
今週末はいよいよ2年ぶりとなる『ジゼル』公演。今回初めてジゼル役に挑戦する中島映理子が、いまの思いを語ります!
──昨年秋に『ラ・バヤデール』で全幕主役デビューを果たしました。
中島映理子 緊張しました。舞台上で一人で踊る、それもヴァリエーションだけでなくて、舞台に出ている間ずっと注目されるというのは、とても不思議な感覚でした。リハーサルでは、いろいろと注意を受けたことを気にしすぎてしまって、自分らしさを出せないことが多かったけれど、本番ではニキヤ自身の気持ちになりつつ、私らしさも出せたような気がします。
『ラ・バヤデール』より。パートナーは宮川新大
photo: Koujiro Yoshikawa
──プレッシャーに負けないために何か工夫を?
中島 工夫というよりも......実は当日の朝、友佳理さん(芸術監督・斎藤友佳理)が声をかけてくれたんです。「全幕の主役は初めてでしょう? でも心配することはない。配役したのは私であって、万が一失敗したとしても、それは全部私の責任。あなたはただ音楽に身を任せて踊ればいい」と──。それでかなり気持ちが楽になりました。周りの皆もとても優しく、「綺麗だよ」と言ってくれて、私はそれを素直に嬉しく思えて、自信にもつながった。真ん中を踊る以上、自分に自信がなかったら皆も自信がなくなってしまうなと思うようにもなりました。
──その後もいろんな挑戦があって、4月の公演ではロビンズの『イン・ザ・ナイト』に初挑戦。
中島 初めてのロビンズ作品でした。クラシックの要素が強い振付ですけれど、曲線の動きが多い印象で、難しかったですね。ずっと男性と組んでいるので、時間を見つけてはパートナーの新大さん(宮川新大)に練習に付き合ってもらっていました。勉強になりましたね。
ロビンズ振付『イン・ザ・ナイト』より。左端が中島映理子
photo: Shoko Matsuhashi
──そして、ついに初めてのジゼル役。
中島 実は、『ジゼル』そのものが初めてなんです。クイーンズランド・バレエではコール・ドの一員としてリハーサルに出てはいました。が、コロナの状況がどんどん悪くなっていって、公演に出ることなく日本に帰ってきてしまいました。
その後、2020年3月に東京バレエ団に入団させてもらうことになって、その直前、2月の『ジゼル』を観ることができました。その時は、いずれコール・ドを踊らせてもらうつもりで観ていたので、「私、あそこに入るんだ!」という気持ちでいたんです。
──コール・ドのつもりがジゼル。配役を知った時はどんな気持ちでしたか。
中島 本当に驚きました。小さい頃からの憧れでしたし、やってみたい作品ではありました。でも私って何となく "姫系"の役柄のイメージが強く、ジゼルのような "村娘"は一度も踊ったことがないんです。経験のないことでしたから挑戦ですよね。
──リハーサルは順調ですか。
中島 今日もずっとリハーサルでしたが、とくに、冒頭の「出会い」、1幕終盤の「狂乱」といった演技中心の場面は、課題がたくさんです。友佳理さんには「ここ(眉間)だけでやらないで!」とよく注意されています。
内面、つまり感情が大事で、まずは気持ちが動いてから、ということだと思うんです。
『ジゼル』リハーサルより。パートナーは柄本 弾。
photo: Koujiro Yoshikawa
──それぞれのダンサーの個性も大事にされているように感じます。
中島 人の真似をする必要もないし、毎回同じでなくてもいいと言ってくれます。私の中でも、割と素のままでいきたいなと思っています。無邪気に踊ることが好きで、友達とも一緒にいたい。私自身、友達と一緒に遊ぶのは大好きですから、"自分だけ"にならないよう、周りの人たちとの関係も大切にして、それでいて無邪気なジゼルがいいなと。
──1幕は華やかなパ・ド・ユイットも登場します。
中島 東京バレエ団ならではの見どころですよね。あの場面は実はジゼルにとって大切な休憩ポイントで(笑)、ジゼルはあのタイミングで少し髪を緩めたりして"狂乱"への準備をします!
狂乱の場については、自分でもこうしたい、というヴィジョンはなんとなくあるけれど、まだぼんやりとしています。絶対にこうしたい、というものがあるとそれこそ"段取り"になってしまうので、本当に流れに身を任せるほうが、"らしさ"が出るのではないかとも思っているんです。
『ジゼル』リハーサルより。パートナーは柄本 弾。
photo: Koujiro Yoshikawa
──2幕のジゼルの演技については?
中島 1幕では、ジゼルはそれまで恋の経験がなく、アルブレヒトに引っ張られていく感じですが、2幕ではジゼルがアルブレヒトを積極的に守っていく。立場が変わるという感じがします。ジゼルはもう魂でしかないので、彼女の魂が動いている、という雰囲気を出せたらなって思っています。そしてコール・ドの皆も本当に大変ですから、その雰囲気も壊さないように......。
友佳理さんは主要キャストだけでなく、貴族や村人、2幕のコール・ド・バレエもすべて大事にしています。私たちはどうしても主役にばかり注目しがちですけれど、『ジゼル』の世界の、その雰囲気は皆で作り上げるものだと。たとえば貴族と村人では同じ場にいても在り方が違っていて、両者には距離感がある。だから、村人が貴族に馴れ馴れしく近づいてしまったらおかしいですよね。そうして作り上げる世界は、東京バレエ団の『ジゼル』の大きな見どころになる。私も東京バレエ団の一員として、周りの皆との調和を大切にして、舞台を作り上げることができたらと思っています。
──7月には『ジゼル』を携えてのオーストラリア公演も控えています。メルボルンでの公演ですね。
中島 私が住んでいたのはブリスベンだったのでメルボルンはあまり馴染みがないのですが、子供の頃、オーストラリア・バレエ学校のサマースクールに参加して1、2週間だけ滞在したことがあります。久しぶりのオーストラリアですが、少し慌ただしいですね。
──東京バレエ団ライフ、充実していますね。
中島 8月は子ドンキ(子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』)で、初めてのキトリに挑戦です。本当にいろんな役柄を踊るチャンスをいただいて、いつも勉強、ですね。いまのところ大きな怪我や病気もなく──そういえば、実は私、昨年無遅刻無欠勤だったんです!
──皆勤賞?
中島 賞はないんですが、年度末に友佳理さんに、「すごいね! 健康第一よねー!!」って言われまして(笑)。
──素晴らしいことです。健康維持の秘訣って何かありますか。
中島 睡眠はとても大事だと思います。寝不足だと怪我をしやすくなるとも聞いています。最低でも7時間は寝ていたいと思っているんです。今年もこれからますます慌ただしくなりますが、睡眠時間をしっかりキープして、頑張ります!