
来週末開催の〈The Tokyo Ballet Choreographic Project (コレオグラフィック・プロジェクト)〉、今年は3年ぶりのスタジオ・パフォーマンスが実現! 本ブログでは今回から2回にわたって本番直前特集をお届け。第1弾の今回は、今年はじめて振付作品を発表する加藤くるみが登場、振付のアイデア、リハーサルの様子などを聞きました。
──〈Choreographic Project〉 にはこれまでも毎回のようにダンサーとして参加してきましたね。
加藤くるみ そうなんです。たとえば、(岡崎)隼也さんの作品は、2018年の『理由』、2020年の『運命』抜粋版、2021年のサマーバレエコンサートで『ZERO』を踊っていますし、昨年はカズさん(木村和夫)の『バラの精』、それから(金子)仁美さんの『Daydream』──これは〈上野の森バレエホリデイ〉の企画で、東京文化会館の小ホールで上演した女性3人の作品でした。ブラウ(ブラウリオ・アルバレス)の作品は、諸事情で本番には出演できなかったのですが、『夜叉』(2018)のリハーサルに参加していました。このプロジェクト自体にはかなり初期から参加していました。
2022年の〈上野の森バレエホリデイ〉で上演された
金子仁美振付『Daydream』より。中央が加藤くるみ
photo: Shoko Matsuhashi
──そして、今回ついに振付にチャレンジ!
加藤 そうなんです。ジョン・ノイマイヤーさんの作品が大好きで素敵だなってずっと思っていました。とくに『スプリング・アンド・フォール』が好きなのですが、東京バレエ団にいると、ノイマイヤーさんだけでなくベジャールさんやキリアンさんといった素晴らしい振付家の作品に触れる機会がたくさんあって、こんなふうに心に響くような作品をいつか創りたいと思い、はじめの一歩として今回チャレンジしました。子供たちの発表会のために振りを作ることはあっても、自由に創作するチャンスなんて普通はありません。〈Choreographic Project〉は、東京バレエ団のダンサーなら、私のようにコンテンポラリーを専門的に学んだことのない人でも試演会にチャレンジさせてくれる。素晴らしいなって思います。
──エントリーを決めたのは昨年秋だそうですが、その時点で作品の構想は固まっていましたか。
加藤 「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」をカッコよくカバーした曲があって、「この曲で振付けたいな」と思っていたんです。どちらかというとストリート系のダンスぽいサウンドですが、メロディはよく知っていますし、取り組みやすいかなと感じていました。当初はエントリーしようかどうしようかとかなり迷いましたが、締切直前になって最初の1分間の振りができてきたので、その段階でエントリーを決めました。ギリギリでした(笑)。
──1分できていたら残りは3分!
加藤 と思っていたのですが、ちょっと違いました(笑)。
実は当初、あの曲の歌詞そのまま、あの言葉通りのものを表現しようと思って進めていたんです。すごくハッピーな雰囲気ですよね。でも、振付を進めていくうちに、いや違うな、こういうことばっかりじゃない──この世界、小さな幸せを感じられる日々だけじゃないなって気付いて、むしろ、悩みや苦しみを抱える中で見えてくる小さな幸せを表現したいなって思うように。結局最初のその1分間は全面的に変わったし、その後の部分も作っては戻って、作っては戻って、何度も何度も作り直すというプロセスを重ね、2月中旬の試演会の直前にもかなり手を加えて上演までこぎつけました。
──その過程で、振付の先輩たちにいろいろとアドバイスしてもらうことも?
加藤 そうなんです。フォーメーションの組み立て方などわからないことばかりだったんです。ブラウに助言を求めると、「とにかく書いてみたほうがいい」と! そのフォーメーションを見せたいだけなのか、それとも何か意味があってそこに移動するのかということにもよるんだなということがわかりました。
実は今回、隼也さんの作品にダンサーとして参加しているので、その振付と並行して自分の創作を進められたことも良かったなと思います。踊りながら、「こうやってやるんだな」と気づくこともありました。カズさんもいろいろと気にかけてくれていて、「照明をどうやったらいいのか全くわからないんです」と言う私に、「僕も最初そうだったよ」って言ってくれて、いろいろとアドバイスしてくれました。
──振付が進めばさらに新しい疑問も出てきて......?
加藤 始めてみたらこの音楽、実はカウントが取りにくいということに気付いて(笑)、カズさんは「カウントがすべてではないよ」と言ってくれました。カウントでなく、「この音」でこうしたいというのがあるのなら、それをしっかりダンサーに伝えるべきとも。
──それにダンサーたちは応えてくれる?
加藤 そうなんです! 声をかけたダンサーたちは皆、私にないものを持っていたり、佇まいの素敵な人たち。みんなとてもしっかり者でひとつずつ丁寧にリハーサルを重ねてくれる人たちなので、「そこはこうやってカウントとってみたらどうですか」とか、振りについて私がちょっと妥協しようとすると、「それはカッコよくない。もうちょっとこうしたい」とか言ってくれるんです。だから本当に皆で創っている感覚ですね。
『What a Wonderful World』リハーサルより。ダンサーは
生方隆之介、岡﨑 司、加古貴也、前川琴音、鈴木香厘の5人
──試演会はどうでしたか。緊張したのでは。
加藤 そうですね。私がこうやって頭抱えて紙に書いて考えたものを、「いま、5人がこうやって踊っている!!」って、不思議な気持ちに(笑)。こうなるとは思っていなかった、と感じた部分もあります。ダンサーたちに私の脳みその中はわからないわけだし、説明するのが難しいときもあるけれど、私が思い描いていたものと皆が踊るニュアンスが全然違っていたりするところが逆に良かったりもして、面白いなって思いました。
──先日の試演会の後には指導者からのアドバイスもあったようですね。
加藤 たとえば、なぜダンサーを5人にしたのか、彼らはグループなのかそれとも個人個人なのか、と尋ねられて──そういえばどうだろうかと、また作品について考える時間を持つことができました。
今回は、二人の組みものを考えるのは難しいかなと思ったし、男女の関係性を描くつもりもなかったので、男女比が半々にならないように5人、という考えがあったんですね。今回は明確なストーリーのない作品にしたのですが、これからまた挑戦してみたいです。
──本番が楽しみです!
加藤 クラブ・アッサンブレの皆さんは、私が自分発信で作ったものをご覧になるのはこれがはじめてなので、どう受け止めてくださるか楽しみにしているんです。とはいっても、まだそんなに自信はないんですけれど、とにかく1回上演して、皆さんがどう思ってくださるか知りたいです。ただ、私は自分の作品のあと隼也さんの作品で踊るので、平常心でいられるかどうか(笑)ですが、がんばります!