
2023年最後の回は、今年も数々の作品でヒロインを演じたプリンシパルの秋山瑛の登場です。久しぶりの海外公演や『かぐや姫』全幕世界初演、『眠れる森の美女』新制作での主役などなど、2023年の舞台を振り返ります。
──2023年、どんな一年でしたか。
秋山 瑛 充実していました。久しぶりに海外ツアーにも行くことができたし、同じ役柄を何度も踊る機会をいただきました。5月の『ジゼル』はその後オーストラリア公演でも踊りましたし、『かぐや姫』の全幕 世界初演では新潟公演を含めると4回、新制作『眠れる森の美女』も学校公演と全国ツアーで4回。短い期間に何度も同じ役を舞台で踊らせていただけるというのは本当に幸せなことで......。それぞれ役を深めることができて良かったなと思います。
──『ジゼル』は今回が二度目の挑戦でした。
秋山 2021年に初めて踊ったときはもう手探り状態。「もっとこうしたかった」「こういう表現もできたな」という点があったので、今回はジゼルのキャラクター、表現についていろいろと試してみました。やはり、本番でしか感じられないこともあるんですよね。
──そこからの、オーストラリア公演。どんなツアーになりましたか。
秋山 濃密な時間でした。1日2公演の日もあって全11公演。自分が踊らない日も、毎日劇場でジゼルを感じていましたから、以前よりもずっと深くアプローチできたかと思います。指揮者のベンジャミン・ポープさんはいろいろとコンタクトをとってくださる方で、「今日はこうだったけれど、明日はこうしたほうが良さそうだね」と言ってくださることもありました。そうして日々更新されていって、1日として同じ舞台はないと感じました。
いちばんプレッシャーを感じたのは、初日の前日に行われたプレス向けのドレスリハーサル。記者や評論家の方などがいらして、その後評がすぐに出て、読んだお客さまが「じゃあ週末でも観に行こうか」という流れになる、と聞きました。すごく緊張しましたが、いい反応だったみたいで、ほっとしました。

2023年5月「ジゼル」第2幕より パートナーは秋元康臣 photo: Koujiro Yoshikawa
──10月に全幕世界初演した『かぐや姫』は、まずは4月に第2幕のみを上演しました。
秋山 4月の第2幕初演のときはロビンズの『イン・ザ・ナイト』、ノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』とのトリプルビルでした。かぐや姫のクリエーションと同時に、はじめて『スプリング・アンド・フォール』のメインのカップルを踊ったことも印象的でした。ハンブルク・バレエ団の公演で来日されていたノイマイヤーさんがリハーサルにいらしたことも!
──ノイマイヤーからはどんなアドバイスが?
秋山 たとえば、この振付にはこういう意図があるから、ただ振りをなぞるだけでなく、こういう気持ちで踊ってほしい、と。創ったご本人に言われることって、ものすごく重みがあります。ノイマイヤー作品は大好きなので、すごい経験でした。
──ハンブルク・バレエ団の日本公演は観ることができましたか?
秋山 観ました! ダンサーたちのあのエネルギーといったら!! ハンブルクのダンサーたちが本当に楽しそうに踊っているのを観て、エネルギーをもらって本当に幸せな気持ちになったし、私も舞台ではそうありたいなと思いましたね。
──『かぐや姫』、『眠れる森の美女』と、続けざまに新制作の舞台に主演。なかなか経験できないことだったかと思いますが。
秋山 新しく全幕作品を創っていくという経験は、どんなに素晴らしいダンサーでも、そうそうあるわけではなくて、年齢、そのときのポジション、つまりタイミング次第ですよね。私はたまたまそれに恵まれて、すごい経験をさせてもらいました。しかも、『かぐや姫』全幕世界初演のあと3週間で新制作『眠れる森の美女』の初日。そんなこと人生においてなかなかないことだって友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)も言われていて。ダンサーだけでなく、スタッフさんたちも本当に大変だったはずですし、皆でやり遂げた総力戦だったと思います。

2023年10月 世界初演 金森穣振付「かぐや姫」第1幕より photo: Shoko Matsuhashi
──いずれも初演を終えて、どんな感想を持たれましたか。
秋山 今後『かぐや姫』が再演されるとしたら、もっと他の人が演じる『かぐや姫』も見てみたいと思いました。自分のかぐやが絶対に正しかったとは思わないし、多分、これが正解というものもない。何がいい、何が悪いではなくて、それを探し続けて、これからも私は踊っていくし、皆がどんどん踊り継いでいくことで見えてくるものもあると感じています。
『眠れる森の美女』については、ずっと全体像が見えない中でリハーサルを重ねてきました。本当に最後の最後まで、たとえば第2幕でオーロラが王子のキスで目覚める場面のパ・ド・ドゥなどは、とても大事な場面だけに、ギリギリまで振付が決まりませんでした。でも、演じる私自身にとっても、気持ちの整理というか、物語の繋がりを感じられる演出だったと思いますし、完成してみたらすごくいいなって思いました。
──オーロラはずっとカツラ着用でしたね。
秋山 最初は、「いや、ちょっとコレは厳しいです」って思っていたんです(笑)。スタジオで被ったときは──。でも劇場に入り、あのセットの中に入ってみたら、不思議としっくりくるんですよね。もちろん、ヘアメイクさんが頭にすごくフィットするように被せてくれたというのもあります。

2023年11月新制作「眠れる森の美女」第3幕より パートナーは宮川新大 photo: Shoko Matsuhashi
──そして締めくくりは『くるみ割り人形』! マーシャを踊るのは何年目ですか。
秋山 新制作のときから踊っているので、もう5年目! あれが古典全幕デビューでした。初回以来ずっと(宮川)新大くんと組んでいますが、何度かリハーサルをしただけでは得られない繋がりのようなものを感じます。音楽も、「あ、こんな音もあったんだ」と、新鮮に聞こえてくることも。余裕がないと自分のことだけで一生懸命になってしまいますが、回を重ねることで少しずつ視野が広がってきたというか、聞こえるもの、見えるものが増えてきました。
──今年も『くるみ割り人形』で締めくくり。来年はどんな年にしたいですか。
秋山 いや、締めくくりだけでなくて、新年のスタートも『くるみ』です(笑)。1月6日に大津公演がありますから! 年をまたいでの『くるみ』は初めてのパターン。来年は創立60周年ですし、久しぶりにベジャールの『ザ・カブキ』もあってすごく楽しみにしているんです。再来年の上演になりますが、60周年記念シリーズの一つとしてベジャールの『くるみ割り人形』も上演します。本当に大好きな作品です。
なので、来年、再来年も皆さんにぜひ応援していいただけたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。あ、もうすでに会員の皆さんにお届けする年賀状のサインもしました!

2019年初演「くるみ割り人形」第2幕より パートナーは宮川新大 photo: Kiyonori Hasegawa
──会員の皆さまにはぜひ楽しみにしていただきたいですね。
秋山 なのですが、私の年賀状......、サインの他に一言メッセージを書こうとしたら、ちょっと目を離した隙に池本祥真くんにイタズラ書きされてしまったのが紛れています......! 自分で書いたと思われたら恥ずかしいのでバラしてしまいますが(笑)。どうぞお楽しみに。