
今回登場の後藤健太朗は、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』の案内役、サンチョ・パンサで活躍中! 役作りの苦労や忘れられない恩師のアドバイスなど、いろいろたっぷり語ります。
──子どものためのバレエ 『ドン・キホーテの夢』で案内役ともいえるサンチョ・パンサを演じていますね。
後藤健太朗 サンチョ・パンサ役は昨年秋、横浜市の学校公演で初めて演じました。先輩たちの演技を見てきて、ずっとやりたいと思っていた役なんです。目立つのは嫌いではないし(笑)、舞台でしゃべることにもそんなに抵抗はなかったです。
──台詞の量、少なくないと思うのですが、よく覚えられましたね。
後藤 覚えるのはそれほど大変ではなかったんです。が、間の取り方だったり、表現、抑揚の付け方だったりが難しく、なかなかうまくできませんでした。そこは昔、演劇をやってらした立川好治さん(舞台技術)に指導していただきました。
──立川さんは『ドン・キホーテの夢』の脚本を手がけられています。具体的にどんなことを教わったのですか。
後藤 舞台でしゃべるときは言葉をしっかりと伝えることが大切だから、言葉の頭、言葉の最後をはっきりとさせるように、と教えていただきました。たとえば「スペインのラ・マンチャ」と言うなら、最後の「チャ」までしっかり発音しないと伝わらない。抑揚もしっかりつけなければ、ただ文章を棒読みしているように聞こえてしまう。その台詞で一番アピールしたい言葉を自分でちゃんとチョイスして、考えながらやるように──と。何度も繰り返し練習させてくださって、勉強になりました。
子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』より、
お客さまに語りかけるサンチョ。
photo: Shoko Matsuhashi
──横浜市の学校公演のお客さまは小学生でした!
後藤 冒頭で客席に向かって問いかけるシーンがあるのですが、「わかる人、手を上げて」と話しかけると手を上げてくれるのに、いざ、目があって指名するとスッと手を引っ込められてしまったことも(笑)。きっと恥ずかしくなっちゃうんですよね。
──中盤にはご当地ネタを披露して会場を沸かす場面も!
後藤 ツアーだと、会場ごとにネタが変わるんですよね。実はあのネタの内容は、毎回公演当日に渡されるんです。今回の『ドン・キホーテの夢』のツアーでは、僕は東広島と西宮公演でサンチョ役を演じさせてもらいましたが、ご当地ネタは広島カープと甲子園──。両方とも野球がらみですね(笑)。
──学校公演、全国ツアーと舞台を重ねて、サンチョの手応えは?
後藤 サンチョの演技といえば、なんといっても、5月に亡くなった飯田宗孝先生なんです。配役されてからずっと飯田先生に指導してもらっていました。学校公演でのサンチョ役デビューのときは、もうすでに体調はかなり悪かったはずなのですが、わざわざ関内の会場まで来て観てくださったんです。
──ダメ出しをしてくださった?
後藤 そうですね。演技はもっとわかりやすく、と。愛らしく、ちょっと可笑しいキャラクターだけに、独特の身振り手振りがある。それが小さくなってしまうと全然伝わらないんです。それは最初の段階からずっと言われていたことなので、意識して取り組んではいたのだけれど、喜怒哀楽をもっとデフォルメして表現する必要があると改めて教えてくださいました。
とはいってもデビューのときのことは実はあまり記憶がなくて(笑)。台詞があるとどうしても緊張してしまいます。先日も、忘れるはずのない台詞が一瞬出てこなくて、頭の中が真っ白になったことが......。なんとかリカバリーできましたが、焦りましたね。
──サンチョといえば、第1幕の広場での"胴上げ"も、大きな見せ場となります。
後藤 結構高くまで上がるんです。僕はサンチョにしては身長高め、少し重めだということもありますが、実は、タイミングを合わせて、上半身の力を使って自分でも跳んでいるんです。上に放り出されている時に何をするのかは自由ですが、僕は3回やったら3回とも、上がった場所で同じことしていたんです。特にこうしようと決めていたわけではないのですが、記録映像を見て笑ってしまいました(笑)。
子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』より、サンチョの胴上げ!
photo: Shoko Matsuhashi
──これからも深めていきたい役柄の一つになりましたね。
後藤 どうしても飯田先生の話になってしまいますが、飯田先生だったらどう言うのかな、どうダメ出しされるかなと考えてしまいます。
僕は東京バレエ学校で学んでいたので、バレエ学校時代からずっと飯田先生に指導していただいてきて、サンチョに限らず、飯田先生が演じられた役を自分もやりたいと思っていました。たとえば、昨年初めて踊った子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』の長靴を履いた猫。飯田先生が演じられたのは全幕版のほうの猫ですが、先生に言われたことは忘れられないことばかりです。今もずっと先生に見られていて、「ちゃんとやってね」って言われているように思うんです。
2021年上演の子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』より、
長靴を履いた猫。白い猫は工桃子。
photo: Kiyonori Hasegawa
──いろんな役柄に挑戦するようになっていますが、昨年夏の〈HOPE JAPN 2021〉ではベジャールの『舞楽』を踊りました。
後藤 サンチョとか猫とかとは全然違って、静謐でおごそか──全く初めての世界観で、すごく刺激的でした。無駄な飾り気のない、極めてシンプルな作品です。幕が上がると僕ら5人しかいないという状況ですし、緊張と同時にワクワクもしました。
〈HOPE JAPAN 2021〉よりベジャール振付『舞楽』。左奥が後藤
photo: Kiyonori Hasegawa
後藤 こうした作品も踊らせてもらうようになったからこそ、もう一つ、変わっていかなければいけない時期だなと感じています。説得力ある演技ができるかどうか、ということが大事なんですよね。役についたから踊るのではなくて、しっかりと役を自分のものにして、風格、存在感を出せるようになりたい。飯田先生のことは絶対に忘れないし、忘れられません。言葉にするとどうしても軽くなってしまいがちですが、飯田先生に恥じぬよう、「何やってんだ」って言われないよう、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。
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よくテレビでプロ野球見ています。神奈川・藤沢が地元なので、ご贔屓のチームは横浜DeNAベイスターズ。そして実は、少年野球をやっていました! これは試合のときの写真。守っていたのはセカンド、ピッチャーもやっていました。(後藤健太朗)