
子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』全国ツアーも無事終了。今回は、この『子ドン・キ』全国ツアーや学校公演、また全幕版『ドン・キホーテ』でキューピッド役を務めている安西くるみの登場です。
──ツアーお疲れさまでした! 前回のブログ登場時は、初役で挑戦した『ドン・キホーテの夢』キトリの友人の話題が中心でしたが、その後キューピッド役も踊っていますね。今回のツアーでも大活躍でした!
安西くるみ キューピッドは、昨年の『ドン・キホーテの夢』で初めて踊らせてもらいました。
当初、4月の〈上野の森バレエホリデイ〉で上演する予定だったのが、緊急事態宣言が出たことで6月に延期された公演です。急遽の代役であわてて準備を始めたのですが、公演が延期なったことで、練習期間は少し長めに取ることができました。
が──。キューピッドのヴァリエーションは10代の時に経験していたものの、振りはまた少し違うし、プロの舞台で踊るとなると高度なテクニックも表現力も求められます。それに、東京バレエ団の『ドン・キホーテ』はとにかく速い。初めて取り組むにあたって、どうやったらあの速さで正しく踊ることができるのかなと、動画でいろんな人のキューピッドを見てみたのですが──。
──東京バレエ団の『ドン・キホーテ』の速さは群を抜いていますよね。
安西 そうなんです......。ましてや、普段のレッスンでは、とにかくゆっくり正しく、という方向性でやっているので、あのスピードに慣れるのは大変なことでした。
2022年6月『ドン・キホーテ』第1幕の夢の場より。
photo: Shoko Matsuhashi
──初キューピッドは東京文化会館の大ホール。緊張しましたか。
安西 初役はやはり緊張します。とくに、夢の場の幕開きは緊張するんです。紗幕スレスレのところで準備していて、紗幕が上がった瞬間に照明がわーっとあたる。皆の視線が自分に集中しているのを感じて、一気に緊張感が高まります。練習を重ねて、夢の場のヴァリエーションはなんとかついていけそうだなと思えるようになっても、あのキャラクターをどう見せるか、という表現の部分も難しかったですね。
──小さいキューピッドたちをリードしていく場面も。
安西 最近は、リハーサル期間中にどんどん子役ダンサーたちの身長が伸びてきて、「あれ、抜かされる?」って思うことも(笑)。キューピッドはドン・キホーテを夢の世界へと導く存在なので、愛らしさや無邪気さもありつつ、母性というか、慈愛に満ちた表現が必要だと思うんです。ずっと笑顔でドン・キホーテを見守っているけれど、その笑顔も人間らしい笑顔とは少し違って、でも決して不自然ではなくて──。そう考えると、笑顔、難しいんです。
──マスク生活で笑顔になる機会が減りますよね。
安西 気づいたらキューピッドなのに真顔になりそうなこと、ありました(笑)。笑顔じゃないキューピッドなんて、怖いですよね。
技術面でも、膝からの下の動きがとても細かくて、しかも音楽が速い。それにさらに上体をつけるのが難しいんです。どうしても脚の動きに注目しがちな役ではありますが、実は上体の表現が難しい役柄だなと感じています。
──今回のツアーの前には、横浜の学校公演、東京文化会館での全幕版『ドン・キホーテ』でもキューピッドを経験しています。
安西 全幕版では『子ドン・キ』にはない、結婚式の場面のヴァリエーションにも初めて取り組みました。このヴァリエーションを経験しているのは現役では(足立)真里亜ちゃんだけなので、彼女にいろいろと教えてもらいながら。長い踊りですから、最初から最後まで力を入れたままでは踊り切ることができない。そこを、どう緩急をつけて踊るべきか、すごく丁寧に教えてくれて、ありがたかったです。
夢の場のヴァリエーションは何回か舞台で踊ったので大分身体に入ったように思うのですが、結婚式のほうは身体に染み込む前に終わってしまったところもあります。またあらためて挑戦できたら嬉しいですね。
2022年6月『ドン・キホーテ』第2幕、結婚式の場。小さいキューピッドたちとともに。
photo: Shoko Matsuhashi
──キトリの友人役もその後、舞台での経験を重ねていますね。
安西 学校公演とツアーで経験しています。実は当初、私ってなんてセンスがないんだろうと悩みました。『ドン・キホーテ』独特のキャラクターの踊りの、こう、上体をぐっとしぼる感じとか、下から煽っていくような感じがどうしてもうまくいかなかったんです。そんな時、今年のツアーで一緒に踊ったのが(金子)仁美さん。すごくよく研究されていて、いろいろ聞かせてもらいました。それでなんとなく掴めたこともあるので、引き続き、リベンジの機会があればと思っています。
──『ドン・キホーテ』以外でも、いろんな役柄に挑戦しましたね。
安西 昨年9月の『海賊』では、ビルバントの恋人のアメイ役を踊らせてもらいました。姉御肌の強めの女性で、私のキャラとは少し違うイメージ。なのに、ビルバントの(井福)俊太郎さんがビシッとキメてくるので、つい負けてしまいそうになって(笑)。でも、そこを演技するのはとても楽しかったです。演技についてはまだよくわからないことが多いけれど、クラシックの役でも表現ってとても大事。これからはもっともっと演技に力を入れていきたいですね。
写真左:アメイ役を踊った2021年9月『海賊』。ビルバント役の井福俊太郎と。
photo: Kiyonori Hasegawa
写真右:4月のクランコ版『ロミオとジュリエット』より、カーニバルのダンサー。左より涌田美紀、岡崎隼也、中嶋智哉、井福俊太郎、安西くるみ。
photo: Shoko Matsuhashi
──今年4月のクランコ版『ロミオとジュリエット』ではカーニバルのダンサーを踊りました。
安西 嬉しかったですね! 普段やらないような側転にも挑戦して。そんな時も、自然とつま先を伸ばしてしまっている自分がいて、なんだかおかしかったです(笑)。
この時は、(涌田)美紀ちゃんと同じ組で踊っています。彼女も私も小柄なので、日替わりで同じ役を踊る機会もあり、普段から仲良くしているのですが、6月の『ドン・キホーテ』では彼女がキトリ役で全幕主役デビューして、本当に感動しました! たくさん刺激をもらいました。1幕の広場の場面では、同じ空間で感動しながら演技していたんです。皆で応援しながら作っている感じがとてもよかったですね。
私も、技術面も演技も、観てくださっている皆さんの印象に残るダンサーになりたいなと思っています。身内だけでなく、多くの方に「安西くるみといえば、この役を踊っているダンサー」と思っていただけるようになれたら──。そうなれるよう、これからも日々頑張ります!
公演が立て込むと、運動量が半端なく多くなり、筋肉量が減ってしまいがちに。もっとタンパク質を摂るべきだときいて、最近、プロテインを飲むようにしています。プロテインを飲むとガチガチの筋肉質になってしまうと勘違いしていた私(笑)。でも、怪我をしないためにも必要だなと思って続けています。(安西くるみ)