
『くるみ割り人形』のリハーサルがますますの盛り上がりを見せている東京バレエ団。今回はフランスやアラビアなどのソリスト役で活躍、入団5年目の南江祐生が語ります!
──今年入団5年目。いろんな役柄に挑戦されていますが、最近の舞台ではどんな役柄が印象に残っていますか。
南江祐生 どれも印象的でしたが、4月に挑戦した、クランコ版『ロミオとジュリエット』のパリス役でしょうか。僕にとっては演じやすいキャラクターではあったかと思うのですが、クランコの振付は「この音だったらここでこうして」と、音に対して動きが全部決まっていて、その中でパリスの心情を表現しなければならないことに、すごく難しさを感じました。
パリスは本当にジュリエットのことを愛していたんだと思うのですが、それを表立っては言わない。貴族らしくちょっと控えめというか、十まで表現しない。友佳理さんからは、パリスの、ジュリエットへの思いが強ければ強いほど、ロミオとジュリエットの関係性が見えてくると言われたのがすごく響いて、役を演じることは、登場人物の関係性の中で役を生きていくことなんだなということにあらためて気づきました。
──新しい作品にも挑戦しましたね。
南江 夏の〈ベジャール・ガラ〉ではベジャールさんの『火の鳥』に挑戦しました。とはいっても、最後に登場する鳥たちなのでほんの少しですが、作品に関われたことがとても嬉しくて。実は『バクチIII』にも参加しているので、いいとこ取り(笑)、している感覚です。先輩たちと比べればずっと経験は少ないけれど、ベジャールさんの作品を踊ると、自分が「生きているんだな」と実感します。生きていることの喜びも、踊れることに喜びも感じます。ロシアでの留学(ワガノワ・バレエ・アカデミー)から帰ってきて、バレエ団で初めてベジャール作品を経験して、ロシアで学んだこととまた違う身体の使い方、ニュアンスを学びました。踊り終わったあとの達成感も格別です。
──そうした経験を積んだ中での『くるみ割り人形』。
南江 ソリスト役では、第2幕のアラビア、フランス、それから花のワルツのソリストを踊っています。フランスと花のワルツのソリストは2019年の新制作の時から、アラビアは2020年から踊ってきました。
『くるみ割り人形』第2幕フランスより
photo: Kiyonori Hasegawa
──フランスは可愛らしい衣裳が特徴ですね。
南江 そうですね──初演のリハーサルの時に、「王子の次にノーブルなダンサーが踊る役だから」と言われたのですが、だから、本当に細かいところにまで気をつけて、アカデミックに踊るように意識しています。女性二人と組みますが、彼女たちだけでなく、舞台、劇場を包み込むような雰囲気とか、眼差し、心持ちで踊れるようにとアドバイスをもらいました。それは僕自身の課題なんです。アカデミックに踊らなければと気を付けすぎて、ただの"踊り"になってしまわないように、ちゃんと表現に繋げられるようにしなければと思っているんです。
──ではアラビアは?
南江 大人っぽい踊りですね。この踊りの振付を手がけたブラウ(ブラウリオ・アルバレス)からは、人生の悲しさ、寂しさみたいなものを教えているような雰囲気で、と聞いています。フランスとは対照的ですよね。ここでの男性は、踊るというよりも、女性がきれいに見えるようにサポートしながら、自分も雰囲気を崩さずにいなければならないのですが、僕は、女性だけでなく男性も色っぽさがあってもいいのかなって思っています。
『くるみ割り人形』第2幕アラビアより
photo: Kiyonori Hasegawa
──そして花のワルツは淡いピンクの世界がまさにファンタジー!
南江 留学していた時、学校公演で『くるみ割り人形』を経験したのですが、ワガノワ・バレエ・アカデミーで上演しているヴァージョンはまさに全部ピンクで可愛くて華やか。当時、休みの日にアカデミーの近くのエルミタージュ美術館に絵を見に行ったことがあって、そこでルノワールの薔薇の絵を見たんですが、それを見た時に納得! ああ、これがあのワルツのイメージなのかなって思ったんです。柔らかさと華やかさ、でもちょっと儚さもありつつ、なんです。
『くるみ割り人形』第2幕花のワルツより。奥の下手側が南江
photo: Kiyonori Hasegawa
──東京バレエ団のヴァージョンのいいところは?
南江 一貫して感じているのは、温かさ。愛ですね。幼い少女の夢と、それに対する周りの人たちの温かさを強く感じます。
見どころはたくさんありますが、見るだけなら、戦争のシーンが好きです。見るだけなら(笑)。実は、広間の戦いのシーンでは毎年ねずみ役を演じているのですが、ずっと中腰ですし、マスクを被っているから息苦しいし、視界も悪く、たまにどっちが前かわからなくなることも......。でも、夢の世界のメリハリとして、すごく効果的ですよね。
──皆さんきっと楽しみにしています。それでは、来年の抱負をお願いします。
南江 実は、昨年のちょうど『くるみ割り人形』のツアー中に怪我をしてしまって、短い間ですが少しお休みをいただいていました。先生方の配慮で、復帰後は、徐々に、できるところから取り組むことができたのですが、怪我をしたときには、このままバレエをやめてしまおうかとも思いました。でも、そんな時期があったことで、踊れる期間と身体には限りがあるということに気づいて、やめるのは簡単だけれど、むしろやり続けていくことが使命なのかなと感じるようになりました。どこまで挑戦し続けることができるかわかりませんが、その過程こそ意味があると思って、来年もそういう意思をもって、感謝の気持ちを忘れずに頑張りたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
レッスンの時にピアノの音にふれると、癒されるというか、落ち着くんです。あの音が好きだったのでずっとやってみたいと思っていたのですが、5月にピアノの練習を始めました。先生にはついていませんが、基礎練習ができるアプリを活用しています。曲は、バッハの平均律の第1番が弾けるようになりました! いまはサティの「ジムノペディ」を練習中です。(南江祐生)