
2017年にスタートした〈Choreographic Project〉。ダンサーが振付のみならず、衣裳や照明などもすべてプロデュースする公演が今年も5月30・31日に上演されます。このたび、4月7日に公開された"試演会"の様子をレポートします!
試演会にて上演されたのは、全9作品。ほとんどがまだ創作中で、未完成のため、一部のパートを切り出しての上演となりました。
トップバッターを務めたのは、木村和夫(東京バレエ団バレエ・スタッフ)による作品です。2025年に上演した作品と同じ、ニコライ・カプースチンによる「8つの演奏会用練習曲」の曲を用いた、男女8名(秋山瑛-大塚卓、足立真里亜-二山治雄、工桃子、-山下湧吾、橋谷美香-池本祥真)のダンサーが織りなす"心模様"を描いた作品『カプースチン組曲』です。
木村らしい洒落っ気のある作品で、男女のパ・ド・ドゥもあれば、男性同士・女性同士のデュオもあり、それぞれに競い合ったり、茶化したり、じゃれ合ったりと、さまざまな関係性が見えるのがユニーク。木村によると、あと3曲分の作品を足すことで、この『カプースチン組曲』は完成するそうです。
〈Choreographic Project〉常連振付家である岡崎隼也は2作品をエントリー。上演前の挨拶で岡崎は「観たらすぐに誰が振付けた作品かがわかるステップや振りを創るのが目標」と語り、2作品であえて同じ振付を異なるニュアンスで入れていると言います。
ひとつめの『息のあいだ』はショパンのノクターンに振付けた作品です。出演する生方隆之介と鳥海創については「クラシック作品を踊るときは似ていないのに、『かぐや姫』のときには重なる瞬間があったので、この二人でユニゾンを踊ったら面白くなるのではないか」、伝田陽美に関しては「自分の振付を体現してくれるダンサー」と岡崎談。3人がどう絡み合うのか、本番への期待が高まります。
もうひとつの『Out of Sync』は5人のダンサー(安西くるみ、富田翔子、池戸詩織、山仁尚、津守貴嵩)が出演する5分程度の作品。岡崎が「ずっと使いたい曲だった」と語るのは2007年にリリースされたレディオヘッドによる「15 Step」で、5/4拍子で書かれたこの曲に合わせ、音に突き動かされるように5人のダンサーが踊り続けます。
岡崎と同じく、2作品エントリーしたのは山田眞央。ひとつは自作自演の『hul-null』で、「最初はダンサーに振付けることだけを考えていたが、自分に対して作ってみたい気持ちが出てきた」と山田は語ります。パントマイムのような手の表現がユニークで、山田の柔らかさと繊細さが伝わる作品です。
もうひとつは「日ごろ感じている大きな悩みや個人的な感情を表現したい」と語る『白銀』という作品で、出演するのは山仁尚、青木恵吾、竹花治樹の3人の男性ダンサー。ストラヴィンスキーの曲に乗せ、時にユーモラスに表現されるさまざまな"悩み"から目が離せません。
金子仁美による『sunrise』は、2022年に一度発表された作品をリメイクしたもの。当時も踊った工桃子と樋口祐輝から「また踊りたい」とリクエストがあり、今回リメイクが実現したそうです。
一組のカップルの愛の軌跡を描いた作品で、想い合いながらも別れを選んだ二人による胸がきゅっと切なくなるようなパ・ド・ドゥが繰り広げられます。ドラマティックで美しいリフトが多々あり、巧みなパートナーリングも圧巻!
富田翔子による『言の端』は、「言葉が持つ脅威、会話することの意味を考えていた時期があり、それを作品にした」と言います。
その言葉通り、苦しみ、傷つきながらも、抜け出そうとする姿には清らかさや伸びやかさもありました。木の椅子を巧みに使いながら、体いっぱいで心情を表現する瓜生遥花の姿は、多くの人の共感を呼ぶでしょう。
今回、初めて振付に挑戦するのは本岡直也です。タイトルは『砂』で、「砂や砂時計、砂浜、砂漠......砂から、はかなさや孤独を感じる」と語る本岡が、過去へのノスタルジックな気持ちを表現しました。
砂を手にした二人の男性(南江祐生、本岡直也)の前に現れた女性(橋谷美香)との関係を描き、青春のみずみずしさを感じる作品です。演劇的な要素もあり、3人の関係と主人公の切ない気持ちに目が釘付けになりました。
そして今回もブラウリオ・アルバレスが新たな作品を生みだしてくれました。京都にある亀岡市の四季をテーマに作りだしたと言います。「この街に聞こえる虫の音、見える自然の色、それを感じる人の生き方を、踊りを通して、長く続いていくようにとの願いを込めた」とアルバレスは語ります。
上演されたのは冬と春で、ダンサーの伸びやかな姿からは自然そのものの美しさが感じられます。生きる喜びに満ちた踊りからは、観ている側の生命力も高まるように感じ、すがすがしい気持ちになりました。
試演会から上演までは約2カ月。その間に、それぞれの振付家とダンサーたちが作品をブラッシュアップさせ、なかには試演会とは異なる印象を持つ作品に生まれ変わることもあるでしょう。試行錯誤から生まれた、まさに"世界初演"となる作品の数々をぜひ見届けにいらしてください!
取材・文=富永明子(編集者・ライター)
写真=ダンサー提供
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