
1年半ぶりのブログ登場となる後藤健太朗。昨年はさまざまな新しい役柄に挑戦、3月の〈上野水香オン・ステージ〉でも大活躍の予感です! 舞台への思いなどをたっぷりと語ります。

──この1年半、さまざまなチャレンジに取り組んできましたね。
後藤健太朗 いろいろありました。一番大きかったのはエスパーダですね。昨年の夏の『子ドン・キ』(子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』)ツアーの市川公演で初めて踊りました。その後〈めぐろバレエ祭り〉の公演でも踊らせてもらいました。
──横浜市の学校公演ヴァージョン(関内バージョン、いわゆる『孫ドン・キ』)でも?
後藤 『孫ドン・キ』はもうフル稼働、でした。1日2回公演なのですが、エスパーダを2回続けて踊って、次の日サンチョ・パンサを2回、翌日にまたエスパーダを2回やって次はサンチョを2回、というパターンです。
──エスパーダに決まったときはどんな気持ちでしたか。
後藤 本当に嬉しかったですね。僕のキャラからはかけ離れていますし(笑)、男性なら誰でも憧れる役ですから。実は、配役してもらう前からエスパーダ役のアンダーとして練習はしていて、友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)にヴァリエーションを見てもらい、アドバイスももらっていたんです。僕は演じている中ですぐに感情を出してしまうほうなのですが、エスパーダではそれは出してはいけない。「"能面"でいきなさい」と!

子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』より、エスパーダ
photo: Shoko Matsuhashi
──能面!
後藤 内側にはすごく熱いものがあるけれど、それが大袈裟にではなく自然に出てくるのがエスパーダなのだそうです。僕はわりと表情で表現してしまう部分が多いので、これはちょっと難しく感じましたね。(柄本)弾さんにも指導していただいています。エスパーダってもう、生まれたときからカッコいい人だと。いつも皆からちやほやされたり「カッコいいー!」って言われて当たり前。そういう人ってカッコつけたりはしないんですよね。僕自身はそうなったことがないからわからなくて......。
──そうでしょうか......?
後藤 はい(笑)。だからついついカッコつけてしまうんです。苦戦しました。夏に2回、その後『孫ドン・キ』を経験して、少し、落とし込めてきた部分もあるのですが、もう少し何か......です。
子どものためのバレエ『ドン・キホーテ』より、サンチョ・パンサ
photo: Koujiro Yoshikawa
──エスパーダとサンチョ・パンサ。両極端ですよね。
後藤 友佳理さんにも、「史上初」じゃないかと言われました(笑)。「聞いたこともないし、見たこともない」と。自信はまだ、ないですね。僕が出せるものは出すけれど、サンチョを演じている僕とは全くの別人みたいに見せられたらとは思います。
──では、エスパーダの見せ場はココ!というところを教えてください。
後藤 広場の登場シーンは印象的ですよね。劇場のスペースにもよるのですが、『子ドン・キ』では階段の上から闘牛士を引き連れて現れます。その中にはブラウさん(ブラウリオ・アルバレス)や安村圭太さんもいるんです。お二人はエスパーダも踊っているので、もう、負けないようにしないと(笑)。
──女の子たちも「きゃーっ」となりますね。
後藤 でもそれには、あまり応えません(笑)。僕としてはついつい絡みたくなってしまいますが、我関せず。いつものことだし、という感じなんです。
そのあとのヴァリエーションもまた、難しいですね。このヴァリエーションは『本ドン・キ』(全幕)ヴァージョンと同じ振付です。
──どんなところが難しく感じられますか。
後藤 エスパーダは身体をこう、ぐぐっと絞るのが特徴的。身体が痛くなりますね。友佳理さんがよくおっしゃるのは、闘牛士の上着にはすごく立派な刺繍が施してあって、それを見せつけて、どこから何がきても1ミリも隙がない、という状態なんだそうです。あの刺繍は闘牛士の誇りなんですよね。
その後ジプシーの場面ではガラリと雰囲気を変えて楽しく弾ける感じですが、終盤のキトリとバジルの結婚式の場面のファンダンゴになると、今度はよりパシッと、という流れになります。
──ファンダンゴはコール・ドに囲まれて、真ん中で一人で踊りますね。
後藤 『子ドン・キ』ではそうですが、本来はメルセデスとの二人の踊りです。3月の〈上野水香オン・ステージ〉で上演する『ドン・キホーテ』抜粋は『本ドン・キ』ヴァージョンなので、僕はついにメルセデスと一緒にファンダンゴを踊ることになります! これまで、一人のときは程度思うようにできたかなと感じていたのですが、メルセデスと二人となると、それはそれでとても難しく。少しずつ、パートナーとなる予定の二瓶加奈子さんと自習していますが、めちゃくちゃ先輩なので引っ張っていただいています。が、エスパーダは恐縮するような人ではないですから、舞台ではそんなふうには見せられない(笑)。結婚式の場面は主役カップルのグランパ・ド・ドゥもありますから、ぜひ楽しんでいただきたいですね。
子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』より、ファンダンゴ
photo: Shoko Matsuhashi
──昨年はほかにもいろんな役に挑戦した怒涛の1年でしたよね。たとえば『ジゼル』では?
