
昨年11月の新制作『眠れる森の美女』でリラの精という大役を務めたソリストの榊優美枝。来月の『白鳥の湖』公演では主役に初挑戦! そんな彼女に、現在の心境を聞きました!
──昨年11月の『眠れる森の美女』新制作は、ご自身にとってどんな舞台でしたか。
榊優美枝 楽しかったですね。リラは学校公演を含めて4回ほど踊り、他の役を踊った日もありましたから、最後は「もう終わっちゃうんだ」と寂しくなりました。とくに最終日はあまり体調が良くなくてフラフラだったのですが、逆に力が抜けて、声を発することはないけれど、自分の中から自然とセリフが出てくるように、頭で考えず、気持ちで踊ることができたように思います。
『眠れる森の美女』よりリラの精 photo: Shoko Matsuhashi
──公演数が多いというのは、ダンサーにとってどんな影響が?
榊 実際に舞台で踊って、本番の映像を自分で見て、そこで初めてわかるというところが、実はたくさんあります。公演数が多いと、映像で自分の踊りを客観的に見ることができて、次の舞台に反映できる。すごく勉強になりました。皆もそう感じていると思います。
いままでいろんな役を踊らせてもらってきましたが、今回はInstagramに「すごく良かった」とたくさんの方が言葉を寄せてくださいました。いままでそんなことってなかったので、特別感があります。
『眠れる森の美女』プロローグより。中央が榊
photo: Shoko Matsuhashi
──いまは『白鳥の湖』のリハーサルに専念中かと思いますが、配役はいつ聞かされたのですか。
榊 『眠り』のツアーの最後、堺公演の直後でしたね。終演直後だったのでスイッチがキレて意識朦朧(笑)、ふわふわした感じでいるときに友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)に言われたので、「これは冗談かな?」って思っていました。『白鳥』で主役を演じることは夢、ではありましたが、あまりにも夢すぎて現実味がないんですよね。まさか本当にやることになるとは、って。もちろん嬉しく思いましたし、「頑張ります」と言いました。言いましたが、本当にできるかなという不安はありました。
──全幕の主役は初めて?
榊 全幕どころか真ん中を踊ること自体初めてです。子どものためのバレエのシリーズでも主役は経験していませんし、ガラ公演でのパ・ド・ドゥ作品も踊っていません。しかも東京バレエ団の『白鳥の湖』ですから、皆を引っ張る力とか、2幕、3幕、4幕と物語を繋いでいく力も求められます。失敗したらどうしようとか、そういうことではなくて、伝わらなかったら全幕の意味がない。そこがすごく心配──、だったんですけど、パートナーは(柄本)弾さんですし、リハーサルをしながら客観的に見ていただいて、引っ張っていってもらっています。
──リハーサルはどんなところから入っていったのですか。
榊 とりあえず、2幕の登場シーンからですね。やっぱりここが一番怖いというか、主役が一発目にたった一人で出てきて、暗くて静かで、というのは他にはないですよね。3幕も徐々に取り組んでいますが、ブルメイステル版の3幕は本当に楽しくって大好きです! これまで花嫁候補、マズルカのソリストとコール・ドを踊りましたが、本当に楽しかったですね。
『白鳥の湖』第3幕より。右が花嫁候補を演じる榊
photo: Shoko Matsuhashi
──今度はオディールです!
榊 課題が多すぎます......。オディールだからといって強くやろうとしすぎて、足先や手の運びが雑になってしまわないように気をつけなければ。基本的に、動きの繋がりの中でその役が見えてくるように振付がされている、って思っていて、たとえば、"逃げたい"という思いがあるからこそ手がこう動くとか──それをいま、1個1個噛み砕いているところです。だって、オデットとオディールとでは考えていることが全く違うわけですから、その気持ちも振りも違う。もちろん音楽も。だから、振付にしっかり向き合っていくことで、自ずと見えてくるものがあると考えています。ただ、どんなにオディールが強い女性だとしても、強いだけでは王子は落ちてくれないでしょう? やっぱり王子が惹きつけられるのは、強い中にも女性としての魅力があるからだし、それもオデットに似せて出てくるわけだから、オデットはもっともっと魅力的じゃなきゃダメだし──難しいです......。
でもそれは、もう少し──通しでリハーサルして、皆の中に入って完成させていきます。いまはその準備段階ですね。
──ロットバルトとの息の合った演技も見どころですね。
榊 ロットバルトは(安村)圭太さんです。圭太さんとはこれまでもたびたび一緒に組んで踊ってきたので安心です。前回の『くるみ割り人形』のアラビアや、花のワルツでも組んだことがあります。『子ドン・キ』の結婚式の場面のファンダンゴでも!
