
2024年最初のブログは、現在、岡崎隼也とともにChoreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)のためのクラウドファンディングの活動をリードしているブラウリオ・アルバレス。3月の〈上野水香オン・ステージ〉にも上野水香、そして厚地康雄さん(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)とともに登場します!

──少し遅れましたが、新年明けましておめでとうございます! 年末年始はゆっくりできましたか。
ブラウリオ・アルバレス 年をまたいでの『くるみ割り人形』のツアーもありましたから、家でゆっくりしていました。
──いまのヴァージョンの『くるみ』になって5年目。振付のお手伝いをされたねずみの戦いやアラビアの場面は、どんな思いで取り組みましたか。
アルバレス どんどん楽しくなってきました! たとえばねずみについてですが、あの場面がもっと楽しくなるためには、それぞれがその場で感じて動くことが大事。もちろん全体のアイデアとして、これは必ず守ってほしいというところはたくさんあるけれど、今回は、ダンサーそれぞれが生み出す部分がより多くなったと思います。始まる前によく、ダンサーたちと集まって小さいミーティングをするのですが、今回は、「こうやってほしい」というよりもむしろ「それぞれ、自分がどうやりたいか」というところから入っていきました。舞台には、自分からいっぱい生み出すねずみたちがいました(笑)!

──自身も踊っているアラビアについては?
アルバレス アラビアの振付を考えたとき、アラビアの民族舞踊についていろいろと調べたけれど、よくわからないところもありました。去年、僕は大学院で勉強を始めたのですが、そこでアフガニスタンの方と知り合って、アラビアの踊りについて話をしたんです。アラビアの女性の踊りは古くからあって、宗教的な理由から女性だけの場で踊られて、たとえば、母親が自分の息子の結婚相手を探す場でもあったそうなんです。女性たちが、普段は出すことのできない自分を表現するという場だった。それをヨーロッパの人たちが見ると、その性質がちょっと変わってきてしまったというんです。ショーの要素の強いベリーダンスもそうですね。それで、『くるみ割り人形』のアラビアも、もっと深く、見直してみないといけないなと思ったんです。
──それは今回の舞台で反映できましたか。
アルバレス コール・ドのダンサーたちにも説明しました。この踊りは、ただ綺麗に踊るだけではなくて、皆が物語の中の人物として、個人個人の本当の気持ちを表現する場だと。ステップを変えたわけではなくて、どういうふうに向き合うか、ということです。皆、本当に綺麗だったと思います。僕は今回、初めて平木菜子ちゃんと組んで踊りました。元ハンブルク・バレエ団の二人で踊ることができて、とても楽しかったですね!
バレエに取り組む中で、いろんな文化のこと、歴史のことをもっと見直さないといけないし、改めて、何を伝えようとするか、本当は何が正しいのかということも、もう一度考え直すことが必要と感じました。11月の新制作『眠れる森の美女』でも、同じようなことを体験しました。
『くるみ割り人形』より、アラビア。平木菜子と
photo: Shoko Matsuhashi
──そう! 『眠り』でも振付指導のお手伝いをされていました。
アルバレス 一番勉強になったのは、第3幕の最初のほうのポロネーズと、最後のほうのマズルカです。友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)の頭の中には、すでにこう振付けたいというものがしっかりとあったけれど、僕はそれを皆に伝える仕事をしました。それで、民族舞踊がもとになっているポロネーズやマズルカのようなキャラクターダンスについては、その民族舞踊が生まれたところのことも、ちゃんと知っておかなければいけないと思って、いろいろと調べました。たとえば、ポロネーズの男性の立ち方や、必ず女性をリードするといった決まりがあって、そこには理想的な貴族の姿が反映されている。
──それを皆で共有したのですね。
アルバレス 皆に伝えました。ゆっくり説明する時間はあまりなかったけれど。今回上演した『眠り』は、blueprint(青写真)という面もあって、これからもっと良くなっていくと思います。新しい『眠り』のその最初の上演に関わることができてとても良かったです!
新制作『眠れる森の美女』第3幕よりポロネーズ
photo: Shoko Matsuhashi
──そんな中でもう一つ、Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)のスタジオ・パフォーマンス実現のためのクラウドファンディングにも挑戦しています。毎年振付作品を発表している岡崎隼也さんといろいろと協力し合ってのチャレンジですが、どんな思いで取り組んでいるのですか。
アルバレス 予算の面から、このChoreographic Projectを続けるためには、クラウドファンディングに挑戦するしかない、と思いました。僕たちは、新しい踊りを生み出すことができなければと思います。それは、ダンサーたちのモチベーションにもなるし、バレエ団のメインの公演のリハーサルを手伝う人を育てることにもつながる。
──Instagramも頑張っているそうですね。
アルバレス Choreographic Projectのアカウントでいろいろアピールしています! 隼也さんと菜子ちゃんとで役割分担して、毎日発信しているんですよ。ぜひ見てみてください!
──頑張っていますね! 2017年にスタートして今年でなんと8年目。数々の作品を発表してきましたが、とくに思い出深い作品は?
アルバレス 全部(笑)! でもとくに最近思い返すのが、2020年に創作した『Hands』。AIがもっと社会に中に入ってきたらどうなるのかなということについて触れていて、また改めて取り組みたいと思っています。『アダージェット』(2018年)も楽しかった! あのときは、自分の思いをどうやって皆に伝えるかということが大きな課題で、いっぱい考えさせられました。昨年発表した『OMIAI』もすごく楽しかった。だいたいの形を決めておいて、ダンサーたちに自分の感情を表現してもらうようにするというやり方でした。
ブラウリオ・アルバレス振付『Hands』
photo: Shoko Matsuhashi

