
東京バレエ団は現在『くるみ割り人形』の全国ツアー中! 今回は、この作品でマーシャに寄り添う人形──ピエロ、コロンビーヌ、ウッデンドールを演じる3人、鳥海創、中沢恵理子、海田一成に集まってもらいました。
左から鳥海創、中沢恵理子、海田一成
──まずはこの3人の人形、どんなキャラなのか、教えてください!
中沢恵理子 マーシャの家のクリスマス・パーティーで子供たちの前に登場する人形ですが、ドロッセルマイヤーに魔法をかけられて動き出し、感情を持つようになるんです。とくにコロンビーヌは、マーシャとは女の子同士の一番近い友達。1幕の戦争の場面では、「こんなところにくるみ割り人形が!」とマーシャに教えてあげたり、武器になるスリッパも見つけてあげるので、マーシャをそれとなく導く存在でもあるのかなって思っています。
鳥海 創 僕の中ではピエロは可愛らしいキャラクターという印象で、子供たちに愛想を振りまいています(笑)。
『くるみ割り人形』第2幕より。後列左がウッデンドールの海田一成、右端がピエロの鳥海 創
photo: Kiyonori Hasegawa
海田一成 僕は、実は二人とは材質が違うんですよね。
──材質!?
海田 僕だけ木製で──。ちょっと硬質でカクカクとした動きを意識しています。衣裳の木目の模様が特徴なんですが、これ、下書きなしの手描きなので、一人ひとり微妙に柄が違います。あ、シューズも一人ひとり柄が違います(笑)。
鳥海 僕ら二人は綿が詰まった人形だと聞いています。子供たちが持っている人形と同じなんですが、ウッデンドールのような木の人形みたいに関節がなく、絶対自立しない。なんとなく、身体を突っ張らせた感じで演技しているんですよね。
中沢 人形の動きは結構研究しました! 首の角度は「ここまで」と決めたらもうそこまでしか動かさないとか、腕を動かす範囲も決めていました。1幕はそんなふうに人形らしい、無機質な動きを強く意識しています。でも2幕では、もう少し人間ぽい感じになるんですよね。マーシャのお友達の愛らしい人形で、ちょっとブリッコな感じも(笑)。
『くるみ割り人形』第2幕より。左端がコロンビーヌ役の中沢恵理子
photo: Kiyonori Hasegawa
鳥海 このヴァージョンのドロッセルマイヤーは途中から出てこなくなりますよね。彼は魔法を使ってある程度の仕掛けはするけれど、そのあとのお菓子の国への案内はピエロとコロンビーヌ、ウッデンドールに任せている。僕らはドロッセルマイヤーの命を受け──とはいっても多分、何も聞かされていないまま(笑)、なので、見るもの聞くものすべてマーシャと同じ反応をしながら旅をしている感じなんです。
鳥海 創
──旅の中でいろんな役割を果たしているんですね。
海田 第2幕第2場で王子とねずみたちとがもう一度戦う場面がありますよね。実はウッデンドールはそこで王子に剣を渡しているんですよ。「はい、これで戦って」って。自分たちはわーっと端に逃げているようにも見えるんですが(笑)。その後のディヴェルティスマンの場面は、マーシャたちと一緒に各国の歓迎の踊りを観るという、気の抜けない場面が続きます。
中沢 その間ずっと、人形らしく振る舞っていないと。
鳥海 それが意外と難しいんですよね。
──2019年の新制作から数えて4回目の上演。皆さん役柄がすっかり身体に入って、楽しみながら演技している感があります。
鳥海 年々アップグレードしていくところもありますし、友佳理さんから新しいアイデアが出て変わっていくところもあります。
中沢 今回で3回目なので、より人形らしい演技ができればと思って取り組んでいます。とくに気をつけたいのは目の演技。もっと大きく!って言われているんです。焦点も少しぼやっとしている感じ。目一杯目を見開いているとコンタクトレンズが乾くのが辛いんです。コロンビーヌはいつもメイクさんにメイクをしていただくのですが、目を大きめに描いてもらって、より可愛らしくしてもらっています(笑)。
中沢恵理子
海田 これまでは創くんのピエロと同じ組で演じることが多かったけれど、今回僕が組むピエロは後藤健太朗くん。初めてなので、どこでタッチされるかとか、こちらのアクションにどう返してくれるのかとか、すごく新鮮。コロンビーヌの工桃子さんも初めてなので、どう遊べるかな、とワクワクしながら取り組んでいます。
──『くるみ割り人形』のツアーが終われば仕事納めですね。
中沢 今年何をやったかあまり思い出せないですね。それくらい忙しくさせていただきました!
