
10月の『ラ・バヤデール』で、ガムザッティの召使い・アヤ役に挑戦した菊池彩美と居川愛梨の登場です。ラジャとハイ・ブラーミンの密談や、ソロルをめぐる二人の女性の諍いに居合わせるアヤを演じて思ったこと、また12月の『くるみ割り人形』についてなど、楽しく語ります!
──菊池さんは2021年2月以来2回目の登場ですね。
菊池彩美 そうでしたね! よろしくお願いします。今日は居川愛梨ちゃんと一緒です。
居川愛梨 初めまして。よろしくお願いいたします。今年4年目で、昨年アーティストに昇進しました。出身は岡山県ですが、父の仕事の関係で、小学校4年生からは東京でした。
──バレエを始めたのは?
居川 4歳です。小さい頃からずっとプロになりたいと思っていました。でも岡山ではプロのバレエ団による公演はほとんどなくて、ひたすらバレエのDVDを見て憧れていたんです。東京バレエ団の映像も見ていました!
──東京バレエ団での生活はいかがですか。
居川 課題や目標が常にあるので、それに向かって自分を高めていける。充実しているなと感じます。
──10月の『ラ・バヤデール』で演じたアヤ役、大活躍でしたね!
居川 『ラ・バヤデール』自体私は初めてですし、アヤはとても緊張しました......。
菊池 私も、これまでに2017年のシュツットガルト公演と東京公演、2018年のオマーン公演を経験していますが、アヤは初めてでした。
アヤを演じる菊池彩美 photo: Koujiro Yoshikawa
──腰を曲げ、小さくなって歩く姿が印象的です。
菊池 召使いという身分の低い女性で、年齢も重ねているからなんですね。実は今回、初めて本格的な"老けメイク"をしてもらいました。自分を押し出して演技をするという役柄ではないのですが、重要な人物を連れてきたり、彼らの様子をうかがっていたりする人物です。
居川 ナイフを持ってガムザッティに向かってくるニキヤを止めなければいけないという、責任重大な役割もあります。
──止め損ねたら大変。
菊池 ですね。物語が変わってしまう(笑)。
居川 こうした演技は、リハーサルの時には、自分の中でいろいろと考えていくのですが、実際やってみると相手の方のタイミングが思っていたのと違うことも。あらかじめがっちりと動きを固めてしまうと本番で通用しなくなることもあるので、相手の反応にこちらも反応して、ということを意識してやっていました。
こちらは居川愛梨のアヤ photo: Kojiro Yoshikawa
──菊池さんは演技がメインの役柄は今回が初めてではなかったそうですね。
菊池 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』の王妃を経験しています。これはまたアヤとは方向性が全然違いますね。王妃にはその時々の彼女の気持ちがあるはずなので、常に王妃として舞台に溶け込めるようにと考えて取り組んでいました。王妃に限らず演技の要素が強い役のときは、とにかく顔、表情から出していかないと伝わらないように思います。王妃はあまり派手に笑ったりはせず、最大でも微笑む程度。なので、その範囲内でどういう表情をしていくのか、ということを考えていました。
──お二人ともアヤ以外の役でも大活躍でした。
菊池 ジャンペ(侍女の踊り)のコール・ドと、「影の王国」のコール・ド、それからキャンドルも踊っています。ちょっと、忙しいですね(笑)。
居川 あのコール・ドの中に入るのかと思うと、本当に身の引き締まる思いでした。
──そしていまは『くるみ割り人形』のリハーサルが進行中。こちらも、女性陣は大活躍ですね。
居川 私は、第1幕ではパーティーの女性客、その後、騎兵、雪の精、第2幕ではアラビアのコール・ドと花のワルツです。
菊池彩美
菊池 私もほぼ同じですが、昨年から第1幕の"ユニークなおばさん"(シューベルト氏の妻)にも配役されています。この役、舞台を重ねてきたら、より楽しくなってきましたね(笑)。子どもたちにすごく好かれている、楽しくてユニークなおばさんですが、こうしたキャラクターは初めてでしたから、とにかく思い切りやろう!と。