ブラウリオ・アルバレス振付『OMIAI』
photo: Koujiro Yoshikawa
──さらに、3月の〈上野水香オン・ステージ〉では、振付作品『Nocturne for Three』を上演し、自身も出演されます。どんな作品なのですか。
アルバレス 2022年の年末、神奈川県民ホールでの〈ファンタスティック・ガラ・コンサート〉で上演した作品です。そのときも、水香さんと厚地康雄さんと僕とで踊りました。今回の上演にむけて、またいろいろ新たに考えたいところもあります。ショパンのノクターンは本当にきれいな曲です。もとはピアノ曲ですが、この作品で用いたのはピアノとヴィオリンによるヴァージョンです。
──ゲストの厚地さんはどんなダンサーですか。
アルバレス 大きいダンサーです。もちろん踊りが、です(笑)。2023年の〈ファンタスティック・ガラ・コンサート〉では、黒鳥のパ・ド・トロワをこの3人で踊ったのですが、王子の厚地さんのほうがロットバルトの僕より背が高いので、すごく頑張りました!
──水香さんともよく一緒に踊っていますね。
アルバレス 昨年の〈上野水香オン・ステージ〉では、怪我で降板されたマルセロ・ゴメスさんのかわりに、急遽ヌレエフ振付『シンデレラ』のパ・ド・ドゥを踊りました。最初は水香さんの練習のためのパートナーだったのですが、突然のことでもうドキドキ。でもすごくいい経験になりました。これまでも、水香さんのために振付けた作品を大きな舞台で上演する機会もありましたし、水香さんはとても大事な存在です。
2023年2月の〈上野水香オン・ステージ〉より。
上野水香と踊ったヌレエフ振付『シンレデラ』
photo: Shoko Matsuhashi
──今年はさらに充実した年になるのでは?
アルバレス ダンサーとしてだけでなく、振付家として、また、大学院でビジネスの勉強をしているので、そういう視点からも、バレエ団や踊りに関わるプロジェクトがどうしたらうまくいくか、ということに取り組んでいきたいです。
──大学院の勉強は大きなチャレンジですね。
アルバレス 最近は哲学の課題でヘーゲルについてのレポートを書きました。リーダーになる人には哲学が必要。でも、とても難しいです(笑)。
