
2024年4月の入団以降、『眠れる森の美女』の4人の王子や『ジゼル』のパ・ド・ユイットなど、大役への抜擢が続くアーティストの陶山湘(すやま しょう)。2月末から上演される〈レジェンズ・ガラ〉で『春の祭典』の2人のリーダーを踊る彼に、入団までの人生や舞台にかける意気込みを聞きました!
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――まずは東京バレエ団に入団するまでのことを質問させてください。何歳からバレエを始めたのでしょうか?
母がバレエ教室の先生をしていて、その教室に5歳から通い始めました。僕には2歳下と11歳下の妹がふたりいて、全員バレエを習っています。昔はクラスを受けているときも「お母さん」という感じが抜けなくて、中学生くらいまでは反抗していたときもありましたね(笑)。
――反抗的な姿が想像できません......。それでもバレエをやめようと思うことはなかったのですか?
小学生のころからプロになる夢はずっと持っていたんです。本気でバレエの道に進みたいと思っていたので、やめようとは思わなかったです。反抗していても、母の教室はやっぱり落ち着ける場所でしたし、テクニックを習得することが好きなので、跳んだり回ったりできることがとにかく楽しかったです。バレエ団に入ったらそうは言っていられなくて苦戦してますけども(笑)。
――コンクールなども小さいころから出ていましたか?
初めてコンクールに出たのは小学1年生のころです。初めて1位をとったのは小学4年生のときで、『ドン・キホーテ』のバジルのヴァリエーションを踊りました。大好きなヴァリエーションだったので嬉しかったです!
――そのあと、海外への留学も経験されていますね。
16歳でユース・アメリカ・グランプリに出場したときに声をかけていただいて、2カ月間、アムステルダムにあるバレエ学校に留学しました。学校の方々はウェルカムな感じで居心地がよかったです。そんなに長く海外に滞在することが初めてだったのですが、日本人の仲間たちに助けてもらいながら生活できました。充実した2カ月で、日本で過ごすより長く感じました。
――日本に戻ってから高校を卒業して、そのまま東京バレエ団へ?
はい、2024年4月に研究生として入団しました。今まで以上にバレエに集中できる環境にいられることが嬉しかったです! 学校の勉強をもうしなくていいんだというのも嬉しかったですが......(笑)。
――海外ではなく、日本で踊りたい気持ちがあったのでしょうか?
そうですね、もし海外のバレエ団に入ったとしても、最終的には日本で生活をして踊りたいと思っていました。僕はあまりバレエ鑑賞をする機会がなかったのですが、東京バレエ団はレベルが高い印象があったので、ここで踊りたいと思いました。東京バレエ団への入団は母も喜んでくれましたが、基本的には自分で決めました。
――東京バレエ団での最初の舞台の思い出を教えてください。
正式な入団は4月ですが、3月の〈上野水香オン・ステージ2024〉の『ボレロ』にエキストラで出演させていただいたのが最初です。リハーサルからもう圧倒されてしまって......男性ダンサーの方々の迫力に衝撃を受けました。迫力ある雰囲気に飲み込まれてしまいそうで、かなり緊張しました。でも、優しい方々が多くて、バレエ団にはすぐになじめました。
――入団後の『白鳥の湖』ではマズルカとスペインと、いきなり大役に抜擢されましたね!
入団してすぐの僕にたくさんの機会を与えてくださって嬉しかったですが、かなり苦戦もしました......。プロならば、ただ踊りがよければいいわけではないですよね。踊る場所や表現方法なども工夫しないといけないから、ついていくのに精いっぱいで。あまりにもできていなくて、先生や先輩方が助けてくださって、そのおかげで乗り越えられた感じです。
『白鳥の湖』より photo: Koujiro Yoshikawa
――そのあとはクランコ版『ロミオとジュリエット』で町の人々や客人などを踊られましたが、演技の多い舞台は初めてでしたか?
