
東京バレエ団のスタジオでは、『くるみ割り人形』のリハーサルが進行中、今回のブログはマーシャ役を演じるプリンシパル・秋山瑛の登場です。まずは、10月に初挑戦した『ラ・バヤデール』ニキヤ役の話題から──。
── 少し時間が経ってしまいましたが、ニキヤ役に初挑戦されましたね。
秋山 瑛 ありがたいことに、です。今回はフリオ(・ボッカ)さんに毎日リハを見ていただいたので、毎日、注意されたことを翌日のリハでできるように、ということに集中させてもらうことができました。密度の濃いリハーサルが続き、1個の踊りの中に、フリオさんのこだわりとか、マカロワさんから伝わっているチェックポイントがいろいろあって、それを一つずつ丁寧に学んでいった感があります。
『ラ・バヤデール』第1幕より photo: Koujiro Yoshikawa
──第2幕の「影の王国」は、コール・ド・バレエの美しさもあいまって、大きな拍手が!
秋山 難しい場面ではありますが、その前に第1幕でガムザッティと対立し、「花かごの踊り」を踊ってからの「影」。心は既にすっとしていて、独特の緊張感を味わいながら、皆がアラベスクでスロープを降りてくるのを袖から見ていました。最終日には客席から観ていたのですが、本当に群舞がきれいで涙が出てしまいました。コール・ドに取り組むとき、皆で「心一つ」って言っているのですが、本当に心が一つになっているように感じます。袖から見ていても皆の集中している様子が感じられて、待っている私にすごくいい影響を与えてくれたと思うんです。
『ラ・バヤデール』第2幕「影の王国」より。ソロル役の秋元康臣と
photo: Koujiro Yoshikawa
──ニキヤは大切な役になりましたね。
秋山 とても大事な経験になったと思います。ニキヤという人物について、「この人のことよくわらからないな」という感じにはならなかったし、理解できる。ニキヤのこともガムザッティのこともわかりますよね。でも、『白鳥の湖』も『ジゼル』も、皆どこかに共感できるところがあるからこそ、擦り合わせていくことができるのではないかと思うんです。
──そして今度は『くるみ割り人形』のマーシャ!
秋山 すごいギャップですよね。今度は7歳(笑)。この『くるみ割り人形』は今回で......。あれ、何回目でしたっけ。
──新制作で取り組んだのが2019年でしたから......、4回目です。
秋山 こうして毎年繰り返して上演している作品は子ドン・キ(子どものためのバレエ『ドン・キホーテ』)と『くるみ割り人形』くらいかと思いますが、いずれも皆、演じる役柄が確実に身体に染み込んでいるはず。新たな役に挑戦する人もいるけれど、毎年、この作品のことを、自分が演じるキャラクターのことを考えてきて、今回は4回目だけに、最初に上演したときよりずっと、皆それぞれのキャラクターに入っていきやすくなっていると思います。
『くるみ割り人形』第1幕より。宮川新大と
photo: Kiyonori Hasegawa
──そんな中で今回の秋山さんのマーシャは......?
秋山 毎回、同じにならないようにとは気をつけたく思っています。物語の展開はもうわかっているわけじゃないですか。初めてご覧になる方もたくさんいらっしゃると思いますが、クラブ・アッサンブレの皆さんは何度も同じ作品を観てくださっている方も多いので、毎回新鮮な気持ちでそのキャラクターを生きようと心がけています。
昨年の『くるみ割り人形』公演では、東京では土曜日の昼公演、その後、横須賀で夜の上演でマーシャを演じたのですが、両公演観てくださった方が「昼と夜では受け取る印象が違う」とおっしゃっていたんです。私たちはお客さまがどんな気持ちで劇場にいらっしゃるか、すべては把握できないけれど、お仕事終わりかもしれないし、お家からお洒落をして劇場に向かうのかもしれないし、もしかしたら気持ちが沈んでいるときかもしれない。いろんな方が観てくださると思いますが、ちょっと夢のある幸せな時間だったなという気持ちになっていただけるような、そんな舞台ができたらいいなと思っています。
『くるみ割り人形』第2幕より。宮川新大と
photo: Kiyonori Hasegawa
──ツアーでの楽しみは?
秋山 コロナの影響で、ツアー中はご当地グルメのお店に食べに行くことができなくなりましたが、たとえば、北海道ならセイコーマートでそこでしか買えないものを探すとか、関西だったら十三の名物の喜八洲総本舗の四角いみたらし団子を食べるのが楽しみだとか、いろいろあります。長野、岡谷でのおすすめの美味しいものも知りたいですね!
──体調管理が大変ですね。
秋山 無理はしない、休みはちゃんと取る、くらいでしょうか。出来合いのものではなく自分で調理するものを食べるのが大事──って、(生方)隆之介くんが言っていました(笑)。先日まで子ドン・キの学校公演で組んで踊っていたので、いろいろと教えてくれるんです。
口にするものは無添加のものがいいのかな、とも思います。小さい頃は母がすごく気を遣ってくれて、スナック菓子もジュースもほとんど家になかったのですが、今思うと、この健康な身体は母が作ってくれた身体。本当に感謝ですね。ツアーもきっと元気に取り組むことができそうです。ぜひ多くの方々に劇場に足を運んでいただきたいですね。
いただいたものなのですが、バレエの主人公のイラストが描かれた紅茶のセットがお気に入りです。描かれているのは『白鳥の湖』に『ジゼル』、『コッペリア』、『ドン・キホーテ』、『シンデレラ』、そして『くるみ割り人形』のヒロイン。中に入っているのはスリランカのさまざまな茶園の紅茶。いろんな味を楽しみながら、ホッとひと息ついています。(秋山 瑛)