
今週末、東京バレエ団のスタジオで開催される、スタジオ・パフォーマンス〈Choreographic Project 2024〉。振付者として初参加する富田翔子(とみた かのこ)に、新しい挑戦について、プロジェクトへの思い、作品に込めた思いを聞きました。
──ブログは初登場ですね。
富田翔子 初めまして! 2020年に入団して、いま5年目です。初舞台はその年に行われた〈Choreographic Project〉での、木村和夫さん振付『RISE』でした。
──東京バレエ学校出身だそうですが、当初から東京バレエ団を目指していたのですか。
富田 地元の教室から別の教室に移ることになって、どこに行こうと考えていたとき、友達が自宅から近い東京バレエ学校に決めたと聞いて、「私も!」と(笑)。当時はまだ、プロになりたいという思いは漠然としたものでした。
初舞台となった〈Choreographic Project〉、木村和夫振付『RISE』。
photo: Shoko Matsuhashi
──東京バレエ団での最初のコール・ド・バレエ体験は?
富田 最初は『ドン・キホーテ』でした。"夢の場"ではもう、あせあせしてしまって(笑)、何をどうしたらいいんだろう!という感じでした。いまこうして『ジゼル』や『白鳥の湖』といった"白物"に取り組めるようになるなんて、当時から考えればすごいことだなと思います。とくに好きな作品は『ジゼル』。東京バレエ団のウィリたちは、冷たすぎず、温かみがあるような気がしてすごく好きですね。コール・ドなのだけれど、自分を消さないで、感情を入れながら踊ることができます。
『ジゼル』第2幕より photo: Koujiro Yoshikawa
──一人ひとり、個性を発揮することが求められるのですね。
富田 でも、揃えることも大事。最初は全然できなくて、周りの先輩方にもたくさん迷惑をかけてしまいました。申し訳ないという気持ちでさらに焦って空回り──。前回の『ジゼル』では初めてコール・ド最前列の真ん中で踊らせてもらったのですが、ひたすら数をこなしていくしかないんだな、と感じています。
──そして今度はまた新しい挑戦。〈Choreographic Project〉で振付にチャレンジしようと思ったきっかけは?
富田 現代作品を踊るのはすごく好きでしたし、(岡崎)隼也さんやブラウさん(ブラウリオ・アルバレス)の作品に参加して、表現することがもっと好きになっていました。そんな中での前回の〈Choreographic Project〉の公演、その終演後のことでしたが、ふと、「振付するのって素敵だな」って思ったんです。先輩にそれを打ち明けたら、「やってみなよ!」と背中を押してくれたんです。
──作品の構想はすでにあったのですか。
富田 実は私、いま通信制の大学で学んでいるのですが、講義の中で子どもの権利とか動物の権利とか、権利という言葉に何か縁があると感じることがありました。振付をしようと思っていた時期でしたから、そこから普段自分が考えていることにいろいろ結びついて──そんなところからスタートしました。
──そこからどのようにして作品を具体化していったのですが。
富田 まず、ダンサーは男女二人にしようと。それから、自分の伝えたい思いに合った音楽を見つけたいと、いろんな音楽をたくさん聴きました。音楽はあまり詳しくないのですが、クラシックだけでなくジャズも聴いて、そこで奇跡的に出会えたのがバッハのフランス組曲第5番でした。何回も何回もこの音楽を聴き続けて、実際に自分で動いてみて、こうかな、これはちょっと違うな、ということを重ねていきました。振付ってこんなに難しいことなんだと実感しましたね。
──ダンサーはどなたですか。
富田 長谷川琴音さんと生方隆之介さんです。最初のリハーサルで、この作品にどんな思いを込めたいか、どんな雰囲気で踊ってほしいかをお伝えしました。琴音さんには「すごく翔子らしい!」と言っていただいて──どうやら私っぽいそうです(笑)。リハーサルの動画を見た別の先輩からは、これまで隼也さん、ブラウさんと一緒にやってきた歴史が見えるという指摘も! まだまだではありますが、学ぶ機会をもらっていたんだなと感じました。
リハーサル中の富田。右は生方隆之介。
──タイトルは『ma vie』。
富田 私の人生、という意味です。琴音さんは子ども、隆之介さんは大人という設定。男女二人の踊りは恋愛の表現になりがちですが、今回はそうではなくて、別のところにいる二人の人間が、少しずつ関わり合って──という作品です。伝えたいことが全部は伝わらないかもしれないけれど、逆に違う見方をしていただけたとしたら、それは発見になるし、勉強にもなります。でも、空気感だけでも、何か幸せな気持ちになってもらえたらと思います。欲を言えば、辛かったり、何か自分を押し殺してしまっていたりする人に刺さる作品になればいいなと思います。
〈Choreographic Project〉リハーサルより、長谷川琴音。
──自分の作品を発表するのは、どうですか。緊張しますか。
富田 緊張というより楽しみ、です。実はブラウさんと(井福)俊太郎さんの作品に出演もするので、結構あっぷあっぷなんです(笑)! 少し欲張りすぎてしまいましたが、このプログラムはダンサーとしての私にとって、とても大事なものなんです。『ジゼル』のコール・ドを踊れるのは素晴らしいことですが、〈Choreographic Project〉では、自分の感情を動きにそのまま乗せて伝えられる。ダンサーとしても参加したかったんです。
──しかも、〈Choreographic Project〉のTシャツやトートバッグのビジュアルも手掛けられたとか?
富田 隼也さんの「誰かお願いできませんか」という声に応えた形です。振付だけでなく事務的な作業までしてらした隼也さん、ブラウさんの姿を見ていたので、私も何かしたかったんです。
富田がビジュアルを手がけたトートバッグとTシャツ。
──絵を描くのも好きだったのですね。
富田 絵を見るのは好きですし、描くことも好きなのですが、普段から描いているというわけではないんです。このプロジェクトを大切にしていきたいなという思いがあったので、これならできるかな、と。
──ここでも新しい挑戦!
富田 チャレンジでした! どういうアプリを使えばいいのかわからなかったので、画用紙に水彩絵の具で描いています。クリエーションしているときに生じるものと、それらが合わさった形、といったイメージです。
──振付は今後も挑戦していく予定ですか。
富田 はい、今後も挑戦したいと思っています! そしてクラシックももっと極めていきたいです。身体の見せ方、使い方も改善していきたいし、コンテンポラリーや創作で感じたこと、表現することを、クラシックに繋げていけたらいいなと思っています。もちろん、楽しい気持ち、純粋に踊ることを楽しむ心は、忘れないでいたいですね。