──シュタールバウム家のパーティーにはご夫婦で参加、ですね。
菊池 前回は日替わりで岡崎隼也さん、山田眞央さんと夫婦役でした。パートナーによって演技は変わってきますが、結局は「私は私で楽しんじゃう!」という感じでつくっていました。アヤと同様、少しだけ老けメイクもしているのですが、実は意外と若くて47歳という設定。夫は65歳ですから、年の差婚だったようですね(笑)。
『くるみ割り人形』第1幕、シュタールバウム家のパーティーより。
右が菊池彩美の"ユニークなおばさん"。左の"ユニークなおじいさん"は山田眞央。
photo: Kiyonori Hasegawa
──東京バレエ団ならでは美しいコール・ド・バレエが注目されます。
居川 花のワルツは本当に緊張します。最後の最後、グラン・パ・ド・ドゥに入る前の、いちばんの盛り上がりですから。先生には「ピンクの雰囲気で」と言われているんです。直前のディヴェルティスマンの場面は、クリスマスツリーのいろいろなオーナメントが飾られた独特の美術が印象的かと思いますが、東京バレエ団の舞台は、花のワルツでさらに背景が変わって、ふわふわの可愛らしいピンクの世界になります。この場面でのコール・ドは、いつもどおり隊形に気を配るのはもちろんですが、より上半身を柔らかくして、あの独特の雰囲気をつくるようにと言われています。
──上体。大事なんですね。
菊池 大事なんです。あの空間で、あのキレイな衣裳を着て舞台に出て、普通にポーズして立ってしまうと、遠くからではすごく硬く見えて、ただ突っ立っているように見えてしまいますが、上体をしっかり使うことで、より柔らかな雰囲気を出すことができます。実は、平衡感覚を失いそうになるくらい、ちょっとクラクラっとするくらいに(笑)大きく、大きく上体を使うことが求められているんです。
居川 彩美さんの上体の使いかた、とても美しいんです
『くるみ割り人形』第2幕より、花のワルツ
photo: Kiyonori Hasegawa
──東京公演のあとは全国ツアーにも出かけますね。居川さんはツアー生活には慣れましたか。
居川 徐々に慣れてきました! 大変なこともあります。バスや電車で長時間移動したあと、すぐにレッスン、リハーサル、ということが続くと、脚に負担がかかります──。夏の〈HOPE JAPAN〉ツアーでは、移動してその日に本番、ということもあったのですが、その場合は時間配分をよく考えて、できるだけ手早くメイクを済ませて、脚のケアをする時間をしっかりとるようにしました。
菊池 逆に、本番が終わってすぐに移動、というケースもあります。その場合は片付けもあるし、自分の身支度もあるし、となると、なかなか休まる暇がなく、本番のテンションのまま移動、ということに(笑)。
居川 でも、どの都市でもすごく温かい雰囲気で迎えてくださるので、嬉しいです。今年も頑張りますので、ぜひ、多くの皆さまに劇場に来ていただきたいと思います。
菊池 そうですね。楽しみにしていただけたら嬉しいです!
居川愛梨
ツアーでは、しっかり身体のケアをすることが本当に大事。本番が終わってすぐ移動して、移動先のホテルで疲れてついついそのまま寝てしまって──なんてことになってしまうと、次の日に響いてしまいます。写真は普段から活用しているグッズの一部です。右側のマッサージガンはスグレモノです。(菊池彩美)
治療院の先生に「とりあえずこれだけはやっとけ!」と、ボールを使ったケアを教えていただいたので、ツアー中は夜遅くなっても、疲れていても、それだけはやるように。なので、ボール状のグッズは必携。右真ん中の黄緑色の物体は「やわこ」。コンパクトなのでバレエ団でもツアー中も常に持ち歩いています。マッサージオイルはドイツ製のO2クラフトを愛用、入浴剤もツアーに持っていきます。できるだけ疲れを残さず、不安材料を作らないよう工夫しながら頑張っています!(居川愛梨)