
今回のブログは、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』でともに馬のロシナンテ役を演じている宮村啓斗と山仁尚の二人が登場! この役ならではの難しさ、楽しさをたっぷり語ります。
左から宮村啓斗、山仁 尚
──お二人ともこのブログは初登場ですので、まずは自己紹介からお願いします!
宮村啓斗 宮村啓斗です。兵庫県生まれ、2020年入団です。
山仁 尚 僕は東京出身で、2021年4月の入団です。
──バレエとの出会い、東京バレエ団を志望した理由を教えてください。
宮村 僕は4歳のときからモダンバレエを習っていたんです。もともと母がやっていてその影響だったのですが、そのうち、バレエをずっとやり続けるならクラシックも学ばないと、と思い、近くにあったクラシック・バレエのスタジオに通うようになったんです。地元姫路のスタジオの先生が、実は元東京バレエ団の小笠原亮さんでした。とても厳しく指導してもらいましたし、男性の先生は僕にとってはすごく心強く思かったんですよね。
──それで東京バレエ団を目指すように?
宮村 ベジャール作品については、いちばん強く影響を受けました。『ボレロ』などを見せてもらって、僕もベジャールを踊りたいと思うようになり、東京バレエ団のオーディションを受けたんです。
山仁 僕の場合は、両親がバレエの指導者で、実家がバレエのスタジオ。2つ年上の兄の影響もあって、気づいたら始めていたという感じです。3歳頃のことでした。でも強制されて始めたわけではないので、途中で少し嫌になることはあっても、バレエを辞めたいと思ったことはなかったんですね。最終的にはリヨンのコンセルヴァトワールに留学しました。
──何年間留学されていたのですか。
山仁 3年ほどです。最終学年のときにはジュヌ・バレエ、つまりジュニア・カンパニーとしての活動もしていて、パリで公演するという経験も。最終学年ですので、ヨーロッパ各地のカンパニーのオーディションを受けてもいたのですが、決まらないうちにコロナ禍に入ってしまいました。学校はとりあえず2週間休校。それで日本に帰ってきたのですが、結局おさまることはなく、年度末まで学校はクローズに。帰国したまま1年間はほぼニート生活(笑)、でした。でも、実家がスタジオだったので、レッスンはずっと続けていて、2021年になって1月のオーディションを受けたんです。日本のカンパニーはクラシック色が強い印象がありますが、東京バレエ団はレパートリーが豊富で、『エチュード』のような作品もあれば、ベジャールもある。いろいろ踊ってみたいなと思いました。
──お二人とも、ベジャール作品はすでに経験済みですね。
宮村 『ボレロ』に『ギリシャの踊り』を踊っています。ベジャール作品を踊るのは本当に楽しいですね。リハーサルももちろんですが、舞台で、この2,000人のお客さまの前でベジャールを踊るんだと実感したときは本当に感動的で、「ワーッ!」となりました(笑)。
──7月には入団後初の海外ツアーに参加、帰国後は子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』(子ドン・キ)の国内ツアーでした。二人が組んで演じている、馬のロシナンテについて教えてください。まず、どちらが前脚でどちらが後ろ脚?
宮村 僕が前で──。
山仁 僕が後ろ脚です。
──前の方の視界は確保されているんですか。
宮村 見にくさはあるけれど、馬のちょうど首のあたりがメッシュになっていて、そこから外を見ることができます。
山仁 後ろ脚の場合は、馬のお腹の部分がメッシュ状になっているので、そこから下を見ます。後ろの人はずっと腰を曲げて下を向いているので、見えるのは床と前脚だけですが(笑)。
宮村 すべてメッシュ越しなので見え方も普通と違うんです。袖からの照明の光が強くて、メッシュ越しだと全部白飛びして見えなくなってしまって、袖にはけようと思っても、どこに向かっていけばいいのかわからなくなることがあります。ヒヤヒヤしますね。
子どものためのバレエ『ドン・キホーテ』より、ロシナンテ
(右のサンチョ・パンサは後藤健太朗)
photo: Hidemi Seto
──演技はかなり固定されているんですか。
宮村 ここでこうして、こっちに移動して──と、決まっている部分もありますが、ある程度は自由にできます。僕の悪い癖でもあるのですが、音がかかると楽しくなってしまって、勝手にいろいろやり出してしまうんですよね(笑)。だから、もう1組のペアのロシナンテとは結構違っていたりもします。
──それ、馬の中にいる二人はどうやって意思疎通するのですか?
