
〈The Tokyo Ballet Choreographic Project (コレオグラフィック・プロジェクト)〉特集の第2弾は、本プロジェクトの常連、毎回振付作品を発表している岡崎隼也とブラウリオ・アルバレスの登場です。これまでの創作や今後の展望など、盛りだくさんでお届けします!
右から岡崎隼也、ブラウリオ・アルバレス
──二人は2017年の初回から本プロジェクトにとても意欲的に取り組んでいます。バレエ団のリハーサルの合間に創作を続けるのは本当に苦労が多いことでは?
ブラウリオ・アルバレス いや、全然です!
岡崎隼也 そう。創りたいものがたくさんあるので、時間と場所さえあればいくらでもやりたいと思っているんです。
──では、エントリーのときにはすでに作品の構想がある!?
岡崎 いくつかある中で、今回はこれができるなとか、こっちもやりたいけれど今回はまだかなとか、いや、それでも無理くりやらなければいけないかな、と思うことも。本格的に創作に着手してはじめて気づくこともありますから。
アルバレス やりたいことがたくさんあるなかで、いま、実際にできることは何かなって考えます。隼也さんも僕も、本当はもっと長い作品を創りたいと思っていて、その勉強のために作品を創っている部分もあるけれど、いつか全幕を創りたい。
岡崎 どんなに優れたコレオグラファーでも、その全部が傑作というわけじゃない。やっぱり数を作らなければ、と思います。経験を積むという意味でも、〈Choreographic Project〉に毎回参加しているんです。
昨年3月、東京文化会館の大ホールで実施した
〈Choreographic Project〉カーテンコールより
photo: Kiyonori Hasegawa
──今年で7年目。回を重ねて自身の創作の方向性が明確になったり、考え方が変わってきたりということは?
アルバレス 僕はあります。だいたい二つの方向性が見えてきました。僕はアジアの伝統舞踊の動きに興味があって、インドのバラタナティヤム、タイのコーン、日本の能を学んでいますが、そこから自分のメソッドを創って、作品にしていけたらなと思っているんです。もう一つは、文学──日本だけに限らないけれど、文学をもとにした作品を創りたいと考えています。
ハンブルク・バレエ団時代も振付に取り組んでいましたが、東京バレエ団で7年やってきて、いかにディテールが大事であるかということもわかってきました。自分の感じていること、やりたいことを、どこまで深く探していくかということが本当に大事。最初は、面白いから試してみよう! という気持ちがないと何も始まらないけれど、そこから、どんどんディテールを突き詰めていくと、世界観を作っていくことができるのかなって思うように。
岡崎 僕はいつもいろんな方からの影響を受けているし、インプットしなければアウトプットもできないと思っているのだけれど、そんななかでも常に"新しいもの"を創りたいし、僕自身が創った動きで作品を構築していきたいと考えています。
クラシック・バレエはわかりやすいからこそ面白いところがあると思いますが、人間の感情ってもっともっと繊細で複雑だし、それはダンスで表現することができるんじゃないかとも思うんです。言葉にはできない感情ですらも! でも、たとえば僕が話をするとき、僕が意図することを100%伝えられるかというと、それは言葉のチョイスや受けてのそのときの状況によって伝わり方が変わってくる。本心を伝えようとしても伝わり切らないことのほうが多いけれど、でも、だからこそ面白いともいえるんじゃないかなと。
僕は抽象的な表現が好きだけれど、自分自身には明確なビジョンがあるし、それは受け取った人次第の、それぞれの解釈でいいのかなとも思いますし、そこに頼りすぎるのもよくないのかな、と思ったりしています。
──ハンブルク・バレエ団日本公演で来日したジョン・ノイマイヤーがいらして、皆の作品をご覧になったそうですね。どんなことをアドバイスされましたか。
アルバレス 自分の伝えたいことは、自分自身の目線でしっかり伝えていくこと、とおっしゃっていました。たとえば、物語を伝えようとするときには、自分の解釈を自分の作品で伝えることがもっとも大事で、それが自分の声になると。
岡崎 僕がお見せした『運命』は、以前振付けた『運命』抜粋版では取り上げなかった場面を、まず創りたいところから創っていき、パズルのように組み立てていった作品です。ストーリーを伝えるというよりも、場面ごとの面白さ、ダンサーの身体、その生き様みたいなものにフォーカスしたかったのですが、ジョンさんには「難しいね」と指摘されました。そう言われるかもしれないなという気持ちもありましたが、最終的には「全部観てみたい」とも言ってくださいました。合格点はいただけたのかなとは思いましたが、この先、お客さまに観ていただくまでにしっかり詰めていかなければと感じました。
岡崎隼也振付『運命』抜粋版(2020)
photo: Shoko Matsuhashi
──これまでの創作では、大変なこと、アクシデントもたくさんあったのでは?
アルバレス それはもう、いつも(笑)。
岡崎 僕は去年、ありましたね。あのときの創作は、ちょうど金森穣さんの『かぐや姫』のクリエーションの時期と重なってしまって、限られた時間の中でリハーサルを進めていたんです。ダンサーたちが、穣さんの作品も僕の作品も、両方とも大事にしてくれているのはわかっていたけれど、お互い我慢することも多く、フラストレーションはたまるいっぽう。ついダンサーたちに大きな負担をかけてしまい、皆との間に溝ができてしまいました。最終的には皆で一つになれたかとは思いますが──。
──それも大きな学びに! 逆にすごくハッピーだったこともあるのでは。
アルバレス 僕は、2020年に上演した『I remember』! 何か新しいものを創ろうとして、ダンサーとともに取り組むことができてとても気持ちがよかった。再演できたらって思います。
ほかの作品で再演したものもありますが、再演してよくなることもあるし、逆にオリジナルにはかなわかったりすることもある。ダンサーが変わると違ってくることも。
岡崎 『理由』(2018年初演)は後になってオリジナルと違うダンサーで上演する機会が一度ありましたが、新たな発見があるというか、全然違う作品に見えるなと思って、すごく新鮮でした。
ブラウリオ・アルバレス振付『I remember』(2020)
photo: Shoko Matsuhashi
岡崎隼也振付『理由』。写真は2019年の再演より
photo: Kiyonori Hasegawa
──あらためて上演作品について紹介してください。
岡崎 さきほど触れた『運命』。これは前作をご存じない方にとっては少し難しい作品になってしまいそうなので、いつもは自作についてあまり説明したくないほうですが、今回はしっかりプログラムノートを書こうと思っています。
もう一作は、好きなアーティストの新譜のお知らせが届いたのですぐ聴いたら、その瞬間にわーっと絵が浮かんできた。映画のための音楽だったので、その映画からもインスピレーションを得て創作しました。
アルバレス 今回は2作とも、日本の物語から想を得た作品です。一つは『平家物語』に出てくる平敦盛の小枝(笛)について描いていますが、英語でいうとLimbo、つまり地獄と天国の間のようなところでの出来事として表現しています。もう一つは谷崎潤一郎の『細雪』をベースにしたお見合いの話で、いまの社会にもあるようなことも表現できたらと思っています。
岡崎 シンプルに、新しいものが生まれるときってそのときしかないので、皆さんにはそれを存分に楽しんでいただきたいですね。このプロジェクトはこのあとも続けられるよう僕ら頑張っていきますので、今回ご来場できない方々も、ぜひ次回に期待していただきたいと思います。
アルバレス そう思います!
ブラウリオ・アルバレス