
『くるみ割り人形』で主役のマーシャを演じる涌田美紀。古典全幕作品の主役に初めて挑戦した『ドン・キホーテ』から5カ月。あのキトリを振り返りながら、初めてのぞむマーシャの役作り、バレエに取り組む姿勢についてなど、いろいろ語ります!
──『ドン・キホーテ』全幕のキトリ役の手応えはいかがでしたか。
涌田美紀 踊りきることができて嬉しかったですね。これまで子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』や『パキータ』で主役を経験させてもらっていましたが、古典全幕の主役はまた違います。全幕の主役となると、集中力に加えて全幕を踊りきる体力も必要に。とくにキトリは1幕、2幕、3幕それぞれにヴァリエーションがあるので、全幕通して踊りきれるのかという不安がありました。練習を重ねれば、力を抜くべきポイントがわかってくるので、工夫を重ねて踊り通せるまでもってくることができました。
『ドン・キホーテ』第1幕より。バジル役の秋元康臣と
photo: Shoko Matsuhashi
──とはいっても、体力的にハードな踊りであることは間違いないですね。
涌田 実際、本番できついなと感じたのは、1幕の広場の場面が終わったあたりです。いや、もうこれは無理!と思うほどの疲労感におそわれます。なのですが、不思議なことに、舞台に出て踊っていると忘れてしまうものなんです。フッと楽になるというか、スポーツ選手はよく「ゾーン」に入ると言いますが、そんな感覚かもしれません。
いずれにしても、古典全幕の主役を演じるというすごい経験をさせてもらいました。ここからまた次に繋げていけたらと思っています。
『ドン・キホーテ』第2幕より。バジル役の秋元康臣と
photo: Shoko Matsuhashi
──それが、『くるみ割り人形』のマーシャですね。
涌田 マーシャもキトリと同様、演じてみたい役でしたから、配役が決まったときは純粋に嬉しかったです。7歳の女の子なので、私が私のまま演じたら厳しいかもしれませんが(笑)。友佳理さんのこだわりの詰まった作品なので、友佳理さんに教わりながら、同時に自分で考えて解釈して、自分のマーシャをつくっているところです。
──『ドン・キホーテ』のキトリのときも、斎藤芸術監督の特訓で大いに鍛えられたと話していましたね。
涌田 友佳理さんに指導してもらうことは常にすっと入ってきて、疑問に思うことがあまりないんです。いろんなところで無理なく共感できる。すぐには理解できないことがあったとしても、質問を投げかければ予想していた以上のことをかえしてくださるので、本当にありがたく思っています。
課題はいくつもあります。(佐野)志織先生からは、後頭部から強く発するように表現する、そうするとより大きい表現に見える、というアドバイスをもらいました。たとえば第1幕の夜中の広間で、クリスマスツリーがどんどん大きくなっていく場面は、もっともっと大きい演技をと求められます。難しいですね。
──舞台にどんなマーシャが登場するのか、楽しみです。
涌田 まだまだ完成にまで至らないのですが、本番までわからないままかもしれませんね。ある程度決まったとしても、マーシャを演じる私の感情も、その時々でまた違うわけですから。
──今回は、地元大阪でもマーシャを演じます。
涌田 本当に嬉しいですね。地元の先生も来てくださるので緊張します。これまでもツアーで地元の劇場で踊る機会はありましたが、優れたダンサーを何人も生み出している土地ですから、お客さまの目も厳しいように感じます。いっぽうで、何か見守ってくれているような、地元ならではの温かさも感じていたと思います。今回の地元での舞台も、楽しく取り組めたらと思っています。
──全幕で主役を踊って、その後何か生活は変わりましたか。
涌田 もともとなのですが、就寝時間は早めに、と意識するように。遅くても12時前には寝るようにしています。体調管理が何より大事。こうしていろんな役を踊らせてもらっていて、痛みがなく踊れるということって本当に幸せだということ。感謝ですね。
──感謝。
涌田 これまで感謝していなかったわけではないのですが、感謝することの大切さに気づきました。周りをよく見るべきということにも気づきました。主役を踊る人間は自分のことばかりを考えるのではなく、周囲がしっかり見えていないといけないんだなと感じるんです。私はまだ完全には見えていないと思いますが、何かに固執するのではなく、いろんな考えがあるということを理解することで、バレエの表現が広がるのではないかとも。どちらかというと私は、「白か黒か」とか、「私はこうじゃなきゃいやだ」と思うほうだったんです。友佳理さんにも、よく「頑固ね」と言われていたのですが、最近は「こんなに変わった!」と声をかけてもらうことも。これからも、感謝の気持ちを忘れずに頑張っていきたいと思っています。まずは私のマーシャを、観に来ていただけたら嬉しいです!
バレエ以外にも夢中になれることがあったらな、と思っていたのですが、いまはこの観葉植物が癒しの存在。写真左がパキラ、右がシェフレラカポック。すごくカワイイし、植物があると心が癒されます。1回枯らせてしまったこともあるのですが、もう枯らせたりしません。部屋には切花も常にあります。花や植物は邪気を払ってくれるといいますよね。植物の力、いいと思います!(涌田美紀)