
『眠れる森の美女』リラの精てい談スペシャル、後編は、新制作の舞台の見どころ、舞台への抱負など、盛りだくさんの内容でお届けします!
『眠れる森の美女』リラの精のリハーサルより。
左から政本絵美、榊優美枝、中島映理子
photo: Shoko Matsuhashi
伝統的な振付へのリスペクト
──新制作『眠れる森の美女』のリハーサルは、いよいよ最後の仕上げに突入していますね。初挑戦の中島さん、手応えはいかがですか。
中島映理子 リラの精のヴァリエーションについてはオーディションで踊る機会もあったので、少しだけ経験があるのですが、全幕となるとまた全然違いますよね。ストーリーがあって、最初から最後まで登場するわけですから、しっかりと存在感を出していきたいです。
中島映理子
──プロローグのリラの精のヴァリエーションは、友佳理さんは伝統的な振付に手を加えないでおきたいと言っていたそうですね。
政本絵美 もともとの振付に対する友佳理さんのリスペクトのあらわれですよね。第3幕のオーロラ姫とデジレ王子によるグラン・パ・ド・ドゥなどとともに、『子ねむり』で培ってきたことを土台に、それを崩さずやっていきたいともおっしゃっていました。でも、プロローグの妖精たちの踊りはかなり刷新されています。
榊優美枝 そうですね。私は最初に登場するカンディード(優しさ)のヴァリエーションを踊るのですが、以前のヴァージョンより、かなり難しくなっていると思います。これまで見たことのないような振付です。
政本 曲を聴いて思い浮かべる振付とは全然違います。
榊 実は、最初の妖精のヴァリエーションというのは子守唄なんだそうです。オーロラに向けて「静かに寝ていてね」って──。だからもとは単調な繰り返しばかりの踊りだったようなのですが、それがもっと面白く、見応えある踊りになっていると思います。とはいっても、見た目はそれほど派手な振付ではなく、少し玄人受けするような、"地味にムズい"、という感じでしょうか。
政本 誤魔化しがきかない踊りなんですよね。バレエをよくご存じの方が見たら、「大変なことをやっているな」と思われると思います。──そのいっぽうで、リラの精のヴァリエーションは全く手が加えられていないので、「皆はこんなに大変なことしているのに、私はコレでいいの?」って思ったりもするんです(笑)。
中島 見ていて安心する踊りなのかもしれませんね。
政本 5人の妖精が難しいことを次々やってのけて、最後の最後に「そうそう! コレ!」というのを持ってきたのだそうです。そう聞いて納得しました。
政本絵美
初日に向けてエンジン全開!
──一般的には各所にいろんなマイムが登場する作品ですが、今回はマイムについてはほとんど削ぎ落としたと聞いています。
榊 『子ねむり』では子供でもわかりやすいようにと、カラボスとの完全対決があって、そういう場面のマイムももう大袈裟なくらいに見せて、お客さんに伝わるように努めていました。今回、マイムはほとんどないに等しいくらいに少なくなっているので、だから余計に伝える難しさを感じています。
ただ、私たちリラの精だけではどれだけ頑張ってもダメで、舞台にいる人全員が演じきらないと伝わらないものだなと思っています。それは大人数で、それなりの時間をかけて表現する全幕だからこそできることで、『子ねむり』で同じことをしても成立しないことだと思います。
でも、それってまさに東京バレエ団が得意とするところなんですよね。『ドン・キホーテ』も、舞台に立ったら皆役者。今回も、まだそこまで作り込めてはいませんが、もっともっと見えてくると思います。
中島 確かに、場面ごとに抜いてリハーサルをするのと通し稽古をするのとでは、皆の気持ちの持っていき方が違ってきますよね。これまでは、この場面の立ち位置はとか、誰がどこから出てくるかとか、とにかくやるべきことが多すぎたので、まだまだのところもあるけれど──。
榊 いや、東京バレエ団はここからの本気度が違うんです!