──『白鳥』のことで頭がいっぱいですね。スタジオを出ても、ですか?
榊 本当は、バレエ団のことはバレエ団で済ませて帰りたいほうですが、それではもう足りなくて、ふとしたときに思い返して、書き出したりしています。今日注意されたことが翌日のリハーサルで直っていなかったら次に進めませんから。でも、私って本当に不器用で、すぐにできないし、忘れてしまう。だから、家に帰る途中でコーヒー店に寄って、ひたすらノートに書いて、スマホで写メ撮って──。
──? 最初からスマホに入力すればよいのでは?
榊 って思いますよね(笑)! スマホの入力だと入ってこないんですよ。学校の勉強もそうでした。ちゃんと頭の中で唱えて書くと、だいたい頭の中に入ってくるので、それを画像にしてリハーサル前にスマホで改めて見直します。頭の整理をしないで動いても意味ないし、でも結局は身体を動かさないと意味ないし──もう、時間はいくらあっても足りないだろうなって思います。
──身体も大変ですが、頭の中も大変。リラックスできる時間はありますか。
榊 無理やり作って、好きなアニメのゲームアプリをやっています。バレエとは全く縁遠いオタクの一面もあって(笑)。「呪術廻戦」とか「ハイキュー!!」が好きなんですが、最近は「劇場版 ハイキュー!!」に通い詰めました。元気が出るんです。"バレー違い"だけど(笑)、彼らは試合で、私は舞台で、でもやっぱり1回きり。勝つか負けるか、そこにかける思いみたいなものを見ると、なんか胸が熱くなって、「来週から私も頑張るか!」って思います。
──『白鳥』のあとはクランコ版『ロミオとジュリエット』。楽しみにされているそうですね。
榊 前回のバレエ団初演のときは、怪我の影響で、舞踏会の場の貴族として舞台に立つのがギリギリでした。心残りがあるので、あらためて万全の状態でのぞみたいですね。あとは10月の『ザ・カブキ』と来年2月のモーリス・ベジャールの『くるみ割り人形』。前回のベジャールの『くるみ』ではタキシードの女を演じました。女性の役がたくさんあるわけではないので、自分が何をやりたいというより、バレエ団でこの作品を上演すること自体がいいなって思いますし、リハーサルを見るのもすごく好きな作品。『くるみ』は、小林十市さんが猫を踊っている映像を繰り返し見ましたし、バレエ団のダンサーで、この人はこの役やったら絶対にいいなとか、でもこっちの役は誰がいいんだろう?とか、脳内で勝手にキャスティングして楽しんでいました(笑)。
ベジャールの『くるみ割り人形』、2017年の上演より。
猫のフェリックス役の宮川新大の後ろが、"タキシードの女"の榊。
photo: Kiyonori Hasegawa
──いずれも東京バレエ団60周年記念のラインナップです!
榊 私が入団したのが50周年の年でしたから、もう10年! 辛いときもないわけではなかったけれど、バレエが好きだったことを忘れては思い出す、みたいな感じでした。どちらかというと行き当たりばったりで(笑)、先のことは全然考えられないほうですが、この先も頑張りますので、ぜひ温かい目で見守っていただけたら嬉しいです。
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友佳理さんに注意されたことを書いているノートです。超殴り書きなので、内容は私にしかわかりません(笑)! すごく細かいことまでいろいろ書いていますが、簡単そうに見えるのにバレエって難しいと、改めて感じています。(榊優美枝)