルも、いまはいろんな人に引っ張ってもらっている状態ですが、自分の持ち味をもっと出していけるようになれたらと考えています。まずは、先日リハーサルがスタートした『ロミオとジュリエット』。とても楽しみにしています!
2022年3月19日〜21日〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉最終日のカーテンコールより。 photo: Kiyonoroi Hasegawa
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昔から手を動かすことが好きで、よく料理を作っていました。特にお菓子作りが好きで、実家にいた頃はよく作って家族で食べていました! 写真左上は僕が作ったプリン、右はバスクチーズケーキです。東京に来てからは調理器具が揃っていないのであまり作る機会がないのですが、そろそろ、ちょっといいオーブンが欲しいです。(加古)