政本 コロナ禍以降、こういった短期間のスパンで舞台にのぞむケースが増えましたよね。コロナ中の『ドン・キホーテ』では、2週間で初役のメルセデス、ドリアードの女王、ジプシーの娘を仕上げました。皆もそういうサイクルに慣れてきています。
──プロ、ですね!
中島 そういえば私も、ジゼルを初めて踊って、『子ドン・キ』(子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』)のキトリ初役もすぐでした。あの経験があったから、もう何でも大丈夫! とどこかで思っているところもあります。
榊 バレエ団はすでに『眠れる森の美女』モードになっていますから、エンジンかかっていますよね。
──中島さんはリラだけでなく、宝石のダイヤモンドとフロリナ王女も踊るのでエンジンはかなりかかっていると思います! ところで、フロリナを踊るときのパートナー(青い鳥)はどなたですか。
中島 生方隆之介くんです! 実は『子ねむり』のときのブルーバードも隆之介くんでしたし、最近一緒に組んで踊る機会が多いので、頼もしいですね。実は彼とは同い年なんです。
榊 バレエ団では年の近いカップルでパ・ド・ドゥを組むケースって少ないんです。男女のどちらかが先輩で、ということが多いので、珍しいですよね。
中島 しかも隆之介くんは群馬出身。私も群馬寄りの埼玉ですから、なんとなく親近感(笑)。話しやすいのはとてもいいことですね。
子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』より
青い鳥(生方隆之介)とフロリナ王女(中島映理子)
photo: Kiyonori Hasegawa
政本 二人が組むと、ビジュアルがもう美しいんですよ。
中島 むしろ彼、面白いんです(笑)。あと、今更なのですが、青い鳥は鳥ですけれど、フロリナは何なのかという話がありまして、念の為確認したら、フロリナは人間でした! 一瞬、フロリナも鳥だったかなという疑いがあったのですが(笑)、フロリナは姫。友佳理さんにも「あなたは王女なんだから鳥っぽくしないでいいの。こうやって耳に手を添えてさえずりを聞いてね」って言われました(笑)。
OG、OBに子供たちも登場!
──別の日に踊る宝石ダイヤモンドもリハーサルは順調ですか。
中島 そうですね。宝石の場面の最初に出てヴァリエーションを踊ります。宝石の場面は完全にオリジナルの振付になるので、見応えのある踊りになっていると思います。宝石の場面も、友佳理さんはかなり手を加えているので、ぜひ期待していただきたいです。
──それは楽しみです! どんな『眠り』になるのか、お客さまもきっとワクワクされていることと思います。
榊 つくっている最中すぎるので、その中にいるとどんな『眠り』になるのかわからないんですよね。
政本 面白い仕掛けがいくつもあって、舞台でそれがどう見えるのか、楽しみです。初めて聴く曲もあったり、照明が入ったらすごく綺麗になるだろうなと思えるところもあって、想像しながらリハーサルをしています。
榊 OGやOBも出演してくださるんですよね。
中島 花のワルツや童話のキャラクターの場面にはバレエ学校の子供たちも登場します。『ドン・キホーテ』にも子役の出演場面がありますが、今回も子供たちが活躍できる場が設けられて、彼らが実際にこの作品を経験する。そんなふうにして古典が踊り継がれていくのはすごくいいなって思います。
榊 東京バレエ団が、世代を超えて、総力をあげてお届けする舞台ですから、ぜひ多くの方に観ていただきたいです。
榊優美枝
──『眠り』は1890年にサンクトペテルブルで初演されたときも、一度に80人くらいの出演者が舞台にのっていたっていいますよね。
政本 古典はやはり、舞台の上にたくさん人がのっているのが好きだなって思います。それにしても、『白鳥の湖』、『くるみ割り人形』と新制作を経験させてもらって、今回の『眠れる森の美女』。こうして三大バレエすべての新制作に携わることができて、美しい舞台で踊らせてもらって、こんなに嬉しいことはないです。友佳理さんに感謝したいです。ぜひ多くのお客さまに楽しんでいただきたいと思っています。