
今回は、海外のバレエ団で活動後、6月に東京バレエ団に再入団を果たした南江祐生の登場です。海外でのバレエ団生活、東京バレエ団への復帰、そして今週末に控えた王子役デビューについてなど、盛りだくさんに語ります!
──まずは、お帰りなさい! 昨年3月に東京バレエ団を退団したあと、カザフスタンのバレエ団で活動されていたそうですね。どんな日々を過ごされたのですか。
南江祐生 9月からアスタナ・バレエ劇場というところで踊っていました。コンテンポラリーの作品で主役を任せてもらったり、バレエ団のオリジナル作品をいろいろと踊らせていただいたりしていました。設立から12年という若いカンパニーで、最初は女性だけのバレエ団だったそうなんです。カザフスタンの民族舞踊のレパートリーもあり、間近で見ることができて勉強になりました。
カザフスタンの人は皆さんとてもオープン。実は、建築家の黒川紀章さんがアスタナの都市計画を手がけられていて、日本に対してすごくいい印象を持ってくれています。アスタナは多分皆さんが思っている以上にずっと大都会なんですよ。食べ物(笑)!? 美味しかったです! 中央アジアの騎馬民族の文化なので、よく馬肉を食べるんです。
──ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学されていたので、ロシア語は学ばれていましたよね。カザフタサンではロシア語を?
南江 旧ソ連ですからロシア語は公用語で、バレエ団でもロシア語とカザフ語が使われていました。なので、以前よりロシア語をいっぱい話せるようになりました。カザフ語はキリル文字を使うのですが、ロシア語より9文字くらい多いんです。文字として読むことはできるけれど文法は全然違うので、残念ながらほとんど理解はできませんでした。
──そんな中で、いろいろと貴重な体験をされたのですね。
南江 例えば、『ロミオとジュリエット』のバレエ団初演ではマキューシオに配役されました。1カ月半くらいずっとリハーサルを重ねていたのですが、残念ながら舞台で踊ることは叶わず、悔しい思いを──。プロの世界では、どんなに努力したとしても、必ずしもいい形で報われるわけではないと、あらためて実感しました。でも、いい経験だったなと思います。
12月の『くるみ割り人形』では王子役にキャスティングされていたのですが、直前に捻挫をして、王子役デビューは果たせず......これもものすごく悔しい経験でしたが、そのときの自分の体調やメンタルの整え方を心得ていなかったんだなと実感しています。
──ダンサーを取り巻く環境はどうでしたか。
南江 毎週末公演があって、寮も送迎バスもあって、お給料もカザフスタンの中では決して悪くなくて、環境としてはとても良かったと思います。でも、そこに安住してしまっていいのかな、という悩みはありました。自分の未熟さを実感していましたし、もっといろんなレパートリーを踊ってみたいという思いも──。そんなときに、(斎藤)友佳理先生とお電話でお話する機会をいただいて、帰国して、東京バレエ団に復帰させてもらうことになったんです。監督として、辞めていったダンサーの心配をして再び受け入れてくれるなんて、普通ではあまりないこと。本当にありがたく思いました。
一度離れて気づくことはたくさんありました。東京バレエ団は古典からバランシン、さらにはベジャール、キリアン、ノイマイヤーまで、本当にいろんな作品を踊ることができて、それが1年間通してバランスよく上演される。それに、ダンサーたちがすごくハングリー! 恵まれすぎていないからこそ、切磋琢磨して頑張っているのかなとも感じます。
──再入団にあたっては、オーディションを受けられたそうですね。
南江 ヴァリエーションを踊りました。あまりいい出来ではなかったのだけれど、踊り終えたらもう、皆が拍手で「お帰りーっ!」って(笑)。そんなふうに温かく迎えてくれて、ありがたい、という言葉しか出てこないし、そんな言葉では足りないくらいです。
──復帰してからはどんな舞台に?
南江 まずは、7月初めの〈Choreographic Project〉。退団前の最後の公演も〈Choreographic Project〉でしたから、いずれも思い出深い舞台になりました。その後、世界バレエフェスティバル全幕特別プロの『ラ・バヤデール』に。当初は配役されていなかったのですが、怪我で降板したダンサーがいた関係で、苦行僧を踊ることに。初めてでしたが、楽しい経験でした。
──今週はいよいよ、子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』ですね。
南江 王子役デビュー、です。もともと王子役のアンダースタディとしてリハーサルに参加していたのですが、(大塚)卓さんが降板するかもしれないとなったとき、オーロラ姫の(足立)真里亜さんと少しずつ合わせておくようにと言われ、ゆっくりゆっくり、取り組んでいました。真里亜さんに引っ張っていただきながら、先輩方にもたくさん力を借りて。(柄本)弾さんにも指導していただいています。同じ京都出身の、頼れるお兄さんという感じです!
──いまはどんな課題に取り組んでいますか。
南江 個人的にはやはり、表現。ここでの動き、立ち方、在り方をどうしよう、ということは比較的考えやすいけれど、どういう心境で、どういうふうに伝え、どう見せていきたいのか、というところはまだまだ難しく感じます。(金子)仁美さん、(池本)祥真さんのリハーサルも見ながら勉強していますが、祥真さんと僕とではタイプが違いますから、全部コピーしようとは思いませんし、できません(笑)! 王子役はいつかやりたいと思っていましたが、東京バレエ団での初めての主演。もちろん緊張もするけれど、自分なりに、落ち着きつつ、フレッシュさも大事にしてのぞみたいなって思っています。
──月末には〈ダイヤモンド・セレブレーション〉が控えています。
南江 『ボレロ』と『エチュード』に出演します。しばらく『子ねむり』と『エチュード』を同時進行でリハーサルしていたのですが、男性陣は全員、レッスンから白タイツでのぞんでいるんですよ。
──全員!?
南江 友佳理さんが声がけしてくださったんです。自分のラインをしっかり見直して、身体の使い方を皆で改善していきましょうと。白タイツだと全部、見えてしまいますから。自分も立ち方、歩き方は課題ですし、『子ねむり』に活かせることもたくさんある。相乗効果を目指しています。
──では最後に、会員の皆さまにひと言お願いします!
南江 帰国して、いろんな方からメッセージをいただきました。皆さんが本当に温かい気持ちで迎えてくださったことが、とても励みになりましたし、安心に繋がりました。たくさんの方々が見守ってくださって支えてくださるからこそ、もっと頑張ろうって思えるので、本当にありがたいです。これからも、どうぞよろしくお願いいたします!