鳥海 印象的な舞台といえば、4月のクランコ版『ロミオとジュリエット』。僕は左利きなので、剣の扱いに苦労したのですが、ティボルトという役は、皆が楽しく踊っているシーンにはたいてい仲間に入れていないんです(笑)。「なんで皆で楽しくやってんだよ!」という感じでしたが、その気持ちのまま、役に入っていけたように思います。皆が思っているティボルトとはちょっと違うかもしれないけれど、僕の中のティボルトはだいぶヤサぐれていたかもしれません。でも、演技はすごく楽しく取り組むことができました。
4月のクランコ版『ロミオとジュリエット』より。
ロミオ役の池本祥真(左)とティボルト役の鳥海(右)
photo: Shoko Matsuhashi
中沢 私は『ドン・キホーテ』全幕で初めてキトリの友人を演じたことですね。その前にも抜粋では友人を踊る機会はあったのですが、全幕の舞台は初めてでした。
6月の全幕『ドン・キホーテ』より、キトリの友人。
左が中沢恵理子、右は長谷川琴音。
photo: Shoko Matsuhashi
──ペアを組まれたのはどなたでしたか。
中沢 長谷川琴音ちゃんでした。同期なのでとてもやりやすかったですし、本当の友達のような雰囲気でできて楽しかったですね。
海田 僕も全幕『ドン・キ』ですね。サンチョパンサを演じました。最初に全幕でサンチョを踊ったのは2018年の世界バレエフェスティバルの全幕プログラムで、今回が3回目。でも今年は飯田宗孝先生が亡くなってから初めての『ドン・キ』でしたから、少し複雑でした。サンチョは飯田先生がずっと演じられてきた役ですし、ずっと指導していただいてきたのですが、今回のリハーサルでも「飯田先生はこうされていた」と指摘される機会が度々あり、でも、僕自身は飯田先生ではないし、どう取り組むべきかとプレッシャーを感じることもありました。飯田先生の言われたことをずっと守っていきたい思いも強いですが、もっといい演じ方を自分で考えるべきなのかなと、すごく悩みましたね。
全幕『ドン・キホーテ』より、サンチョパンサ(海田一成)
photo: Shoko Matsuhashi
──そんな皆さんの2023年も、盛りだくさんのラインナップですね。
海田 2月の〈上野水香オン・ステージ〉では久しぶりにキリアンの『小さな死』を上演します。前よりレベルアップを図っていきたいし、新しいパートナーと組むのもすごく楽しみにしているんです。
鳥海 2023年は金森穣さんの『かぐや姫』、新制作の『眠れる森の美女』と、新しい取り組みが控えていますので、皆さんにも楽しみにしていただきたいですね。
中沢 今年の舞台を、お客さまがどう観てくださったか気になるところですが、来年も多くの皆さまに楽しんでいただけるよう頑張りたいです!
──そういえば中沢さんはフクロウがお好きでしたよね。来年こそ実際に飼う予定は?
中沢 覚えてくださってて嬉しいです(笑)。いつかチャコモリフクロウを飼おうと思っています。が、肉食なので餌を自分で捌いてあげるのには少し抵抗があり、いまはツアーで留守にすることも多いので、いずれ実現できたら、と思っています!