宮村 舞台の上でもずっと喋っています。「今からコレやるよー」とか、「右脚、上げて」とか、「回るよー」とか。
──そうなんですね! でも、ただ普通に歩くのも難しそう。
宮村 普通に、僕が右脚でスタートしたら、
山仁 僕も同時に右脚スタート。です(笑)!
──ええっ!? 前脚後脚が一緒に出るんですね!
宮村 (笑)。本物の馬と同じように歩こうとしたら、二人の脚がぶつかってしまいますから、どうしてもそういう歩き方になります。
昨年の子ドン・キ公演舞台裏より
──カーテンコールでは馬から出てきて、次々と大技を披露しますね。何をやるか、いつも決めている?
山仁 僕は開脚ジャンプで。
宮村 僕はファイヴフォーティを。皆が楽しそうに踊っているのをずっと横目に、暑くてしんどいのをぐっとこらえて演じてきた分、カーテンコールでは溜め込んだ気持ちを全部動きに出して、はっちゃけます(笑)。楽しいですね。
山仁 それに、関内での学校公演後に子供たちの感想を読ませてもらうと、馬についての感想がすごく多くて、ちょっと「やった!」という気持ちになりました。
宮村 ロシナンテはいつか卒業する日がくるかもしれませんが、いつか闘牛士も演じてみたいなって思っています。
『ドン・キホーテの夢』終演後。
宮村啓斗(左より二人目)、山仁尚(右端)とともに
ロシナンテもしっかり写っています!
──〈めぐろバレエ祭り〉での『子ドン・キ』が終わったら、今度は金森穣さんの『かぐや姫』の全幕上演ですね。
宮村 僕らは従者に配役されています。第2幕には従者の男性たちのコール・ドがありますが、すごく迫力ありますよね。黒の衣裳もカッコいいし! 3幕のことはいまだによくわかっていませんが、楽しみにしています。
金森穣振付『かぐや姫』第2幕より
photo: Shoko Matsuhashi
──その直後の『眠れる森の美女』も新制作。新作が続いて大忙しですね。
宮村 入団以来、古典全幕の新制作に関わるのはこれが初めての経験です。指導陣の友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)、志織先生(バレエ・ミストレスの佐野志織)とカズさん(バレエ・スタッフの木村和夫)という3人を中心にリハーサルがすすめられています。
宮村啓斗
──振付に興味は!?
宮村 〈コレオグラフィック・プロジェクト〉は一度挑戦できたら、と思ったこともあるのですが、『眠り』のリハーサルでの振付の様子を見ていたら、それがどんなに難しいことか、わかりました。
山仁 僕も、バレエ学校の試験で自作自演をしたとき、自分に振付は難しいのかなって実感しました。ただ、ダンサーとして新作に関わることはとても興味深く思います。今回の『眠り』のリハーサルでも、友佳理さんがダンサーを集め、「ここの振りはこういうことをしたいのだけれど、何かアイデアない?」って聞いてくれるんです。しかも、「こうしたらどうでしょう」と提案して、それが良ければちゃんと採用してくれる。
宮村 そういう場で踊ることができて幸せですよね。
──では最後に、今後の目標、抱負を聞かせてください。
宮村 バレエ団の中に憧れのダンサーがいるんです。樋口祐輝さんです。ベジャールをすごくカッコよく踊るし、あの身体全体を使い切って踊る姿にすごく憧れていて、直接いろいろアドバイスをもらったりもしているんです。僕も身体全体で表現できるダンサーになりたいと思っています。
山仁 僕も、秋元康臣さんや大塚卓さんのようにノーブルな踊りができるようになれたら、と思っています。クラシックも好きですが、実はベジャールをはじめ現代の作品もすごく好きなので、そういった作品も踊ることができたらって思っています。
山仁 尚
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山仁提供。鳥取砂丘だそうです! 『子ドン・キ』ツアー鳥取公演の終演後に、男性4人くらいで「砂丘に行こう!」と向かったところ、途中で他のメンバーたちと一緒になって、結果こうなったという図。暗いですが、左から二番目の男性が山仁です。