演技もそうですが、群舞を踊ることも初めてに近い体験でした。バレエ団に入る前は、ひとりでどううまく踊るかしか考えられていなかったんです。先輩たちは周りを見ながら上手に合わせているのに、なかなかできなくて大変でした。今もそれは課題です。演技も難しかったです。自分を出して踊るのが初めてで、ハードルが高かったです。入団前にできていなかったことを、勉強させてもらっています。大変ですけど、いい経験になっています。
――以降もたくさんの舞台に出演されていますが、2025年の『眠れる森の美女』では4人の王子のひとり、『ジゼル』ではパ・ド・ユイットに抜擢されましたね。
本当に驚きました。パートナーリングの経験がほとんどなくて、ましてプロのダンサーと組むなんて初めてだったんです。『眠り』は主役を相手に、『ジゼル』もソリストの先輩を相手に踊るので当然へまはできないわけで、ものすごく緊張しましたが、先生や先輩方にたくさんアドバイスをいただきながら頑張りました。改めて、女性を大事に考えないといけないなと感じました。その上で、プロならば自分もきれいに見えるようにしないといけない......まだ勉強中です。
『眠れる森の美女』より photo: Koujiro Yoshikawa
――2025年はイタリアでのツアー中、ベジャールの『春の祭典』で2人のリーダー役のひとりに抜擢されました! まもなく上演される〈レジェンズ・ガラ〉で、その姿をついに日本のお客さまに披露されますが、最初に踊ったときの思い出を聞かせてください。
まさか自分がリーダーを踊るなんて思ってもみず、ビックリしました。しかも、イタリア・ツアーでの相手のリーダーは柄本弾さんで、生贄は樋口祐輝さん。おふたりのなかに入って踊ることに「自分でいいんだろうか」という気持ちが最初はありました。任せていただいた以上、責任を持ってやるしかないと腹をくくりましたが、周りを引っ張るようなしっかりとした存在感のあるリーダーを演じるのは、なかなか難しかったです。
第35回海外公演(イタリア)バーリ公演 photo: clarissalapollaph
――リーダーを踊る際に、どんなアドバイスがありましたか?
ソリストとして踊るための存在感の出し方をアドバイスしていただいた記憶があります。もっと目を開いて力強く相手を見ることや胸の張り方など、見せ方にも細かな注意がありました。リハーサルからド緊張していて、内心ばくばくだったのですが、リーダー役なのでそれを表に出してはいけないと、心を強く持って取り組みました。弾さんの存在感に負けないくらいの気持ちでやらないと!と。
――今回の〈レジェンズ・ガラ〉では、もうおひとりのリーダー役はどなたですか?
今回はイタリアのときとは違うほうのリーダーを踊ります。相手は鳥海創さんです。目立つ役ですし、自分にできることをしっかりやって、力を発揮できればと思います。気負いすぎることなく......自分に打ち勝てたらいいですね。
――拝見できるのを楽しみにしています! ところで、陶山さんはご自分のことをどんな性格だと思いますか?
マイペースなほうだと思います。周りにもそう言われるので、のんびりしてるのかな......。たまに「抜けてる」って言われることもありますね(笑)。
――プライベートはどんなふうに過ごしているのでしょうか?
音楽を聴くことが好きです。多いのはJ-POPやK-POPをよく聴きます。暇つぶしにゲームもします。あと、バレエ団の先輩方にも誘っていただいて、一緒にごはんに行くのも楽しいです。バレエの話は意外としないので、いい息抜きになっています。好きな食べ物は、お寿司とラーメンとカレーです!
――子どものころ、テクニックを習得するのがお好きだと話していましたが、今も変わらず?
ピルエットが大好きで、よく回りながら遊んでいます。いろいろな回り方を組み合わせて、周りの人たちと競い合ったり......。僕は頑張って7回転くらいですかね。
――最後に、今後東京バレエ団で踊ってみたい、憧れの役を教えてください。
『ザ・カブキ』の由良之助は本当にかっこよくて、みんなの憧れですが、僕も同じく憧れています! あとは子どものころに好きだった『ドン・キホーテ』のバジルは、今でもかっこよくて、いつか踊りたい役のひとつです。大役ばかりでおこがましいのですが、目標を持つのは自由ですもんね(笑)。いつか踊れるように精進します!