
今年5月、3年ぶりに上演する『かぐや姫』全幕。今回も、かぐや姫と影姫というライバル関係のふたりを演じる足立真里亜と金子仁美に、初演時の思い出や再演にかける意気込みを聞きました!
――『かぐや姫』の世界初演から3年が経ち、いよいよ再演となります。再演にあたって、どんな目標を掲げていらっしゃいますか?
足立:正直なところ、初演時はまだ作品全体になじみ切れていなかったように感じているので、今回の再演でどこまで作品やキャラクターを東京バレエ団のものにできるか、染みさせられるかということを考えています。
金子:私たちは本番で全幕を踊った経験がまだ1回しかないこともあって、まだ「踊り込んだ」という感覚が少ないんです。しかも『かぐや姫』は振付家の金森穣さんと0からクリエーションした作品で、そういう機会もこれまで少なかったので、前回は手探りのことも多くて......。
金子仁美
足立:たとえばベジャールさんの作品に初めて取り組む場合、私たちは今は亡きベジャールさんのエッセンスを研究して、追求しながら創り上げていきます。でも、穣さんはそばにいて、リハーサルをしながら作品を創っていくのでその中でどんどん変わっていく。私たちダンサーは彼の強さに負けないように、必死に作品を自分のなかに入れようとするけれど、変わっていくことで吸収しきれないこともあったように思います。
金子: 私たちができることをすべて出しても納得していただけないこともあるし、難しかったですね。強さを出そうと思ってアクセント入れたら、裏目に出たり(笑)。ダンサーの内面と役に向き合う姿勢を見ていらっしゃるので、リハーサルのあとに「何を思ってやったの?」と問われることもありました。
足立:普段、新しい作品にチャレンジするときは何かしらの予備知識を入れてから挑めるんですが、0から創り上げていく作品となるとパッと答えるのが難しくて。でも、どんどん変わっていくからこその面白さもあるんですよね。たとえば、リハーサルで失敗したときに「今の失敗、いいと思うから振りに入れたらどう?」と言って採用されることもあって、面白いなって。
金子:今回は初演のときより、さらによいものにしていかねばと責任を感じています。穣さんに「成長したね」って言われたいよね?
足立:言われたいですね! この3年で私たちの結束力も高まったと思うので、一致団結しながら新たに取り組んでいきたいです。
足立真里亜
――足立さんの踊るかぐや姫と、金子さんの踊る影姫は対照的な役ですよね。それぞれ、手探りのなかでどんなふうに役づくりされましたか?
金子:影姫は帝からも愛されず、孤独に生きてきたけれど、権力があるから弱みを見せられず、強くいないといけない女性。対するかぐや姫は自由奔放で美しくて、彼女に対して悔しさもありながら、自分にないものを持っていることへの羨ましさもある。表裏一体の存在だと感じています。
足立:かぐや姫は「人」ではないですよね。だから、人に対して特別な感情を抱くことはないのかなと思うんです。道児に対する淡い恋心のようなものはあっても、基本的には受け身で、浮世離れした存在。かぐや姫というキャラクターの輪郭は、翁、道児、影姫、帝、秋見ら、それぞれが接してくる空間のなかにあるのだと思います。影姫に対しても、かぐや姫は善とも悪とも思っていないので、どんなに強い感情をぶつけても何も返ってこない。だから余計に、影姫はかぐや姫に暗い感情を抱いてしまうのかもしれません。
――作品全体で、とくに難しさを感じた場面は?
金子:穣 さんの振付は音符ひとつも逃さず、振りが詰め込まれているので「そんな繋がり方するんだ」と新鮮でした。ポワントでスライドさせてからオフ・バランスにする......という感じで、身体に入れるのが難しかったですね。あとはリフトも複雑で、男性には「力で持たないように」とのアドバイスがあって四苦八苦していたんですが、穣さんがやってくれると不思議と楽にできる。難しかったのですが、発見も多かったですね。
足立:第2幕の冒頭に影姫と4人の大臣によるパ・ド・サンクがあるんですが、あの振付をそばで観ていてビックリしました。命を預けているレベルの難易度!
金子:ぽーんって放り投げられたりね(笑)。あのパ・ド・サンクは信頼関係ができあがっていないと難しいと思います。
足立:私がとくに難しかったのは、透明のアクリル板の舞台装置(笑)。
金子:実は私たちは劇場に入ってからアクリル板に初めて乗ったのですが、透明だし、揺れるしで、本当に恐怖で。足元も見えにくいなか、羽織を着たまま駆け上がらないといけなくて......。
足立:私は 高所恐怖症なんです。でも、かぐや姫はラストシーンで、アクリル板でできた階段をかなり上まで登っていかないといけない。しかも、登り切ると至近距離に巨大なスクリーンがあって、まぶしいから煽られて落ちそうになって涙目に......。幕が閉じたあと、スタッフさんたちが来て、手を添えて降ろしてくれました。
――ご自分が出演していないシーンだと、どんな場面がお好きですか?
足立:私は翁の役が大好きです! もともと飯田(宗孝)先生がご存命のときに振付けられた役なので、役を通して先生が生きていらっしゃる感じがします。全幕初演のときはカズさん(木村和夫)が演じていたのですが、全然体格が違うのに飯田先生が背後に見えました。もういらっしゃらないことに寂しい気持ちになる反面、懐かしさも感じて嬉しくなります。
金子:今回は岡崎(隼也)さんなので、また違う雰囲気になるかも!
足立:今回は俊敏なスーパーおじいちゃんかもしれない(笑)。
金子:私はかぐや姫と道児のパ・ド・ドゥが好きで、いつも涙が出そうになります。このクリエーションが始まってから、満月を見るとドビュッシーの『月の光』の音色が浮かぶようになりました。あと、この作品は群舞の女性ダンサーが大忙しで早着替えの連続。いつも尊敬のまなざしで見ています。
――リハーサル続きで忙しい日々だと思いますが、おふたりが最近ハマっているものは?
金子:私は「ごぼう茶」です。食物繊維がたっぷり入っているので、お通じの改善にも役立ちます。ノンカフェインなので寝る前に飲んでますね。
足立:飲み物シリーズで言うと、コカ・コーラ ゼロが大好きで、毎晩飲んでいます(笑)。家にないと落ち着かないくらい。キャップを開けたときに空気が抜けてパンッて鳴る瞬間がたまりません。でも、一番好きなのは海外で飲むマウンテンデューですね! 日本で飲むより、イタリアやオーストラリアで飲むマウンテンデューは最高でした(笑)。
――意外性のあるお答えをありがとうございます。最後に、2026年の抱負をお聞かせください!
金子:毎年、ゲッターズ飯田さんの占いを楽しみにしているのですが、私の「銀のインディアン」は今年の運気が最高なんです。何に挑戦しても失敗しないから、心配せずに立ち向かっていけという結果が出ていて......。割とすぐ「私なんて」と思ってしまう性格なのですが、今年は恐れずに向かっていきたいです。
足立:じゃあ、5月の『かぐや姫』に向けても?
金子:穣さんとのリハーサルにも立ち向かいます!(笑)
足立:私は......今年に限ったことではないですが、自分に正直にいたいですね!
金子:それでこそ、真里亜だよ(笑)。
足立:きっと困難なこともいろいろあると思いますが、今年もぶれることなく、自分を偽らずに進みたいです!
『かぐや姫』舞台写真:Shoko Matsuhashi