
東京バレエ団では10月の「かぐや姫」全3幕世界初演、11月の「眠れる森の美女」と新制作の舞台が続きます。今回登場の金子仁美は、この2つの作品で影姫とオーロラ姫という対照的な女性を演じます。
──スタジオではいま、金森穣振付「かぐや姫」、「眠れる森の美女」のリハーサルが同時進行中ですね。
金子仁美 「かぐや姫」の影姫と「眠れる森の美女」のオーロラ姫に取り組んでいるのですが、対照的というか真逆というか、全然違うタイプの姫ですよね。私が演じる影姫は第2幕から登場する帝の正室で、美しさも権力もあるけれど、孤独を募らせている女性です。天心爛漫なオーロラ姫とは全然違いますよね。
──「かぐや姫」はついに全3幕世界初演。感慨もひとしおでは。
金子 ついに、です! 第1幕、第2幕の上演時もそうでしたが、実際の装置が組まれた舞台で、衣裳をつけて演じた時点で初めて、「そうだったんだ!」と思うこともありました。リハーサルを重ねている間は振付のことで精一杯だったりしていましたから。「かぐや姫」全幕初演もきっと、舞台で演じて初めて実感がわくところがあるかもしれません。
私が感じるのは、全幕を通して、人間の愚かさや儚さが見えてくるような作品になっているということ。私自身も、「はっ!」と思うところがたくさんあります。誰も予測できないような展開といえるかもしれません。こうした規模の世界初演作品で重要な役柄を演じるのは初めてですから、影姫という役をもっと深めていきたいと思いますし、それができたときの達成感も大きいと思います。
金森穣振付「かぐや姫」第2幕より、影姫
photo: Shoko Matsuhashi
──同時に進められている「眠れる森の美女」の手応えは?
金子 基本的に古典のオーソドックスな「眠れる森の美女」ですから、子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」のオーロラ姫の経験が生きるかな、と思います。すでに振付や音楽が身体に入っているので、そのときのまま演じられるところも大きいけれど、体力的にはぐんと大変になりますね。
──オーロラ姫をどんな女の子と捉えていますか。
金子 姫なので、とにかくお転婆で気まま(笑)! 望むものは全て叶う女の子です。ただ今回の新制作では、洗礼の母であるリラの精の力を得て生きている、ということが明確に見えてくるのが特徴かと思います。とくに第2幕の森の場面ではそう感じられる場面があるんです。デジレ王子の口づけで目覚める場面も独特です。
──やはり、終幕のグラン・パ・ド・ドゥは大きな見どころになります。
金子 「くるみ割り人形」のグラン・パ・ド・ドゥも難しかったけれど、全然性質が違います。東京バレエ団"くるみ"の場合は、ダイナミックなリフトがいくつも出てきてすごく派手ですが、"眠り"のグランパ・ド・ドゥにその派手さはないんです。むしろ、ラインの美しさとか、こう、ただ足を出すだけのこの一歩とか、上半身の表現とかにこだわらないといけないという感覚です。自分のポテンシャルを試されるというか、もう、ごまかしが一切効かない。難しいです。
『眠れる森の美女』リハーサルより。
photo: Shoko Matsuhashi
──今回のパートナーは......。
金子 弾さん(柄本弾)です。実は、一緒に組んで踊るのは今回が初めて! 身長差が結構あるので、バレエ団にいる間に弾さんと踊ることは絶対にないと思っていました。踊ってみたら本当に頼りになるパートナーで、私、こんなに回れたんだ!と思うこともあります。自分では全く余計なことをしないでいいし、そこに居てほしいところに居てくれて──。素晴らしいパートナーです!
──オーロラ姫から見ると、柄本王子はどんな王子ですか?
金子 マリウス・プティパが振付けた時点では、デジレの存在感は薄くて、あまり色もない、という王子だったそうなんですよね。シャイだけどオーロラ姫に惹かれる。私と踊る弾さんは、いつもとちょっと違う雰囲気があるみたいで、「僕についておいで」という感じのお兄さんキャラ。少し色男の雰囲気かもしれません。私が子供っぽいからなのですが(笑)。
──子どもっぽい?
金子 そうなんです。でも、たとえばデジレの口づけで目覚めたあと、二人が親密に寄り添って歩くところなどは、あまりに子どもっぽいと「大丈夫!?」(笑)っていう印象になってしまうので、とくに目覚めのあとは、気品ある美しい姫でいなければと思っています。難しいだけに、やりがいがあります。
「眠れる森の美女」リハーサルより。パートナーは柄本 弾
photo: Shoko Matsuhashi
──「眠り」ならではご苦労みたいなものはありますか。
金子 膝から下の疲労がすごいです......。とくに第1幕。ローズ・アダージオに入るあたりまでは全然大丈夫で、跳ね回って若くて溌剌とした感じで踊っているのだけれど、途中からもう辛くなってきます。とても長いアダージオなので、最後に盛り上がって盛り上がって、からのバランス。もう、どんどん乳酸が溜まっていきます(笑)。
──そこをひたすら耐える?
金子 呼吸、ですね。深呼吸、ではないんですけれど、一息入れる瞬間を作るんです。ずっと全部頑張るのではなく、一呼吸。バランスを見せるところが多いので、立って、ちゃんと呼吸する、ということが大事なのかなって思います。呼吸が持つ人を見ていると、そういったポイントを作りながら、見せるときは見せているな、と感じます。
──古典全幕を踊るための体力が必要ですね。
金子 「くるみ」の時にもそうでしたが、寝る前にたっぷり時間をかけて身体のケアをすることも大事。疲労は踊った次の日まで残りますから。だからちゃんと湯船に浸かる。熱すぎないお湯で時間も短めに。あとご飯はたくさん食べます。炭水化物も肉も魚も! お酒は飲みません。本当は好きですが(笑)。それから、毎日のレッスンもすごく気を付けて取り組んでいます。
──レッスンでとくに気を付けているのはどんなところですか?
金子 いろいろありますが、たとえば、恥骨から頭のてっぺんまでの安定感。それから、強さ。見せ方。すべて意識するようにしています。いつもやっていなかったわけではないけれど、とくに"眠り"は基礎が大事。「クラスから意識して」と友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)にも言われていますが、レッスンの延長線上にある作品だと思います。
──では、会員の皆さまにメッセージを!
金子 "子ねむり"でオーロラを演じた時、いつか全幕で踊るチャンスがあったらいいな、と思っていましたが、ついに、です。あの時の経験は今回の全幕で存分に活かせると思うので、多くのお客さまに観ていただきたいなと思っています。
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昨年度退団した同期の上田実歩のお母様が作ってくださったもので、大好きなピンクでオーダーしたところ、とっても素敵に仕上げてくれました。これを付けるたび気分が上がりスイッチが入ります!(金子仁美)