後藤 1幕のパ・ド・ユイットに初挑戦しました。昨年は新作が続いた怒涛の年でしたから、もう、何年も前のような気もします。ユイットは楽しく取り組むことができました。入団当初、先輩たちが踊っているのを見て、「スゴいなー」と思っていた役です。
──さらに、秋の『眠れる森の美女』新制作では、長靴を履いた猫!
後藤 『子ねむり』(子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』)でも猫を踊っているのですが、振付はかなり変わりましたね。大まかな構成は一緒でしたが、より複雑に、より活発な猫になりました。友佳理さんも「もっと暴れて!」と(笑)。僕の中では、貴族に飼われている猫という設定。"いいところの猫"という感じです。
──涌田美紀さんの白い猫との楽しげなやりとりが印象的でした。
後藤 ただもう「好き好きー!」っと白い猫を追いかけて、軽くあしらわれる(笑)。美紀さんとずっと話し合いながらつくっていきました。もちろん決められた踊りはあるけれど、「変えていい」と言われていましたから、リハーサルのたびに「あそこはこう?」「もっとこう?」とアイデアを出し合いながら進めていたんです。本番も毎回、違っていましたし、そうやって任せてもらえてすごくよかったですね。
でも、以前のブログでもお話したのですが、猫は一昨年亡くなった飯田(宗孝)先生が踊られていた役。指導もしていただいていましたから、「もっと、もっと大きく!」とずっと言われていた記憶がよみがえってきました。振付をはじめ変わった部分はいろいろあるけれど、でも、やっぱり飯田先生のことを思いながら取り組んでいましたね。実際に見ていただいたら、「自分で踊っていない振りだから、わしはわからん!」なんて言われそうですが(笑)。
『眠れる森の美女』第3幕より、長靴を履いた猫。白い猫は涌田美紀
photo: Shoko Matsuhashi
──4月には『白鳥の湖』および初めての『白鳥の湖』が控えていますが、そこでも新しい挑戦が?
後藤 どうでしょうか。あればいいですね。楽しみです! 振り返ると、しゃべったり、考えたりしながらつくっていく役が多いように思いますが、僕はそうやって考えることが好きなのかもしれません。そういえば、先日演劇を観に行きました。無名塾の舞台です。舞台を中心に活動している知人が出演していたのですが、演じていたのが『子ドン・キ』のサンチョ・パンサのように物語を案内していく役だったんです。ふとした時の間とか、話すときの抑揚とか、すごく勉強になりました。
──いろんな経験をすることが大事なんですね。
後藤 まだ全然駆け出しですけれど、キャラクターの役をたくさん経験させてもらった中で、たとえばエスパーダのような立ち姿で見せる役や、純粋に踊りで見せる役柄に取り組むのは、ある意味、自分に与えられた試練なのかなと勝手に解釈しています。キャラククターだけでなく、ノーブルに踊れるダンサーでもある。そこを目指してきたい。少しずつ、自信を持てるようになっていければいいですね。
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少し遅めの冬休みを利用して、ベトナムに行ってきました。リフレッシュ、できました! 写真はお土産に買った、ベトナムのサンドウィッチ、バインミーのTシャツ。ちょっと小さくて、ピチピチです(笑)。(後藤健太朗)